第三十二話 白い羽による銀翼の批評会
白い羽の模様がシンボルとなっているホールに入る複数の影。
その先頭は白い髪に杖を携えた魔法使い。
ホワイトフェザーのリーダーノエルだった。その隣には両手を後頭部で合わせて、白い歯を見せて笑いながら歩くピンクの髪の目つきの鋭い少女。
その後ろには10人ほどが続いていた。各々の足取りは軽いが表情は重い。
ホールへと入り一つの長机の周りに多くの椅子が並んでいる部屋。いわゆる会議室のような部屋へ一同は移り、まばらに席につく。
「……座って」
理性的な声が響く。その一番下座に陣取るノエルが放った。
全員が着席したのを見計らって、再び声を上げた。
「……お疲れ様。無事にシルバーウィングの協力もあって34階を攻略できた。次からは私達だけで攻略できる階だから、シルバーウィングに手を借りる予定は無い。けど、良い経験になったと思う」
言葉少なに労う。
「確かにな。ま、今回はアタシらの完敗だったけどね」
「……それは仕方がない。私達はチームプレイが売り、だけれどそれをする暇すら貰えなかった。あれは予想以上」
その発言の後に続いて誰かが口にする。
「白薔薇が凄かった」
「いや、凄かったのは最後の火の魔法よ。見たことないわ」
「シルヴィーさんに勝るとも劣らないあの銀の狼だって凄いかった」
「同じ剣士として、あのクリアの剣技には評価せざるを得ない。それにあの馬鹿げたステータスだ。何なんだよあいつ」
口々に感想を言い合う。それぞれが感じた印象に残るワンシーンというのは異なる。自分が得意とする戦闘スタイルで卓越した動きが印象に残っているようだった。
「……シルヴィーは誰が一番強かったと思うの」
ホワイトフェザーは戦いの感想よりもシルバーウィングの面々の話題の方に興味があるようだった。
「それぞれ良い所があるから、誰が一番ってのは簡単には決められないけど。アタシはあのシルバーかな。シルバーって勝手にアタシが言ってるんだけどな」
「……あの銀狼? 確かに、頭一つ抜き出でてた。速さもそうだけれど、空中を自由自在に動き回るし、犬だから関節が柔らかくて方向転換しても速度があまり落ちない」
「常にトップスピードで気持ちよさそうに走ってたよ。ムカツクなぁ、もう」
「……シルヴィーに聞きたい」
「なんだよ、遠慮せず言っていいよ。答えられるなら答えるから」
ノエルは一瞬言うのを躊躇するように、喉を鳴らすが結局は口にした。
「……白薔薇。クリアは、あんなに強かったの?」
「元々かなり強かった。白薔薇の名前も、ブルーローズでエース張ってたのは伊達じゃない。しっかり剣術に基づいて魔剣を振るうし、ステータスもかなり高い。けど、あんな魔人染みた強さだった覚えは無いね。あれは強さの階段を数段飛ばしてるよ」
「……じゃあやっぱり最初の魔法のせい」
ノエルは俯き思い出すように考え事をする。
「あの全員にかけた魔法かい? 良い強化だったね。アタシは今までで抜群に動きも良かったよ」
「……そう。ウチが8人にシルバーウィングが4人だから、12人全員に一度に付与してた。それであれだけの効果を持ってる。彼、考えて無いように見えてかなり考えてる」
キシシッ。
嬉しそうな笑い声が響く。
「良く見てんじゃん。アイツ、目立ちはしてないけれど良くやってたよ。最後の火のおぞましい魔法も補助に徹してたしね」
「……あれは古代魔法。あの赤い女の魔法使いはたぶん名立たる精霊。それに、一番最初の強化も古代魔法のにおいがしたけれど違った。あれは別系統」
「あの火の魔法使いは精霊だったか。で、あの能天気馬鹿も古代魔法に似た魔法を使うと」
「……あの子、名前なんだっけ」
「能天気馬鹿ならアオイだよ。一応シルバーウィングのリーダーなんだから覚えてやりなよ」
「……そう、アオイくん。彼の魔法は見たことない。彼はかなり魔法に詳しい。独自に改良して術式を変えられるぐらいの高位の魔法使い」
どこか気まずそうに苦笑いするシルヴィー。
「アイツ、そんな凄いのか?」
「……凄いのかはわからない。けど、あの中で一番変。まず彼、リーダーなのに一番目立ってない」
それをノエルが言ってしまった瞬間、シルヴィーが大笑いしホワイトフェザーのみんなも同意して笑っていた。
「あー、笑ったよ。ノエル、あんまり言ってやるなよ。可哀想だろ」
「……? 事実。ただ、それを含めてもシルバーウィングが強いのは本当」
まとめるようにノエルが言う。
「スピード系のアタッカーの銀狼。スピード、パワー、テクニック三拍子揃ったアタッカーのクリア。最高位の炎の魔法使いの赤い女の子。そして、そこそこ高位の付与と補助魔法の使い手のアオイくん。少数精鋭ながら良いの集まってる」
「キシシッ。最後だけ実力未知数だけどな。アイツだけは一片しか見せて無いから何とも言えないね。で、皆、エースは決まったか?」
ホワイトフェザーのメンバーから、バラバラに名前が出る。
ただ、その中で一番多い名前は白薔薇の名前であった。
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