寺子屋師範『大岩祐夢』
大岩祐夢(以下大岩):
「こちらにあります化粧品を
4名のかたに紹介しますと
お客様が投資しました初期費用を回収することが出来まして
その後。紹介されますかたが増えれば増えるほど
お客様の利益が増す仕組みになっております。」
「これをヒントに新たな経済モデルを考えてください。」
「こんにちは。寺子屋師範の大岩祐夢です。」
「大岩って誰?」
「と、お思いのかた。多いことかと思われます。」
「実は私。」
「かつて土佐一国を治めておりました長宗我部盛親であります。」
「なぜ私が今。
江戸時代の世の中となり、
全国各地の大名が江戸ないし領国で活動されている中、
独り。京の都で寺子屋を切り盛りすることになったのか?
と申しますと
偏に関ヶ原の戦いが原因となっているのであります。」
(そこへ生徒が1枚の経済モデルを提出)
大岩:「……どれどれ」
「ルーブルが高くなることを利用しまして
ドル建てで借り入れしたほうが返済が楽になる住宅ローン」
「……でありますか……」
「たしかにこれはルーブルの価値が高くなればなる程。
普段ルーブルで稼いでいるお客様にとりましては
ルーブルが高くなる
=安くなるドルで支払うことになるため
返済が楽になることは確かであります。」
「ただしそれには
リスク
と言うモノも存在しておりまして
ルーブルが高い内は良いのでありますが
仮に。
仮にですよ。
世界情勢に変化が生じまして
急にドルの価値が高くなった場合。
=ルーブルが安くなった場合、
お客様の負担が増すことになります。
そのリスクもきちんと知って頂いた上で。
で無ければ
のちのち大きな問題に発展する。
信用を失うことになりますし、
これはそもそも。
マルチ商法ではありません。」
「着眼点は素晴らしいので、もう一度考えてみましょう。」
大岩:「当初。我が長宗我部は家康の味方になることを決意したのでありましたが
途中。使者が長束のモノに捕らえられてしまい、
家康に我が方針を伝えることが出来なかったばかりか
使者が長束に説得され、送り返される有様。
我が軍は小部隊であった故。
このまま宙ぶらりの状態で過ごしていますと
西軍に狙われる危険性がありましたので
西軍に属することに相成りました。」
「それから西軍の一翼を担いながら
伏見。更には伊勢に展開し、関ヶ原を迎えることになりました。」
(そこへ生徒が1枚の紙を持って来る)
大岩:「……どれどれ」
「生まれた仔牛に対し出資者を募り、
育ち売れた暁には
謝礼として
出資相当の牛肉がプレゼントされる。」
「良い着眼点ですね。」
「このこと自体は実は問題の無いことでありますし、
実際。現在も続けられていることなのでありますが
注意しなければならないのは『規模』と『利回り』でありまして
(……明らかに牛1頭から得ることの出来る配当では無いぞ……)
となりました場合。
マルチ商法
と呼ばれる話となります。」
大岩:「で。関ヶ原当日。」
「南宮山麓に陣取りました我が長宗我部は
直接戦況を見つめることが出来る場所では無かったこと。
しかも南宮山の主力であります
毛利殿が動かなかったため
なにもすることが出来ぬまま敗退が決定。
虚しく土佐へ戻るハメに遭いまして」
「のちにわかったことなのでありますが
どうやら毛利と家康との間で話がついていたらしく
領土安堵と引き換えに動かないことになっていたとか……」
「毛利はそれで良かったのかもしれないけれども
我が方は家康と通じることが出来ていない。」
「ただの敗れた側の人間でありますので」
「なんとか取りなしを依頼しないことには……
となりまして
井伊殿にお願いしたのでありましたが……」
「(……なんであの時。兄を……)」
大岩:「いろいろありまして
今。私は
こうして寺子屋を営んでいるのであります。」
「生徒のみんな。」
「今日の授業はここまで。」
「次回はここで考えた商法をヒントに
フィールドワークを行います。
大きな声のモノ1人に、
それを宥めながら優しい声で語り掛けるモノが1人。
そして2人の間を割って入りながら登場し、
両頬を2人に叩かれながらメガネを飛ばす役の
計3人1組をあらかじめ作りまして、
来週の水曜日。
おのぼりさんを中心に実践していきましょう。」




