12 孤児院
本日更新1回目です。
突然現れた若い女性に頭を下げられるという、良く分からない事態に俺は直面していた。
「一体どういう事なのか、まずは事情を説明してくれないか?」
女性に顔を上げてもらい、とりあえず話を聞くことにする。
「わたくしはリズリアと申します。この孤児院の出身で、今は子供たちの世話をしております」
ボサボサの髪に野暮ったい恰好をしている為分かりづらいが、良く見れば結構な美人さんのようだ。
ただ、ビックリするほどに線が細く、ちゃんと食べているのか心配になってくる。
「この場所では教会の支援の元、細々と孤児院を運営しておりました。ですが近年では教会からの支援も少なくなり、資金繰りに苦労しておりました」
まあ日本でもこういった施設の運営は大変だというしな。
異世界でも同じなのだろう。
「そんな折、援助を申し出て下さった商人の方がいたのです。ですが、その方はどうやらここの土地が目当てだったらしく、この孤児院を借金の形として奪われてしまったのです」
まったくあくどい商人がいたものだ。
「おい、ルーイヒさんよ。あんたそんな事やってたのかよ」
俺はジロリとルーイヒを睨み付ける。
「いやいや、そんなまさかっ。部下からは、孤児院を畳むので買い取ったと聞いていたのですが……」
慌てた表情で、ルーイヒがそう弁解の言葉を口にする。
……見た感じ、嘘をついている様子には見えないな。
「じゃあ、あんたの権限で返してやれないのか?」
「……どうも、それは難しいようです。うちの商会が直接この土地を買い取ったのではなく、別の商会を経由しています」
資料を見つめながら、難しい表情でそう言うルーイヒ。
となるとイステイト商会にこの孤児院を売り払った奴が、犯人って訳か。
「そんな……。それではこの孤児院はどうなってしまうのでしょうか……」
「こちらとしても、今更タダで手放すのは無理です。なのでここを購入される方の意思次第となりますが……」
そう言ってルーイヒが俺の方へとチラリと視線を送る。
「コウヤ様……」
見れば隣のフィナも、何かを言いたげな表情をしている。
くそっ。
ここで買わないと、なんだか俺が悪者みたいな感じじゃないかっ。
「あー、分かったよ。俺がこの物件を購入する。但し、ルーイヒさんよ、あんたにも責任が無い訳じゃないんだから、もうちょっと安くしてくれ」
「……分かりました。この物件での利益は諦めます。2000万Gでお売りさせて頂きます」
ルーイヒさんがそう言って項垂れる。
結局、当初の金額より500万G程の値引きして貰えることになった。
ただその結果、俺が得をしたのかどうかはちょっと分からないが。
真銅貨20枚をルーイヒへと支払い、俺はこの孤児院の権利を手に入れたのだった。




