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6 奴隷商会

本日更新6回目です。

 俺は塩を売った代金として手に入れた聖銀(ミスリル)貨と引き換えに、10億円という大金を手に入れた。

 これで金の心配は必要ないと安心しかけたが、実はまだ現地通貨は僅か99Gしか手元に無い事に俺は気付く。


 そこで俺は当面の活動資金を手に入れる為、Mitsurinで塩を今度は20kg注文すると、それを持って再びアルの商会へと向かうことにした。

 塩を持って来れば前回と同じ金額で買い取ると言っていたので、その言葉に有り難く乗っからせて貰う事にしたのだ。


 20kgの塩の入った段ボール箱を担ぎ、俺は街中を進む。

 この重さでも然程苦にならないあたり、〈肉体超強化〉の有り難さを実感する。


「アル! すまないがこの塩も買い取ってくれ!」


 幸いにも直ぐにアルと再会できた俺は、そう願い出る。


「……また、えらく早いね。勿論僕の方は歓迎さ。前と同じ金額で買い取らせてもらうよ」


 塩20kgを以前のレートのまま、無事20万Gで買い取ってもらえ、こうして俺は当面の活動資金を手に入れた。


 ◆


 その日は、適当な宿を取って夜を明かし、次の日を迎えた。


 ネット銀行の口座残高についてはもはや不安はない。

 10億円などむしろ使い切る方が大変だし、多少減ってもまた金貨なり聖銀(ミスリル)貨なりを買取して貰えばいいだけだ。


 問題は現地通貨の方だ。

 10万Gはそこそこの金額ではあるが、宿暮らしを一月も続ければすぐ飛んでいきそうな額だ。


 仕方なしに、今日も俺はアルの元へ塩を売りにいく。


「おや、今日もかい?」


「不味かったか?」


「いやいや、コウヤから売ってもらった塩はとても質がいいからね。すぐに売り捌けるから、こちらとしては大歓迎だよ」


 大仰な素振りで、そう示すアル。


「そうか。それは俺も助かる」


「……しかしそれ程の量があるのなら、どうして君一人で運んでくるんだい? 人を雇った方がいいだろうに」


「人を雇うか……。ただ、信用できるかが問題だな……」


 そもそもこの世界に来てまだ2日目だ。

 どうやって雇えばいいか、見当すらつかない。


「ふむ。それだったら奴隷を買うのはどうだい? 彼らなら隷属の首輪で主人に反抗出来ないから、裏切られる心配はないよ」


「なるほど……」


 異世界モノの小説で良くあるパターンだな。

 ……だが、案外悪くはない提案かもしれない。


「もし良かったら、僕が店を紹介するけど?」


「ああ、頼む」


 そうして俺はアルの勧める奴隷を扱っている商会へと向かうことになった。


「おお、アルメヒ様からのご紹介ですか。それはそれは……」


 アルから預かった紹介状を見せると、商人の表情が一気に和らぐ。


「それで御予算はいかほどで?」


「そうだな。予算は30万G以内で頼む」


「その額ですと、余り質の良い奴隷は御用意出来ませんが……」


「構わない。とりあえず予算内で買える奴隷を見せてくれ」


「畏まりました。少々お待ちを」


 暫く待った後連れて来られたのは、如何にも柄の悪そうな中年のおっさんと、どこか虚ろな目をした20代くらい青年。

 そして、見た目まだ10代前半の全身ガリガリの少女の3人だ。

 特に最後の少女は、全身にいくつもの傷が有り正直見ていて痛ましい。歩くのさえ辛そうだ。


 予算30万Gだとこんな感じなのか……。

 少々奴隷の値段を安く見積もり過ぎていたかもしれない。


「いかがでしょう? 気になる奴隷はおりましたか?」


 先頭のおっさんはまず無しだ。なんかこっちを睨んでいるし、とてもじゃないが良好な関係が築けそうにない。

 2番目の青年は論外だ。目付きがどう見てもヤバい。コイツなんかの薬でもやってるんじゃね? としか思えない。

 

 となると残る選択肢は最後の少女になる訳だが……。


 俺が今必要としているのは、仕入れた商品の運搬など多少なりとも力仕事が出来る人材だ。

 だが、見る限りこの少女では求める最低限の仕事すらこなせそうにない。


 そんな風に観察していると、ふと少女と目が合う。

 「助けて下さい」俺にはそんな声が聞こえた気がした。


「あー、じゃあこの子で……」


 気が付けば、俺は少女を指差してそう呟いていた。


「おお、フィナですか。こちらは27万Gとなります。……ですがアルメヒ様のご紹介ですし、ここは特別に2万G値引きして25万Gとさせて頂きます」


 まだ現地通貨が少ない俺にとっては嬉しい値引きだ。

 奴隷商人の言葉がホントなら、アルもそれなりに名の知れた商人なのかもな。

 内心でアルにお礼を述べておく。


 こうして俺は奴隷の少女フィナを手に入れたのだった。


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