あなたへの手紙~雨の中の出会い~
男は手紙を読んでいた。
それは、ある人から送られた手紙。
ある人の思いが詰まった手紙。
されど伝わるか分からない手紙。
◆◆◆
出会った頃を覚えていますか?
しとしとと降る雨の日でしたね。
雨に濡れたあなたは笑っていました。
まるで雨が自分の一部であるかのように、あなたは笑っていました。
それから、いろいろな話をしましたね。
好きな食べ物、好きなゲーム、好きなスポーツ、仕事の事。
いつも笑いながら話すあなたは、時折、悲しそうに、寂しそうに話します。
それは、誰かと何かを一緒にしたよという話題でしたね。
一人に慣れたあなたは、慣れたといっている癖にいつも寂しそうで、大丈夫といっている癖にいつも辛そうで、そんなあなたが私は少し心配でした。
でも、最近、そんなあなたの周りも、人の輪が広がりつつありますね。
少しずつですが、人の輪が広がっています。
私はその事がとても嬉しいです。
最近、嬉しそうに話しているあなたを見ているのがとても嬉しいです。
嬉しそうに話しているあなたを見ていると私も嬉しくなります。
だから、そんなに怯えないでください。
そんなに怖がらないでください。
幸せになる事に怯えないでください。
誰かと一緒にいる事を怖がらないでください。
どうか手をとってください。
本日はホワイトクリスマス。
あなたの周りに降り続けていた雨も雪に変わり、雪が積み重なるように。
どうか、あなたの周りの絆も積み重なっていきますように祈らせてください。
雪が一面に積もるように、どうか、あなたの絆も一面に広がりますように祈らせてください。
そして、雪にも負けず、春には、地面から顔を覗かせる草のように、どうか、強き絆となりますように祈らせてください。
本日はクリスマス。
誰かとの絆を確かめ合うができる優しい一日。
寄り添い合うことができる優しい一日。
どうか、あなたが幸せでありますように。
どうか、あなたが笑っていられますように。
それが私の願いです。
私と出会ってくれてありがとう。
こんな言葉しか贈れない、私に出会ってくれてありがとう。
◆◆◆
男の周りの輪はその後、広がり、大輪となり、男は幸せに暮らしたという。
手紙の最後にはこう書かれていた。
でも、きっとあなたは否定するのでしょうね。
だから、ここに言葉を残しましょう。
あなたが、いつか分かってくれる事を願って。