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樹海スタート

脳が覚醒していくのがわかる。

どうやら俺は奇跡的に生きてたらしい。

嬉しい反面、親にまた迷惑かけるなという罪悪感に似た気持ちがある。

まず自分の体が五体満足か確かめなければ。

目を開けてみると俺が想像してた光景とは全く違う情景が入ってきた。

俺が想像してたのは両親が泣きながら俺が目をさましたことを喜んでいるだろうというものだった。

でも違った

俺が寝ていたのはどこかの森の中だった。

違うな。どっちかというと樹海のほうがしっくりくる。

空は樹木の枝で覆われほとんど真っ暗にだが、かろうじて隙間から入ってくる光が樹海の中を照らしている。

見ると俺は五体満足だったというより傷ひとつ追ってない。

なんでだ?

あの状況じゃ助かったとしても無傷でいられるはずがない。

それに俺はなんで樹海の中にいる?

トラックにはねとばされて樹海まで吹っ飛んだというならそれはもはや怪奇現象だ。

いや、今のこの状態は怪奇現象というにピッタリだな。

神がきっと俺のような純真無垢な少年を死なすのはもったいないと思ったのに違いない。


自分でも希望的観測にも程があると思うが今は神を信じるほか出来ることはなかった。



その後も数分間なにかしらの変化を待ったが何も起こらなかった。

「………はぁ~~あ」

俺は長い溜息を吐き、頭をがしがし掻きながら立ち上がった。

じっとしてても何も始まらないからな。

「…ん?」

そこで俺はあることに気づいた。

なんだか体が以上に軽い。

その場で少しジャンプしてみる。

「うおぁ!!」

思わず驚きの声が出た。

ほんの数センチ地面から離れるぐらいの力で飛んだのに、俺は1メートルぐらいジャンプしていた。

いくらなんでもおかしいぞ。

いや待て早まるな俺、もしかしたら寝起きのせいで体に力を入れすぎたのかもしれん。

俺は気を取り直し、今度は足をくっと折り………………

シュビッ!!全力で飛んだ

「………………は?」

今度は素っ頓狂な声を上げた。

俺は大体3メートルぐらい飛んでいた。

俺は運動神経はいいほうでジャンプ力だってあった。

でもあったと行ってもせいぜい1メートル半ぐらいしか飛べなかったはずだ。

さすがに3メートルは飛べないし、というかもはやオリンピックに出れるぞ。

「………………おかしい」

もしかした俺はあの事故で助かってなかったかもしれない。

実はどこかの病院で植物状態になって生きながらえているのやもしれない。

そして今起こっていることは全て夢なのではないだろうか。

いや夢ならおかしい。

夢の中でこんなにも深く思案出来る訳がない。

それにさっき飛んだ感覚や着地したときの感覚も全て夢な訳がない。

それに俺の衣服も制服のままだ、エナメルバックはないけど。

俺ってもしかして異世界に呼び出されたんじゃ…………

「いや……もうやめだ」

あれこれと考えても納得のいく答えが出るはずがない。

今はできる限り周りから情報を得るのが先決だ。

俺は辺の探索を始めた。


探索を初めて数分もうすでに自分が寝ていた場所は全く分からなくなっていた。

樹海っていうのはほとんど歩くのもままならないほど草が生い茂っているはずだけど、そんなことはなかった。

まずこれが第一の手掛かりだ。

草は生えてるには生えてるが、その殆どがぺしゃんこなのだ。

よって、誰かが道を慣らしたという可能性が出てくる。


そして手掛かり第2

今見つけた。

これはもはやここ異世界であることを証明してるようなものだ。

第一の可能性も塵と化すかもしれない。

思わず見なかったことにしたいが生憎、今の状況じゃ調べるほかない。

俺は目の前の樹木を見上げた。

とても巨大だ。

っと言ってもどの樹木も一緒ぐらいにでかいんだが。

違うのは樹木の4メートルぐらいの高さに大きな引っ掻き跡があることだ。

地球でも大きい生物はいたがどれも木を引っ掻くような凶暴な生物ではない。

それに引っ掻き跡が異常だ。

数十センチぐらい深くごっそりともっていかれているのだ。

そしてさっき道が慣らしてあったといったがあれは間違いだ。

恐らく巨大な何かが通ったせいでぺしゃんこになって、それがあたかも人が慣らしたように見えたのだろう。

さすがの日本人の俺でも危機感を覚え始めた。

今俺がいるのは薄暗い樹海の中、しかも巨大で凶暴な何かがいるところだ。

こんなところにいたら食われるかもしれない。

逃げなければという気持ちがはやるが、一体どこに?

