7 治療
本日更新7回目です。
アルに紹介された商会で奴隷の少女フィナを購入した俺は、彼女を連れて宿へと戻った。
「さて自己紹介の前に、まずは傷の手当てをしようか」
今のままでは正直、目のやり場に困る。
俺はMitsurinのサイトを開くと、消毒液や軟膏、ガーゼなどといった治療に必要な道具各種を購入する。
次々と目の前に現れる段ボールに、フィナが目をパチクリさせているが説明は後だ。
「まずは手足からだな。少し染みるかもだけど我慢してくれよ」
「は、はい」
ミネラルウォーターで濡らしたタオルで軽く拭った後、消毒液で傷口を洗う。
「ひゃうっ」
傷口に染みるのかフィナの口から声が漏れるが、俺は努めて無視することにする。
洗った傷口に、今度は軟膏を塗っていく。
すると不思議な現象が起きた。
「な、なんだっ!?」
軟膏を塗った傷口が見る見るうちに塞がっていくのだ。
傷口がウネウネと動きながら塞がっていく様は、正直ちょっと不気味だった。
異世界特有の現象なのかとフィナの方を見るが、どうやら彼女も驚いたらしく目を見開いている。
正直謎だが、まあ治る分には問題ないはずだ。
「次は背中だな。後ろを向いてくれ」
フィナが僅かに戸惑った表情を見せるも、おずおずとこちらへと背中を向けてくる。
「じゃあちょっとめくるよ」
ボロボロのシャツを捲り上げ、フィナの背中の治療を行う。
「あ、んっ」
何か官能めいた声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
俺は治療へと集中することにする。
背中には手足以上に多くの傷が有り俺は目を顰めたが、同じように軟膏を塗る事であっさりとその傷口も消えていく。
「あとは前だけだな。……俺がやって見せたように自分でやってくれ。俺は後ろを向いているから」
まだ胸もほとんど膨らんでいない少女とはいえ、女の子の身体を見るのは流石に気が引ける。
「わ、分かりました……」
俺はフィナに治療道具を渡すと、すぐさま後ろの壁に視線を移す。
どうやらシャツを脱ぎ始めたらしく、布の擦れる音が俺の耳に届いてくる。
今後ろを振り返れば、そこには上半身裸の女の子いるのだと思うと、何か熱いものがこみ上げる感覚に襲われるが、頭をブンブン振って冷静さを取り戻す。
「あ、あうっ」
背中同様、前の方もやはり傷が多いのだろう。
痛みに呻く声がこちらへと届く。
それらを俺は雑音だと処理することにして、ただ治療が終わるのをひたすら待つ。
「お、終わりました」
「そうか……」
その声に俺が振り返ると、そこには全身の至る所にあった傷がすっぱり消えさったフィナの姿があった。
「おお、随分良くなったな」
凄いな軟膏の力。
魔法のアイテムでも使ったみたいに、傷があっという間に癒えてしまった。
アルに売れば金になりそうな気もするが、流石にここまで劇的な効果があると扱いには慎重を期したい。
「は、はい。ご主人様のおかげですっ!」
そう言ってフィナが笑顔を浮かべる。
とりあえず、彼女から一定の信頼を得ることは出来たようだ。
計算外の出来事はあったが、初対面のやり取りとしてはまあ合格だろう。
内心で俺はホッと息をついた。