最高誕生の祝初日 5
「え、ちょっとそれって…もはや魔導師ではないのでは!?」
彩香のツッコミに高良は真顔で真面目に答えた。
「いやいや、これは科学的にちゃーんと再現できる立派なものだよ。説明が面倒くさいから省くけど、論文も発表されているから見ておくといいよ。」
そう言いながら彼は暴発時のデータを素早く計測していく。
暴発の威力、破片の飛び散り具合。
そこから予測される被害をまとめていく。
アクリル板に刺さりそうになる破片は、『ブレイザード自身の魔力』が暴発することであらぬ方向へ飛んでいく。
「…凄い。」
彩香の口から感嘆が零れた。
「でしょ?…魔法のコントロール、魔力保存量、魔力回復力…ホント、暴発なんてしなきゃ皆から認められるのにね。」
そんなことをいう高良は酷く悲しげな表情をしていた。
最初の暴発から7分。
残りの魔法道具も暴発しつくし、計測は終了した。
ブレイザードの体には傷1つついていない。
「お疲れ様、『ブレイザード』。今日は助かったよ。」
労いの言葉にブレイザードはつまらなさそうな表情を浮かべた。
「報酬はちゃんとしてくれよな?」
「模擬戦でしょ?わかってるわかってる。先に10階のリラクゼーションルームに行っといて。」
ブレイザードは頷いて、このフロアから立ち去った。
「…あの、高良さん。報酬が模擬戦って?」
「まあ、ブレイザードは魔法戦闘好きだからさ。俺も嫌いじゃないし、それなりに腕は立つから相手してあげるの。だから彩香ちゃん、この計測データを上に転送しておいてくれないかな?」
その頼みを快く承諾し、彩香はデータを転送した。
その間に高良は後片付けを全て終わらせていた。
「じゃあ、行ってくるね。」
黒髪の錬金術師は笑みを浮かべていた。