辺には樹海が広がるのみだ。

目を凝らして見ても数百メートルさきは真っ暗で何も見えなくてどこまでも樹海が続いていそうだ。

「ちっ」

俺は舌打ちまじりに適当に走った。

とにかくあの樹木からできるだけ遠くに走ろう。


樹海の中に俺の走る音だけが響く。

当たりは静寂に包まれていて、それが余計に恐怖心を煽る。

病院の肝試しみたいなものだ。

何もいないはずなのに何故か走って逃げたくなるような感覚だ。

普通、極度の緊張状態についで全力で走ると息切れを起こすものだが不思議と疲れなかった。

そりゃ少しは疲れたが明らかに体力は上がっている。

それに加え、ずっと樹海が続いて感覚がおかしくなっていたのか俺は今走っている速度が異常に早いことに気づいた。

約100メートルの距離を6秒くらいの速さで走っている。

「…………すげぇ」

これなら巨大な怪物がきても逃げ切れるんじゃないだろうか。

「…………いや無理だな」

もし怪物が猫科だったら余裕で食われるだろう。

それから走り続けて数分。

俺がやっと息切れを起こし始めたとき。

「……ん?」

俺は何かに気づいて走るのを止めた。

耳を澄ましてみる。

樹木の葉が風に揺られる音に混じってかすかに水の流れる音が聞こえた。

「川だ」

恐らくこの近くで川が流れているのだろう。それも大きな。

俺は辺を見渡してみる。

「あった」

いやあったというよりそれらしい場所は発見した。

前方に強い光が差し込んでいる道がくっきりと見える。

あそこに川が流れていて樹木がなく、それで日差しが差し込んでるのだろう。

行ってみるとそこはやっぱり川だった。

「ふぅ~~~~…………」

やっと人間らしいものを見たせいか緊張が一気にとけその場にへたりこんでしまった。

急激に喉が乾いてくる。

この川から何か手掛かりが掴めるかもしれないが、今はそんなことよりただ水が飲みたかった。

俺は川の方まで這った。

制服はもう枝とかに引っかかってボロボロになったし汚れたところで大して気にならない。

なんだって川があるんだ。

服も洗えばいい。

「でもその前に水…………ゴクゴク」

俺は顔を川に突っ込むとなんの確認もなく飲んだ。

汚い川だったらどうしようとも思ったが幸い、川の水は綺麗で程よく喉が潤った。

「生き返った」

俺はその場で寝っ転がった。

長かったようでその実、時間は1時間ぐらいしかたってないかもしれない。

もしかしたらここは地球でどこかの無人島なんじゃないだろうか。

俺はとある深夜アニメを思い出す。

そのアニメは突如無人島に連れてこられた主人公と他の人々が爆弾を使ってバッチを奪い合い、決められた個数のバッチを集めれば島から出れるという話だった。

俺の状況と似てないか?

