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65 ギルドマスター

 「まぁ、ここが迷宮都市なんですね……」


 リーゼが蒼髪を風に揺らしながら、周囲の景色を眺めている。

 そこには数多くの冒険者たちと、それを相手に商売する者達の姿で賑わっていた。


 そう俺は現在、リーゼ、ツバキ、エイミーの3人を伴って、ここ迷宮都市ラヴィランヴィルへとやって来ていた。

 目的は勿論、大迷宮の最深部を目指す為だ。


「コウヤ様! 早速冒険者ギルドへと登録に参りましょう!」


「分かったから、袖を引っ張るなっ!」


 リーゼに急かされた俺は、ツバキとエイミーに助けを求める視線を送るが、首を横に振られる。


 くそっ、お前ら俺にコイツの相手を押し付ける気か!


「さあ、お早く!」


 リーゼのテンションがやけに高いのは、面倒事から解放された反動からか。

 ともかく、そんな彼女に引っ張られるようにして、俺達は冒険者ギルド本部へと向かう事になった。


 ◆


 という訳で冒険者ギルド本部へとやってきた訳だが。

 流石にその建物は、本部というだけあって巨大なモノだった。

 サイズ的には、教国で見た王城に迫る程である。


「ふふっ。わたくしのひ弱な見た目のせいで、登録前に絡まれたりはしませんよね? 『おいおい、嬢ちゃん。ここは子供の遊び場じゃねぇんだぜ?』みたいな感じで」


 妙に楽しそうな声でリーゼがそんな事を言っている。


「いやいや、冒険者って割と皆しっかりしてるから、そんな事……」


 と言いかけて、俺は自身の冒険者登録時の出来事を思い出す。

 そういえばあの時、酔っぱらったグスタフのおっさんに絡まれたんだったな。


 ちなみに後日、その事についてはおっさんから正式に謝罪を受けている。

 どうも昇格試験絡みかなんかでイラついており、悪酔いしてついやってしまったそうだ。

 ちゃんと話してみれば、彼は強面ではあるものの、割と気の良いおっさんだった。


 まあ、グスタフのおっさんの話はどうでもいい。


 エイミーが事前に冒険者ギルドには連絡を入れている筈だし、多分問題は起こらないだろう。


「ゴホン。余計な心配はいいからさっさと入るぞ」


 そうして扉を開け、中へと入ったのだが、そこにはエルフの女性が待ち受けていた。

 その顔は、アルストロメリアの冒険者ギルドの受付嬢サリナと瓜二つであった。


「コウヤ様ですね、案内役を仰せつかっておりますエレナと申します」


 内心で驚きつつも、彼女と挨拶を交わし、先導されるまま建物の奥へと連れて行かれる。


「こちらでギルドマスターがお待ちです。どうぞお入り下さい」


 ギルドマスターとは、この迷宮都市においての最高権力者。他国で言えば、国王的な存在だ。

 そんなエレナの言葉に思わず俺は、エイミーを睨み付ける。


「おい、ギルドマスター直々に挨拶かよ。聞いてないぞ?」


「……私も知らないわよ」


 そんな会話を俺とエイミーは小声で交わし合う。


 まあ、突然お偉いさんに会う羽目になるのも、もう慣れてしまった。

 そもそも皇帝であるリーゼと、普通に話をしている時点で今更だろう。

 変に意識するのはやめて、普通に部屋の中へと入る事にする。


「お待ちしておりましたよ。リーゼ皇帝陛下、それに勇者の方々」


 そう言って、ナイスミドルな男性が出迎えてくれる。

 一見紳士的な装いだが、その服の下には筋肉の鎧が隠れているのが見て取れる。


 それから彼と俺達は簡単な挨拶を交わす。

 どうやらギルドマスターの名前はオーガスタというらしい。


「それで、オーガスタさん。俺達に一体何の用なんですか?」


 ここには、リーゼとツバキの冒険者証を受け取りに来ただけのつもりだったのだが……。


「ははっ、普段通りの言葉遣いで構わないよ。……それで、君たちをここに呼んだ理由だが、まあそう大した理由じゃない。折角の機会だし、親交を持てたらと思っただけなのさ」


 まあ、俺達を肩書だけで見れば、帝国の皇帝と、女神に遣わされた勇者だ。

 そう考えるのも、特におかしな話ではないのだろう。


「そう言うってことは、何か土産話でも用意してくれてるのか?」


「そうだね……。君たちは、大迷宮の攻略を目標にしているようだけど、その辺の詳しい話について、というのはどうだろう?」


「……興味深い話ですね。是非、お聞かせ願えますか?」


 大迷宮と聞いて、リーゼが即座に食いついて来た。やれやれだ。


「ええ、構いませんよ、皇帝陛下。まずは大迷宮について、少しお話しましょうか」


 そう前置きして、オーガスタは語り始める。


 大迷宮とは、大陸最大の魔物の領域であり、地下へと続く全100層のダンジョンだそうだ。

 そして階層が深くなればなるほどに、生息する魔物も強力になっていくらしい。

 それに加えて、迷宮の構造も徐々に複雑化し、幾重にも張り巡らされた罠の数々が冒険者達の行く手を阻むそうだ。

 特に75層を超えた辺りからは、その難易度は鬼畜ともいえるものとなり、並みのルークランク冒険者では歯が立たないそうだ。


 そんな中にあって、現在の攻略最前線は91層だそうだ。

 どうも、とある冒険者パーティが突出して攻略を進めているらしい。


「それが先代様たちのパーティ"デイウォーカーズ"よ」


 エイミーがそう補足を加える。


「魔王国の先代魔王ってやつか……」


 どんな奴らなのだろうか。会うのが楽しみである。


「彼らはその突出した実力から、現在、唯一の"クイーン"ランク冒険者パーティとしてギルドから認定を受けているんだよ」


 クイーンランクとはルークランクの冒険者の中でも、突出した功績を遺したパーティにのみ与えられる、いわば名誉称号のようなモノらしい。


「それは初耳ですね……」


 リーゼが驚いた表情をしている。


「帝国との関係はかなり劣悪でしたからね。情報封鎖についてはこちらも厳重に行っておりましたから。……ですが、私個人としてはいい加減それを改善したい所なのですよ」


 帝国内において活動が出来ないのは、冒険者ギルドとしても痛手なのだろう。

 組織の長としては、商売の手を広げたいと考えるのは、至って普通の思考だ。


「ええ、わたくしとしても、冒険者ギルドとの関係改善は、是非にと思っております。……ですが、その辺の話は、後程改めてする事にしましょう。今は大迷宮について色々教えて下さいませ」


「ええ、構いませんよ、皇帝陛下」


 その後は、リーゼのほぼ独壇場だった。

 大迷宮に関する様々な疑問を投げかけては、オーガスタがそれに答えていく。


 俺とエイミーとツバキの3人はそれを黙って見守るばかりだ。


 そうしてあっという間に時間は過ぎていき、お暇する事になった。

 まあオーガスタもギルドマスターという、重要な職についている以上、色々と忙しいのだろう。


「ううっ。名残惜しいですが、今日はこの辺で失礼します。本日は色々とありがとうございました、オーガスタ様」


「はは。いえいえ、御力に成れたのなら幸いです。ではお気を付けを」


 帰りにエレナからリーゼとツバキの冒険者証を受け取り、俺達は冒険者ギルド本部を後にしたのだった。


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