15 孤児院の子供たち(前編)
本日更新2回目です。
住むための家を探していたはずの俺は、気が付けば潰れかけの孤児院を購入する事態に陥っていた。
正直な所、どうしてこうなった、という感じだ。
イステイト商会で孤児院の購入手続きを済ませた俺は、フィナと共に再び孤児院を訪れる。
「ありがとうございます。コウヤ様のおかげでこの孤児院は救われましたっ!」
入り口で待ち受けていたリズリアが、そう言って深々と頭を下げる。
「はぁ。まだ安心するのは早いぞ。俺は建物と土地を購入しただけだ。孤児院そのものの運営費用はどうするつもりだ?」
「そ、それは寄付を募って……」
「教会からの支援は無いのか?」
「それが権利を奪い取られてから、まだ一度も援助金が届いていないのです。その所為で子供たちは皆、お腹を空かせてしまって……」
権利を奪い取ったというその悪徳商人は、どうやら教会にも顔が利くようだ。
「やれやれ、仕方ないな。まあ食事と衣服くらいは俺が面倒みてやる。その代わり、働ける連中には俺の仕事の手伝いをしてもらうとしよう」
まあ、日本円なら有り余っているので、ネット通販で仕入れれば特に問題は無いだろう。
万が一それで貯金が尽きたとしても、また聖銀貨を売ればいいだけだしな。
「とりあえず、中を案内してくれ」
「分かりました」
リズリアの先導に従って俺達は孤児院の中へと向かう。
「ううっ、足元が抜けそうで怖いです……」
フィナの言う通り孤児院の内部は酷い有様で、そこかしこの床が腐ってボロボロだ。
「子供たちは今、この部屋に集まっています」
リズリアが指で示した先には、そこそこ広い部屋の中に20人程の子供たちがいた。
彼らの年齢はパッと見、5歳くらいからフィナと同じくらいの年頃の子までいるが、皆が一様に以前のフィナと似たような感じでやせ細っている。
「……ちゃんと食べてるのか?」
「援助金が尽きてからは、ほとんどマトモな食事にありつけておりません……」
まあ、この様子を見るに多分そうなんだろうなとは思ったが。
「ちょっと空き部屋を貸してくれ。フィナ、手伝いを頼む」
「はいっ、コウヤ様!」
どうも手伝いがどうのこうのというレベルでは無いらしい。
まずは彼らにちゃんとした食事を与えなければならない。
いくつかある空き部屋のうち、比較的マシな一室を借りてそこでスマホ端末を操作する。
本当は温かい食事を作ってやりたい所だが、設備的に厳しそうだ。
とりあえず、今は彼らの腹を満たすことが第一だと割り切り、ネット通販でゼリー飲料を大量購入する。
段ボールが次々と出現し、床が軋む音が聞こえてくる。
頼むから壊れてくれるなよ……。
「フィナ、これを子供たちに配ってやってくれ。飲み方も教えてな」
「はいっ!」
フィナが段ボール箱を抱えて、子供たちの元へと向かう。
それを見送ってから、今度は毛布や子供用の衣服など、直近で必要そうな品物を片っ端から購入していく。
まずは最低限の生活環境を整えなくちゃ、話にならないからな。
部屋に次々と積まれていく段ボール箱を眺めながら、俺はそんなことを考えていた。