似てないな。

緊張が抜けて忘れてたけど、俺はトラックではなられたと思ったら何故か樹海の中にいて、それにさっき巨大な爪の跡をしっかり見たはずだ。

よってここは異世界の可能性大。

「よっこらしょ…………」

こっちにきてから随分と老けてしまった。

俺は陰鬱な気持ちでポロシャツと上着を脱ぎ川でワシャワシャと洗い始めた。

思ったんだがこの川プカプカ浮いて流れていったらどこかに着くんじゃないだろうか。

そんなことを考えもしたが危ないのでやめた。

ここは異世界の樹海の中の川だ。

でっかいアナコンダとかいたら洒落にならない。

BADENDだ。

「…………」

ワシャワシャッワシャワシャ

ひたすら泥を落とす。

日差しにあったて気がついたことがある。

暑い。日本の夏ぐらい暑い。

思わず川に飛び込みたくなるぐらい暑い。

さっき顔を突っ込んで見たけど意外と浅かった。

恐らく入っての膝ぐらいだろ。

でも水浴びしてる時に怪物が来たらどうしようとか思っちゃう訳よ。

でも体のあちこちが痒いし入ることにした。

「はふ~~~」

俺は服を着たまま川にゆっくりと入ってプカプカする。

ちょっと冷たいが夏の川なんてそんなもんだ。

小便もしようかと思ったが、またお世話になるかもしれないのでやめた。

「きもち…………ん?」

「気持ちいいな」と言おうとした俺だが途中でやめた。

何か地響きのような音が聞こえたからだ。

俺は慌てて起き上がって耳を澄ませた。

ドシン…………ドシン…………ドシン…………ドシン

巨大な足音が近づいてくる。

また嫌な緊張感が襲う。

俺はもう一度水に深く身を沈ませ近くに岩に隠れて、辺を見回した。

ドシン…………ドシン…………ドシン…………ドシン

樹海の鳥達が足音が響くたび逃げるように飛び去っていく箇所がある。

…………あそこの下だな。

目星を付けた場所を岩陰からじっと見据えた。

俺から数十メートル離れた場所だ。。

ドシン…………ドシン…………ドシン…………ドシン

足音が大きくなっていきそして樹海からその姿を表した。

「う…………!!」

思わず声を出しそうになったが慌てて口を塞いだ。

巨大な樹木の間から出てきたそれは、体調7、8メートルはあろうかというぐらいの熊だった。

熊はがっしりとした肉に覆われれ、真っ赤な目と、真っ黒な剛毛を生やしている。

それに一番目をむいたのが1メートルあろうかという爪だ。

恐らくあの爪で樹木を抉ったのだろう。

熊は四つん這いになって水を飲み始めた。

…………今のうちに逃げるか

そう思案した俺だったがすぐに考え直した。

まだ見つかってない。

距離も数十メートル離れている。

このまま岩陰で隠れて待ていい。

下手に動いて見つかれば、いくら足が速くなっているといっても追いつかれるだろう。

熊は一見して足が遅いと思われがちだが、実は鹿なんかを走って捕まえるほど早いのだ。

それに加えあの巨体だ、歩幅もだいぶ左右してくるだろう。

と、その時

「…………!」

唐突に熊が動いた。

今までただひたすら水を飲んでいたが急に立ち上がると…………………………………俺の方を見た。

「……………は?」

心臓が飛び跳ねるような感覚が俺を襲う。

嘘だろ、なんでバレた。

俺はずっと岩陰に隠れていたはずだ。

臭いでわかったのか、それとも動物の感か?

