異世界との共通点~やっぱり秋刀魚は醤油が良いよ~1
《今回は分割するよ。》
「何で?」
《長すぎても読みづらいかな~と、思ってさ》
「なるほど…」
「騙されるなナナ。こいつはただ面倒になったかネタが尽きかけたかのどちらかだ。」
《鋭い……》
うちの主人公達はヒーロー的ではありませんので悪しからず。
転移魔法で楽に保存庫までナナを運んだはいいが起きない。
どれだけ寝るのか…まさか知識活用しすぎて頭がショートしてないよな。
何か原因があって目を覚まさないんじゃ…。
まさか俺がかけたアイアンクローが原因じゃ無いよな…。何か心配になってきた。こいつこのまま目を覚まさない事ないよな…。
「頭の中にも回復魔法は効くのか?」
試しにかけてみるか。幸い俺は回復魔法の適性が高いので回復は得意だ。下級魔法でもかなり回復出来るの。攻撃魔法も勿論使えるが、回復程では無い威力。余談だか、大陸の方では魔法ではなく魔術と言うらしい。だが何故か魔法を使う者は魔法使いではなく、魔術師と呼ばれている。統一感が無いな…。
さて、ナナに回復魔法でもかけてみるとするかな。多分疲れから来る気絶かも知れないし、一応…これからはナナには技を掛けないようにしよう。一応こいつは女なんだから…。
「我が活力を与えよ」
ほんとは詠唱なんていらない。だが詠唱した方が効果が格段に上がるため今回は詠唱した。普段は無言かもっと短い言葉で発動させる。魔法の基本は、イメージ。だから自分でイメージしやすい言葉を言えばそんなに長くなくてもいい。はず…。
どうもこの世界ではイメージが難しいらしい。見たことのない物や現象をイメージしろ、なんて普通は出来ない。
俺は前世の日本でみたテレビとかゲーム、映画のおかげでイメージでしやすかった。
下級魔法なら似たり寄ったりで皆どれか一つは使えるだろう。
火の玉出したり、水、風、岩等基本その属性の塊、ないし現象を敵にぶつけるのが下級魔法。
この回復魔法は体内の生命エネルギー《マナ》を相手に分け与えて細胞の活性化を促すものだと言う。回復魔法を使えるものは人体の構成に詳しい者や、医者が多い。
だがどうしてか俺はそんな知識なんて無い。前世は一般人だ。医学的知識なんて分からない。どうやらこれもイメージの問題らしい。
よくゲームではHP《体力》が1でも残っていれば死なない《ゲームオーバー》にはならない。けど、現実は違うだろ?日本語には“半殺し”という言葉があるが、本当に半分死んでいたらいくら細胞の活性化を促してもまず助からない。まぁ半殺しは言葉のあやだけど。
それと同じで足や腕が切断されてもくっつけて元通り…なんてホントは出来ない。実際はな。
でも出来てしまった…。だから俺は回復魔法は普段中度の怪我位しか治さない。例え目の前で誰かが瀕死になっても俺は見捨てる。それが親しい者なら構わず助けるだろうけど。
俺はヒーローじゃない。どこにでもいる普通の人間なんだ。きっとこの事がバレれば俺は何処かに監禁良くて軟禁されるんじゃないか?
そんなのごめんだ!!
《ナナの頭上に手をかざし詠唱する。すると暖かな光が彼女の体を包む》
………一先ずこれでいいかな。後は…やっぱり寝かせておいた方がいいかもな。こいつの身の回りの物はマーサに任せるとして、ここは一旦離宮にいった方がいいかな。何よりこいつ引きずるのは結構しんどいし…。
きっと乳母のマーサは泣いて喜ぶかも…。
俺が今まで兄弟以外は余り寄せ付けなかったから。それに母さんと結託したら…いや、止めておこう。考えたくない。
でもこの王宮の中で親しい友人なんていないからな、皆どこか遠巻きにしてるし。
この世界では初めてかも知れない、俺が王子、それも現国王の血を引いていない存在すらあやふやな俺に普通に接するのは家族以外ナナが初めてだ。
まぁ、それは血筋云々の話を母さんから聞くまでかも知れないが。
それに、多分ナナは日本出身だ、王族や貴族は外国の話し、皇族は雲の上の人々。接する機会なんて無いだろう。敬語や態度も一般的に失礼にならない程度しか身に付いてないだろう。そんな一般人が見かけ同い年の俺が王子だなんて言っても実感なんて湧かないだろうな。
誰かに期待するのはやめた。だからこいつが起きて俺への態度が変わったら…その時はあまり必要以上に近づかないようにしよう。
俺が傷つかない為に。
なんだかんだ言って女々しいよな俺は。
《考え事をやめ、ニーアはナナを抱き上げて魔方陣を展開した。人気の無い保存庫は魔方陣の放つ光で白く塗りつぶされる。そして光に包まれた二人は段々と弱まる光と共に消え失せた。そして何も無かったかの様に、まるで糸を解く様に魔方陣も消えていった。》
〈ナナside〉
ナナは浮いていた。何もない空間にただ浮いていた。その空間はいつしか形を作り色がつきそしてどこか見覚えのある風景になった。
“お父さんお母さんまだ着かないの?”
