平常勤務の降雨日 2
店の制服に着替え、クレーマーの前へ行く。
対応していた店員の顔をチラ見すると、涙目だった。
「お客様、本日はどのようなご用件でございますか?」
クレーマーは大声で文句を言うが、ブレイザードは顔色1つ変えずに頭を下げる。
ブレイザードは確かに血の気が多い。
だが、火に油を注ぐ真似はしない魔道師だ。
最も、客に油を注がれなければだが。
「おいアンタ、話聞いてんのか!?謝ってるなら誠意を見せろよ!そうじゃなかったらこの店燃やすからな!!」
今の一言のように。
「お客様?それは最早脅迫ですよね…?」
怒りに震えるブレイザード。
思考力が魔力に変わるが、このときばかりは怒りが魔力に変換され、勝手に小さな暴発が発生する。
「な、なんだよ、やるってのか?俺はこれでも魔導戦ベスト15なんだぞ!?」
さらにもう1回油が投下された。
「お客様、今すぐ撤回してください。謝罪は結構です。さもなければお客様に対して『魔導師』としてそれなりの対応をしなければなりません。」
その言葉に客ではなく他の店員が青ざめる。
ブレイザードはあくまで単調に述べた。
「お客様に手を出すことは決して行いません。しかし、お客様が手を出した瞬間…お客様は魔導師ではいられなくなりますよ?」
それを聞いて、ようやくクレーマーは事の深刻さを理解した。
「お、お前…ぼ、暴発の…!!」
それだけ言うと、クレーマーは逃げ帰ってしまった。