いや違う。

おそらく水に浸かってたのがいけなっかたのだろう。

俺と熊の位置は川の流れからして俺が上流で熊が下流だ。

水の中に異物が混じってるのを感知し、俺の方を見たのだろう。

…………いや待て。

ただ上流を見ただけかもしれない。

まだ俺が見つかったという保証はどこにもない。

異物を感知した、ただそれだけかもしれない。

しかしそんな俺の考えは次の瞬間打ち砕かれた。

「ヴヴオォォォォォォォォォォォォ!!」

熊がこちらに向かって樹海に響きたるぐらい咆哮した。

ドシン…………ドシン…………ドシン…………ドシン

そのまま間入れず俺に向かって猛スピードで突進してくる。

俺は思わず逃げそうになる足に握り拳を叩きつけ、半分ほど出かかった体を岩場に引っ込めた。

心臓がかつてないほど振動するのがわかる。

俺は発狂しそうになる精神に鞭打った。

今逃げれば追いつかれて食われるだけだ。

俺が身を潜めている岩場と、突進する熊の距離が10メートル先まで迫る。

岩ごと俺を潰そうとするのが分かる。

俺は中腰の姿勢で足に全神経を集中させた。

熊と岩が衝突しかけたその瞬間、

「らぉぁ!」

思い切り前方に向かって飛んだ。

飛んだ、というより跳躍に近い。

距離は10メートルぐらいだろうか。

数秒間浮遊した後着地し、勢いを殺さないまま樹海に突っ走った。

ゴシャ!後ろで岩が潰れる音が聞こえる。

少なくともこれで突進の勢いは落ちただろう。

しかしここからが逃走劇の始まりだ。


あの後俺が樹海を全力で走っていたが、

ドシン……ドシン……ドシン……ドシン

巨大な足音が後ろから迫ってくる。

すぐに熊は俺を追いかけてきらしい。

俺は前に注意を払いつつ振り返った。

「なっ…………!」

俺は思わず絶句する。

先程まで数百メートルあったはずだ。

が、俺と熊の距離がもう数十メートルにまで縮まっていた。

「……速すぎる!」

熊は俺が予想はるかに上回る速さで追いかけてきた。

「……ん?」

ずっと後方で薄暗くてよく見えないが小さい人影のようなものが熊を追ってきているように見える。

気になるが、しかし今はそんなこと考えている場合じゃなかった。

今も熊は俺を食べようと突進してきているのだ。

怪物の真っ赤な目が俺を見る。

「うっ…………!!」

俺は前を向き、いつまでも続く樹海を走った。

ドシン……ドシン……ドシン……ドシン

「ヴヴオォォォォォォォォォォォォォ!!」

「っ…………!!」

足が震える。

体中から汗が吹き出してくる。

腰が今にも力が入らなくなりヘタリこんでしまいそうだ。

そして熊はどんどん距離を縮めてくる。

俺は走りながら人生で2度目の死の予感をした。

そして死の恐怖心を覆い尽くすぐらいの悔しさがこみ上げてきた。

クソ!せっかく飲酒運転のから生き延びたのにすぐ死ぬのかよ!!

俺は熊に向かって精一杯ガンつけてやった。

「…………なめてんじゃねぇぞ」

それはもはや子供の負け惜しみに近かったが、それでも簡単に食われるつもりはない。

俺は緊張でうまく回ってない脳みそを無理やり回転させた。

「ヴヴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!!

後ろで熊の叫び声が聞こえる。

このまま走り続けてもいつか捕まるだろう。

…………でも食われるつもりはさらさらねぇよ!

俺は心の中でそう叫び、前方の樹木に目星をつけ、

「おおおおおおお!!」

そこに向かって震える足を全力でフル稼働させた。

目の前に巨大な樹木が迫ってくる。

俺は樹木にぶつかる前に、腰を落とし、片足を半歩引き、思い切り全力疾走にストップをかけた。

そして一息つく間もなく横に向かって全力で跳躍した。

俺は飛びながら後ろを見た。

ドォォォォォォオン!!

樹木と怪物が衝突した音が樹海に轟いた。

俺は不時着し地面を転がった。

すぐさま起き上がり、樹木の前で倒れる巨大な黒い怪物に目をやった。

いくら熊が巨大だろうと、その数倍のデカさの樹木に頭から突進したんじゃ痛いだろう。

岩に突進してきた時に思ったがやっぱり巨大なっても馬鹿なもんは馬鹿だ。

頭を使えばいくらでも策は出てくる。

と、強がりたいところだがもう俺の足腰に限界が来てた。

俺はその場で倒れ込んだ。

アドレナリンが引いてきたのか足がパンパンに膨らんだような感覚になる。

「はぁ………はぁ……はぁ」

やっと息継ぎが出来た。

なんだか体がマラソンを終えたあとみたいにポカポカしてくる。

このまま眠ってしまいたい。

が、その間に熊が起き上がってきたらさっきまでの苦労が台無しだ。

「よっこらしょ…………」

俺は痛む体に鞭を打って起き上りフラフラと歩きだした。

俺は恐らく今日一日でかなり老け込んだことだろう。

トラックに轢かれたと思って、目が覚めたら樹海に放り出されていて、謎の引っ掻き跡見つけて怖くなって適当に走ってたら川を見つけて、水浴びしてたら巨大な熊登場、岩場に隠れてやり過ごそうとしたが、あえなく見つかって熊に追っかけ回される羽目に…………………もう嫌だ元いた世界に帰りたい。

