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第03話

 いまだ、チェーンソーを持ったピエロ達は死体の解体にいそしんでいる。

 結局、OL風の女性がピエロ達の犠牲になったのだ。


「また、一人死んだ」


 その言葉に加奈は、ハッとした。

 一人殺されれば一人補充される。

 次に補充されるのは?

 リングの入場口の格子が上がった。

 出てきたのは少年だった。まだ中学生くらいだろうか。

 彼はまるで何事もないかのように歩を進める。

 そして、加奈の目に映った。


 空中ブランコっ!


「よけてっ!!」


 その声によりによって少年は足を止めた。

 右からはテーブルナイフを抱えたピエロが、左からはフォークを抱えたピエロが、それぞれ空中ブランコで少年に迫る。

 加奈は思わず目を瞑る。

 しかし、異変は観客のブーイングで気付いた。

 目をあけると少年はこちらに落ち着いた足取りで歩いて来る。

 そして、ピエロ達はナイフとフォークをお互いに突き刺したまま、宙吊りになっている。

「何が起こったの?」

「あの子が、素手でナイフとフォークの軌道を変えて相撃ちにしちゃったのよ」


 20代前半と思われるワンピースの女性が呆然と呟いた。

 少年はリング中央、生き残りの4人の前に立つと、唐突に言った。


「テラーは誰?」


 ……テラー?

 なんの事だろう?

 しかし、それを尋ね返す前に次の演目が始まった。

 司会の姿はなかったが、声だけが響いた。


「さぁ、お次は複数人での玉乗りでございます。本日のピエロ役が捕まるかどうか、どうぞお楽しみください」


 地響きがした。現れたのは人間の身長を軽く上回る鉄球。そしてその上にのるピエロ達。鉄球は初めはゆっくりと、そして次第にスピードを上げて迫ってきた。


「逃げろっ」

「散らばるなっ」


 散らばるなと言ったのは少年だった。

 その声に思わず加奈の足が止まった。

 何か、その言葉に確信めいたものを感じたからだ。

 だが。


「何をやってるっ! 早く逃げろ!」


 他の3人は逃げていく。

 鉄球が迫ってくる。


「は、早く逃げないと」


 すると少年は加奈の手をつかんだ。


「せめて、君だけでも逃げないで。大丈夫。彼らはベースにした物語のルールに縛られているから」


 ベース? ルール?


 少年の言った意味は分からなかった。

 だが、少年の行動が正しかった事は証明された。

 鉄球は二人を素通りしたのだ。


「な、なんでよ」

「うわぁぁぁ、こっちにくるなぁぁ」


 スーツ姿の男性に鉄球が迫る。

 そして、聞きたくもない、水っぽいものを押しつぶす音が響いた。

 鉄球とそれにのったピエロ達が消えていく。

 無事だった二人が戻ってきた。


「君達にも言っておくけど、死にたくなければ、ばらけないで。フォローのしようがないから」

「あ、あなた何者なの?」


 ワンピースの女性が振るえながら聞いた。


「僕はただ別のモノを追ってここにたどり着いただけさ」

「別のモノって?」

「快楽殺人者のデスゲーム」


 それは知っている。

 5人で歩いていると、いつの間にか見知らぬ森に誘い込まれ、一人々々残忍な手口で殺されていくというものだ。そこから脱出する方法はただ一つだけ。


 加奈の思考は格子の上がる音で遮られた。

 今まで入場者が通ってきた通路はいまだお互いを刺したままのピエロ達がいるので、もう一つあった入場口が開いていた。

 そして、そこから聞こえる泣き声はよく知っているものだった。


「このかっ?!」

「え? 加奈ちゃん?!」


 入場口から飛び出してきたのは、間違いなくこのかだった。

 走る勢いで胸のロケットが飛び跳ねる。


「な、なに。ここどこなの。私なんでこんなところにいるの?!」

「落ち着いて!」


 しがみつくこのかに、加奈は声をかける。

 無理な注文なのは分かっている。

 ただでさえ怖がりのこのかに、この状況は耐えられる訳がない。絶えず頬を涙が濡らしている。


「とりあえず、僕の言いたい事が二つある。いいかな?」


 少年が言った。


「全員、死にたくなければ散らばらない事。そして――」


 少年は加奈を含め4人を見渡す。


「テラーは誰?」


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