8 ゼリー飲料
本日更新8回目です
取り急ぎ治療を終え一段落ついたので、今度は互いの自己紹介に移ることにする。
「俺の名前はミナミヤ・コウヤ。コウヤで構わない。歳はたしか……18歳だったはずだ」
「わ、わたしはフィナって言います。ヒューマンの13歳です」
もう13歳なのか、もっと小さいのかと思った。
……多分、栄養が足りてないせいで成長が遅れているんだろうな。
「フィナ。君にやって貰いたい事の説明をしよう、と思ったけどその前に軽く栄養補給といこうか」
俺はスマホを操作して、ネット通販サイトを開く。
宿屋の中だから、あまり汚す心配の無いモノがいいな。
「ちょっと待っててね」
フィナのやつれた様子を見るに消化に良いものがいいかと考え、俺は少し悩んだあと、銀色のパックに入ったゼリー飲料を選んだ。
これなら食べるのも簡単だしね。
注文すると、すぐさまMitsurinの段ボール箱が目の前に現れた。
「はい、これ食べて」
そう言って、箱からゼリー飲料を取り出し、フィナへと手渡す。
「これは……?」
「ああ、こうやって食べるんだよ」
そう言って俺はゼリー飲料の蓋を開けて、それに口をつける。
まあ味は普通だ。
まあ素早く栄養補給する為のものだしな。
「こうでしょうか……。ゴクゴク」
おっかなびっくりな手つきながらも俺の真似をして、ゼリー飲料を飲むフィナ。
「……こ、これ、凄く美味しいですっ!」
喜んでくれるのは嬉しいがちょっと大げさ過ぎないか?
まあいいけどさ。
あっという間に一本を飲み干したフィナが潤んだ瞳でこちらを見てくる。
「足りなかったらまだあるから、遠慮しなくていいよ?」
1箱には6個入っているので、まだ4つ残っている。
「は、はい。ありがとうございますっ!」
そう言って2個目に口をつけるフィナ。
物凄い勢いで、プラスチックの包装がへこんでいき、あっという間に無くなる。
「あ、あの……」
「はいはい、どうぞ」
結局フィナは残るゼリー飲料を全部飲み干してしまった。
別にいいけど、お腹は大丈夫かな?
「す、すいませんっ。あんまり美味しくってつい夢中に……」
「いや、別に構わないよ。少しは元気になったかい?」
「はいっ! それになんだか、身体の奥から力が湧き出てくるような気がします」
そう言われてフィナを見れば、なんだか心無し肌が艶々しているように見える。
流石に気のせいかな?
「まあ何にせよ、元気が出たようで良かったよ」
「本当にありがとうございますっ!」
こちらまで気分が良くなるような、清々しい笑顔をこちらへと向けてくる。
あれ? よく見ればこの子結構可愛い?
ゼリー飲料の御蔭で栄養補給も済んだことだし、いよいよ俺は本題を切り出す。
「フィナ。君に与える仕事の説明をしたいと思う」
当初の予定では、買った奴隷に商品の売買など全部任せるつもりだったが、さすがにこんな小さな少女にそれは無茶だろう。
それ用の奴隷はもう少しお金を貯めてから改めて購入を検討することにしよう。
俺の言葉に少しフィナが身構えた表情をしているので、安心させてやろう。
「と言っても別に大したことじゃない。要は雑用かな。俺一人じゃ手が足りない時に、力を貸してくれればそれでいい」
まずはフィナが何が出来て何が出来ないのか、それを把握しなければ仕事を任せるのは無理だろう。
「まあそう気を張らず、ゆるゆるとやっていくとしようじゃないか」
俺がそう言って微笑んだことで、フィナも安心したらしく、ホッと息をついている。
そうして俺は、フィナと共に現地通貨を稼ぐべく、働き始めるのだった。