お腹も減ってきたし、眠りたいし、風呂にも入りたい。

まぁ、ひとつだけ手掛かりは…………………

と、そこまで思案したところで俺は止まった。

ドシンと聞き覚えのある足音が聞こえたからだ。

振り向くとさっきまで気絶していたはずの黒い怪物がのっそりと立って赤い目でこちらを見据えていた。

「ヴヴオォォォォォォォォォォォォォ!!」

熊がこちらに向かって怒り狂ったように突進してきた。

……………油断した。

完全に俺の甘さが生んだ失敗だ。

もう逃げる気力も体力も俺にはなかった。

俺は地面に尻餅をついて突進してくる黒い怪物を見ることしかできなかった。

俺はトラックに惹かれる前のように目をつむった。

「…………………」

しかし待てど待てど死の瞬間は来なかった。

ゆっくり瞼を上げるとそこに首が取れた熊の巨躯が入ってきた。

「うわ」

俺はネットとかでグロいのには慣れてるがこれにはちょっと引いた。

首からダラダラと血が流れている。

「なんだ……生きていたのか、運のいいやつだな」

突然、樹海に凛とした声が響いた。

…………………やっと人間に会えた。

俺は嬉しくなって声の主を探してみるも、なかなか見つからない。

「人間どこ……人間どこ」

「ここだ、ここ。……上を見てみろ」

言われて上を見上げてみると、樹海の枝の上に立っている人を見つけた。

まず目をつくのが銀髪、そして意志の強そうな瞳、腰には剣を、見たこともない民族衣装を着た美少女だった。

少女は俺が気づくと枝から飛び降りて軽やかに着地した

すごな、あの高さから飛び降りても大丈夫って、こっちの世界の人間は丈夫らしい。

というか最初から降りててよ。

「お前、なんだその服装は動きにくいだろ」

少女は俺の服を物珍しそうに触っている。

「お、おい。勝手に触るなよ」

「む、少しくらいいいじゃないか」

「よくねぇよ。こっちは聞きたいことが山ほどあるんだ」

「なんだ、手短に終わらせてくるれ。このあとこの熊を解体しなければいけない」

……………解体って。

「まず第一に、俺は誰だ」

「そんなもの私が知る訳ないだろ」

「わ、悪い。間違えたっ」

どうやら非日常の連続でボケてたらしい。

俺は気を取り直して次の質問をした。

「第2、ここはどこだ」

「ダンジョンワールドだ」

「どこだよ!?……もっと詳しく!」

「お前、記憶がないのか?」

少女が心配そうに聞いてくる。

きっと熊に頭でも殴られたのかと思っているのだろう。殴られたら死ぬけど。

「……うん」

今はそういった方がいいだろう。

「そうなのか」

少女は俺の返事をいとも簡単に信じてくてた

「だから教えてくれ。ダンジョンワールドってなんだ」

「ダンジョンワールドというのはダンジョンが織り成す世界のことだ」

「…………お前、説明下手すぎ」

何一つわからねぇよ。

「?…………何か言ったか?」

「なにも………出来ればもっともっと詳しく教えてくれ」

「悪いが、私ではうまく説明できない。そうだ、長老ならお前の力になってくれるかもしれないぞ」

…………なんかドラクエみたいな展開になって来たんですけど。

でもいい案だ。

長老いるところに街あり。

きっと食べ物や風呂もあるだろう。

「じゃあ早速連れてってくれ」

「ダメだ。その前に私はこの熊を解体しなければいけない」

「じゃあ街の場所だけ教えてくれ」

「悪いがここからだいぶ離れている。口では説明できない」

「はぁ…仕方ない。俺はそこで寝とくから終わったら読んでくれ」

「ダメだ。お前も手伝ってくれ」

「…………はあ」

それが言われるのが嫌だってんだよ。

解体なんて無理に決まってんだろ。

「でも俺、何ももってないぞ」

「私のナイフを一本貸してやる」

少女はそういって懐からでっかいナイフを取り出し、俺に投げてきた。

一瞬、危ないとも思ったが刃のところに毛皮のカバーが付いていた

「で、一体何すればいいんだ」

俺は仕方なくやることにした。

元の世界に帰れるかわからない以上、こちらの世界の生き方を知っておく必要がある。

「あそこに転がっていっる頭から牙を剥ぎ取ってくれ。それなら簡単だろう」

全然簡単じぇねぇし!

むしろ難易度高いし!

少女の指さした方には俺が体育座りしたぐらいの大きさの頭が転がっている。

傍らまで行くとでっかい牙があるのがわかる。

もしあの少女が助けてくれなかったら、今頃この牙で噛み砕かれていたことだろう。

あの少女には感謝しないとな。


その後は黙々と作業が続けた。













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