……誰?
“もう少しだよ。”
お父さん…?
“七海危ないからチャイルドシートにちゃんと座ってなさい”
お母さん…!
“はーい♪”
“七海遊園地に着いたら何に乗る?”
お兄ちゃん…!?
“メリーゴーランド♪”
この子は…私?
《ナナの周りは一瞬で家族団らんの車の中に変わる。そこには今はもう会えない家族が小さな自分と笑っていた。それもとても懐かしくどこか悲しい記憶だと気づく。》
“ほんと七海はメリーゴーランド大好きだよな~何回乗ったよ…”
小さい頃は毎回5回は乗ったかも…
“あら良いじゃない、メリーゴーランド。乗ってる七海は可愛いわよ”
5歳の時はね…今はちょっと恥ずかしくて乗れないよ…。
“七海がこの前「大きくなったら黒い馬に乗った王子様と結婚する!」って言ってたよ”
私そんなメルヘンチックな事言ったの!?
“なんだって!七海まだ早いぞ頼むから後12年はダメだぞ!
いや、まだその時の私5歳だから。そんなに早く結婚なんてしないよ。それに何で12年なんて中途半端な…
“お父さん気が早すぎよ、七海はまだ5歳なんだから…”
ほぉらお母さんもそう言ってるよ。
“それに王子様なんて日本には中々いないよ。外国なら居るけど”
お兄ちゃん中々現実的だなぁ…
“でも王子様って白馬でしょ?どうして黒い馬になの?”
確かに、何でだろう…
“王子様って後金髪だよね。”
“違うよ”
違う?イメージ的には金髪だよね…
“黒だよ、髪の毛”
黒?王子様って黒だっけ?
“会った事ある人?”
“うん。皆も知ってるよ”
“いったい誰なんだよ……まさか!?”
“さぁ、誰でしょ?”
あれ?私は不思議ちゃんだったの?それともこの頃から妄想癖があったの?……なんか悲しい…ような。
“そう言えばさ、七海が乗るメリーゴーランドの馬って黒い馬だよねいつも”
そう言えばそうだったかも…懐かしいな~。こうやってよく家族で出かけたよな…。でも確かあの時も…!!!
《とても楽しそうな家族団らんの場面が一瞬にして悲惨な事故現場に変わる。周りは一面火の海で小さな自分と自分の周りで倒れて動かない自分以外の家族。》
「どうして…。そうか…コレ夢なんだ。昔の事故の夢なんだ。」
もう見ないと思ってた夢。二度と見たくなかった。いつも自分はこの夢を見ては泣いていた。私がただ一人助かった事故…。
《事故現場は多くの車、中には大型車もかなりの数あり、殆どの車が炎上していた。昔の12年前の記憶のわりにやけにハッキリしている。そんな考えが浮かんだナナは当時幼くて気がつかなかった事に気がついた。》
あれ…どの車も無惨な運転席が外に出てる。
まるで何か大きい鋭い爪で引っ掻かれた感じで…
『違う。これは歪められた記憶だ。』
誰の声?
そう言えば、この事故は何が原因だったけ?あんまり覚えてないな…。
……………あれ?
《またもや場面が急に変わった。さっきとは打って変わりとても暖かい草原にいた。きっと昼寝をしたら気持ちが良いだろう》
なんと…まぁ~和む風景だね。正に昼寝日和だね。夢だけど。
《心地好い風が吹き、生えていた猫じゃらしが揺れていた。そして…》
「いつまで寝てる気だ」
えっ………えぇぇー!!
「何でニーアさんが夢の中に居るんですか!?」
主人公の心情は複雑怪奇。なので場面ごとに変わります。ですが中々表に出さないので皆気づいていません。
女性にたいして嫌悪しかありません。なので誰も寄せてけません。
それでもかなりの図太い神経の持ち主なのでその状況を楽しんでいる節もあるよく分からないお方なんですよ。
それと、ヒロインのナナさんですが、どちらかと言うとサブ主人公なんですよ。
性格は明るい様に見えて実は冷めていて諦めやすく、引きずりがちな普通の女の子なんです。