平常勤務の降雨日 6
そして、シグは激しく後悔することとなった。
ブレイザードがもたらす勝利は圧倒的なもので、戦いを楽しむ余地というものがなかったのだ。
「っ!!」
彼が触れた魔法道具は破壊され、
「よっ…と。」
魔力が篭められた一撃は魔力暴発によって吹き飛ばされ、
「勝たせねーよ?」
放たれた弾丸は圧倒的破壊力を誇った。
これで相手側が負うのが精々吹っ飛ばされたことによるすり傷ぐらいだというのだから、恐ろしい。
実力差がかけ離れすぎている。
だからこそ、シグはふと思った。
これ程の強さなら公式戦でも相当いい成績のはずだ。
むしろ、そうでなくてはおかしい。
が、ブレイザード=トラッカーの名前は聞いたことがなかった。
その疑問はすぐに解消されることとなる。
「チクショウ、暴発の魔導師が来るなんて聞いてねーぞ!!」
3戦目…つまり決勝戦、相手の1人がブレイザードの弾丸をたまたま避けたのだ。
弾丸は魔力をまとっており、バリアウォールに当たる。
当たった瞬間、バリアウォールが暴発した。
爆発音と共にヒビが入り、壁が粉々に砕けて弾け飛んだ。
宙に舞った破片が雨と共に消えながら降り注ぐ。
暴発の魔導師の前では、観客の安全は保証されない。
魔力の大小も関係ない。
まさしくこれこそがチート。
魔導師の存在を無意味にするものだった。
そんな彼が公式戦参加を許されるはずもなく、認められることもなかったのだ。
結局、この戦闘は無効となり勝敗もうやむやになってしまった。
暴発の魔導師の悪名がまた1つ広がり、風の噂で知ることになった高良が笑い出すのもそう遠くない未来の話だった。