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漸くニーア達が明るい話を書ける♪
我が家の主人公は奥手です。
ニーアはドSですけど、結構ピュアなので手は出しません。
《ここは城の端にひっそり佇む小さな離宮。転移魔法で移動した後ニーアはナナを空いている部屋まで運びベッドに寝かせた。》
後は世話好きのマーサに任せるか。
…絶対に何か余計な事までしそうだけど、他の侍女に任せたら何処の貴族の息がかかっているか分からないからなぁ…。ぶっちゃけ面倒だ。
極力他の人間には関わりたくないし。
《そう結論づけてニーアは自分の乳母であるマーサを呼びに行く事にする。彼女は自分が気味悪がられていても見捨てずにそばに居てくれた母親の様な存在だ。なので他の侍女達より信頼している。》
口煩いのが欠点だけどな。
さて、マーサはどこに居るかな。11時だと。メシ時の用意でもしてるか…厨房かな?
《ナナを寝かせた部屋から出ると、厨房に向かうため歩き出した。廊下はフローリングですべて大理石の城と比べると絨毯等は敷いていない、例えるなら日本の武家屋敷を想わせる廊下だ。しかし、各部屋の入り口はドア、窓にはガラス板がはめられていて現代日本家屋の豪邸と言った感じだ。》
さて……。
《ニーアはおもむろに窓や壁、廊下や各部屋のドアをざっと見渡し何かを確認し始めた。》
誰も入って来た形跡はなしだな。
中々優秀な防犯魔法だな。それかとても優秀な密偵でも雇って居るか…。
どちらにしてもナナの魔力の膨大さには謁見の間に居た貴族は全員気づいただろう。気づいて居ないのはナナ本人とナナより更に高い魔力の召喚されたあの二人くらいだ。
まぁ、殆んどの貴族は他の二人に何とか取り入ろうとするだろうが。あぶれた奴らはナナに取り入ろうとするだろう。地位はないが一応王子の俺が婚約者になったら尚更接触しようとするし。対策は今から取って置いても遅いくらいだ。
魔力の高さは蓄えておける量の高さの事を言う。例えるならこの国の平均的な一般人は樽一つ分。
余談だが、樽一つ分は下級魔法10回分ほど。厳密には10回もは無理だ。その前にぶっ倒れて悪ければ死ぬ。
ギルドに属している冒険者は下は樽二つ~三つ分、上は四つほどで、下級貴族もそのくらいだな。
上級貴族は跳ね上がって…タンクローリー二台分かな。
王族は規格外の…そうだな…琵琶湖一つ分?王族だけでも規格外だが異世界の人間はもっとすごい。海…だな。
王族は元々異世界人の血を引いているから魔力が桁違いで王族の血を引いている上級貴族も魔力が必然的に高くなる。
だからナナの魔力の量は腑に落ちない。不自然に低い。確かに膨大な魔力ではあるが…ナナの魔力はどうも何かが隠している節がある。俺も最初はナナが平均的であの二人が規格外なのかと思った。
だがどうも違うらしい。
多分あいつは無意識に隠しているのではないかと思う。ナナは自分が平凡と豪語していたし。自分を隠したい時や自分に自信がないと魔力は本来の量が判別出来ない。
不思議な事に“魔力は気から”なんてことわざがこの国にはある。それほど自分の気持ち次第で魔力なの量は変わる。
だからと言って、無限に高くなるわけではない。一人一人蓄えておける量は限られていてその量より多く蓄える事は出来ない。まぁ方法が無いわけではないが、今は良いだろう。
さっさと確認してマーサを呼んでこよう。
《歩きながら侵入者対策の確認をしニーアは厨房を目指していた。すると向かう方向から恰幅の良い女性が小走りで駆けて来た。》
「ニーア様!聞きましたよ。ご婚約なされたそうですね!」
《ニーアの目の前で止まるなり感極まった様子で話しかけてきた。》
やっぱりな。マーサのお節介が始まるのか…。勘弁してくれ。
とはいえ、マーサには信頼しているし、ナナの身の回りの事も頼みたい。
ここは、早く話を着けてこの場を離脱しよう。
「マーサやっぱり厨房に居たのか。探す手間が省けたよ。ちょっと頼みたいことが…。」
「えぇ。厨房で昼食の用意をしようとしてました。それよりも、噂の婚約者様は!さぁニーア様白状なさいな。このマーサからは逃げられませんよ…。いったいどんな方ですか?」
《ニーアに問いただす姿はどこか楽しそうで、質問に答えない限りここは通さないとでも言うかのように立ち塞がる》
「頼み事が先だ。その婚約者(仮)の身の回りの世話を頼みたいんだ。今は疲れたのか空いている一番奥の部屋で寝ている。」
ホントは疲れたのか、頭がパンクしたからなのか分かんないが。
「ニーア様に限られてその女性に婚前交渉などなさってはいませんよね?」
「それはない。俺が軽い女嫌いなのはマーサが一番知っているだろ。親父と一緒にするな。」
「そうでした。例え女嫌いが無くともニーア様はなにもなさらなかったでしょう。」
そんな甲斐性俺にあると思うかよ。
反面教師の父親を持つとこうなるんだよ。上の兄二人も不用意に女性に近づかないだろ。
親と同じ轍は踏まない。
「一番奥の部屋ですね。分かりましたニーア様。何かご用意しておきますね。」
「頼んだ。起きたら呼んでくれ。俺は書斎で仕事してるから。」
「またですか?轍や明けでも今日の分まで終わったハズでは?」
「明日は忙しくなると思うから今のうちにしておく。」
「昼食はいかがなさいますか?」
《マーサはどこか呆れた様なでもどこか楽しそうな顔で問いかけた》
「今食べたら眠くて仕事どころじゃなくなるから終ってから食べるよ。1時頃には終わると思うから、もしもナナが起きたら先に食べさせといてくれ。あぁ後あいつが厨房を使いたがるかもしれないから材料は好きに使っても良いと伝えといけくれ。」
「(まあまあ。あの心底女性を信用しないニーア様がここまで…。これは本当にご結婚もあり得るかもしれないわ。ナナ様…と言っていたわね。もう名前で呼んでいるのね~♪どんなにご令嬢達がアプローチしても冷たい目で追い払っていた。名前で呼ぶ事は絶対無かった、あの、あの!ニーア様が、女性の名前を親しげに呼ぶなんて~!)マーサは漸くニーア様の幸せを見ることができます♪」
…感極まっな泣いているマーサはこのまま放っといても良いだろうか…。
関わると長そうだな。
「じゃ、ナナの事は頼んだ。」
「お任せ下さいな。ナナ様は私がお世話致します。ニーア様、貴方も休まれて下さいませ。」
「あぁ。分かってるよ。」
《ガリガリ頭を掻きながら書斎へ来た道を戻るニーアに、マーサは聞こえないほど小さく呟いた「お母様も喜んでいますよ…」は聞こえていなかった。》
ニーアにとってナナはまだ恋愛対象ではないんです。
なので、何か不自由が有れば婚約も即解消しますよニーアは。
まだ続きますよ。