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84 神々の事情

「リーゼ嬢には以前に話したし、それを君たちも聞いている事と思う。だけど、改めて一から説明させて欲しい」


 そう言って、シンシは語り出す。


「そもそも神とはまず何か、から話すとしよう。神とは、大雑把に言ってしまえば、君たち人間と変わらない。数ある人間の中での種族:神である程度に考えてくれればいいかと思う」


「……ですが、神は不老不死にして、数多くの権能を持っており、とても人間と同列に扱えないだとは思いますが……」


「不死はともかく、不老の種族は下界の人間の中にもいるだろう? 特にそこの4人はそうだしね」


 ナイトレイン、アリスティア、ローズマリア、エイミーの4人を指す。

 まあかなりの長寿だとは聞いていたし、そんな気はしていたが、やはりそうなのか。


「不死にしたって、コウヤ君が一度やったように、保有する能力次第では死からの復活は不可能では無いよ」


「だが、あれは神から貰ったギフトによるものじゃないか?」


「そうだね。だけど、与えられたとはいえ実際に行使するのは人間だ。そして行使出来るならば、努力次第では自らの手で生み出すことも可能なんだよ、あれらの能力は」


 トンデモナイ能力ばかりな気がしてたが、シンシの言によると、いずれもそれ相応の技能さえあれば魔法で再現できるらしい。


「結局の所、神とそれ以外の種族の間にあるのは、膨大な年月によって蓄えられた知識と技能の差。実はそれだけなんだよ」


 納得がいくような、いかないような微妙な内容の話だ。

 他の連中も同じく微妙な表情をしている。


「もう一つ違いがあるとすれば、それは環境かな。ここに来て気付かなかったかな? ここには物凄い量の魔力が溢れている事に」


 ここに来た直後に、俺もそれは感じた。


「ここには、異常な程の量の魔力が存在し、同時にそれを運用する事で成り立っているシステムが存在する。それによって僕たちは不死になっているんだ」


 システムによる不死とは、そういう事なのか。


「僕らはこの世界に囚われ、生かされ続けている。そこの2人はまだ若い神だけど、それでも1万年は下らない時を生きているよ」


 シンシがそう言って、後ろに控えている女神2人へと視線を送る。


「それだけ長い時間を生きていて良く精神が持つな……」


「そう。その疑問はもっともだ。人間の精神構造では、どんなに長くとも数千年が限界だ。では僕たちはどうやって長い年月に耐えているのか。……正解は耐えれてなんかいない、だ。僕たちの精神は崩壊する度に、システムによって復元されている。僕たちには狂う事さえ、許されてはいないんだ……」


 無表情なのは相変わらずだが、シンシの目にはどこか悲哀の色が見える。


「ここまで言えば、僕たちが自身の消滅を望む理由は、大体理解して貰えただろうか?」


「ああ……」


 話のスケールがデカすぎてイマイチピンとは来ないものの、神々が相当に苦しい思いをしている事だけは分かる。

 爺が同情するなって言ってたのは、この事なのか。


「そう言えば、元神らしい爺、もといミナミヤビャクヤは、どうやって人間に転生したんだ?」


 同じ事をやれば、逃げれるんじゃないか? という疑問を言外に込めてそう問う。


「……あの方は特別だからね。我らにもその方法は伝授されたのだけれど、我らの持つ権能では再現が不可能だった。だけど、その御蔭でシステムの抜け穴をついて、大迷宮を生み出し、今君たちをここへ招くことが出来たんだよ」


 やっぱあの爺は、なんかおかしいんだな。ある意味納得である。


「さて、最後に神殺しの力について説明をしよう。技術的な詳細は長くなるので省くが、君たちは大迷宮を攻略する過程で、高濃度の魔力に慣れていった筈だが、これは魔力の濃いこの地で活動できるようにする為だ」


 なるほど。大迷宮が下層に行くほどに魔力が濃くなるのは、そういう理由からか。


「また道中で、ガーディアンと呼ばれる存在を倒す事で、神殺しの力の基となるプログラムが、君たちの肉体に刻まれるよう仕掛けていた」


 各層に張られている結界の通過許可は、それを隠すためのダミーに過ぎなかったらしい。


「先程も言ったように、君たちは100層のガーディアンを倒していない為、そのプログラムが不完全だ。だが、それについては、こちらでなんとかしよう」


「そういや、どうして100層のガーディアンを倒してないのに、俺達はここに来れたんだ?」


 話を聞いた感じ、倒さないと光の柱を通れない、くらいの仕掛けはしていてもおかしくないと思うのだが。


「……それは恐らくあの方のせいだな。確かにそう言った仕掛けは存在したが、どうやら破壊されてしまったようだ」


 そうなると爺の意図が良く分からないな。

 俺達の行く手を阻んだくせに、通行の邪魔を排除しておくとは、どうにも行動がチグハグに感じる。


「……もしかすると、あの方は時間を稼ぎたかったのかも知れないな」


「どういう事だ?」


「ガーディアンを放置すれば、君たちがそれを倒し、この地への通行許可を得ることが出来る。だが、ガーディアンを倒した上で、この地へと不正に君たちを送り込めば、その対処に時間が掛かる」


 どうも、100層のガーディアンを倒さなかった事の修正には、かなり時間を取られるらしい。いっそ、一旦戻って、ガーディアンを倒した方が早いんじゃないかと思ったが、どうやらそう言う訳にもいかないらしい。不便な事だ。


「……時間を稼いで、あの方が何をするつもりなのか、少々気掛かりだが、気にしてもこちらに出来ることは無い」


 爺の狙いが見えないは気持ち悪いが、仕方がない。


「それよりも、話の続きをしよう。最後は、神殺しの力を行使した際のデメリットだ。君たちが、僕たち神々を殺した場合、代わりに君たちが神の力を得てしまう。これを回避することは出来ない」


 成り代わるつもりがなくとも、神を殺してしまえば、必然的に成り代わってしまうという事か。


「僕は敢えて断言しよう。神になって得られる利益よりも、不利益の方が遥かに大きいと。それを理解した上で、尚君たちが神々を殺し、神に成り代わるのを望むのか、僕はそれを知りたい」


「愚問だな。我は既に覚悟の上だ。それは妻たちも同じ」


 ナイトレインは然程迷った様子もなく、そう断言する。雰囲気から察するに、どうも今聞いた情報は、大体既に知っていたように見える。


「そうか……。では君たちは?」


 シンシがこちらへと視線を向ける。

 だが、正直、話が複雑かつ重すぎて、頭の整理が追いついていない。


「……少し、時間を頂けませんか?」


 リーゼが、常ならぬ重たい声でそう言う。


「ああ、構わないよ。いくらでも悩むといい。とりあえず各人に休む部屋を用意するとしよう」


 シンシが指を鳴らすと、部屋の奥に扉が出来る。


「あの扉の奥に君たちの個室を用意した。まずは、軽く睡眠でも取ったらどうかな? 彼女達に声を掛けてくれれば、お風呂や食事なども用意させよう」

 

 女神2人をまるで侍女のように扱っているが、それくらいにシンシと2人の持つ権力に違いがあるのだろう。

 俺達はシンシの好意に甘え、一度休息を取ることにしたのだった。


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