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Sな王子様とM?な迷い子  作者: 雲猫’
婚約者編
19/19

二人のニーア

 ニーア伯父さんの話もこれだけでは終わらないのだが、ここで一旦切ろう。キリがないからな。




「全く、ここ最近は物騒な連中が街の外からわらわらと入ってくるし。門番も腐ってる連中が多くなってきた。そろそろどうにかしないとこの国まで腐りきっちまうよ……腐った根は早めに切らないと」


「斬りたくても多すぎて迷うんだよ。腐りかけの根を見張るのも大事だけど、膿んだ所も放っとけない……王妃は今決断を決めかねている」



 王妃もこの事は心を痛めている……が、彼女独りではどうにもできない。王はあの通り役になど立たない。四面楚歌なこの局面を一体どうやって乗りきればいいのか……俺には皆目検討もつかない。



「救世主を禁忌タブーをおかしてまで呼んだのにねぇ……まぁ、誰も彼ら二人に期待なんてしてないだろうさ。何せまだほんの十代の子供……なんの役に立つのか……まぁ、ローア坊やが考えたにしては――国民の賛同を得る――という意味では、強ち間違いでもなかったかも……知れない?」




 あの考えなしの所謂脳筋のローアにしては頭を使った……と思う勇者召喚も根本的な解決になならない。どこに国の行く末を他世界の者に託す馬鹿が居るか。そんなのは2次元限定だ。



「さて、本題を。例の事件の証拠と裏付け…と、これを」


「ん?……薬瓶?」



 牛革製の封筒に入れられた数枚の資料と証拠品。そして何やらやけに赤い液体が入った瓶を一緒に置いた。手に取ると液体ではなくゼリーやスライムの様にまとまった半固形のモノであることがわかった。何なんだとニーア伯父さんに視線を戻すと一言、



「エリクシルって知ってるか?」


「は?」



 唐突すぎて話が耳に入ってこなかった。いや、耳に入ってきていても頭で理解出来なかった。




「エリクシルだ。赤い霊薬……賢者の石とも混同され勝ちだがこの世に存在するのはエリクシルの方だ。厨二病じゃないぞ転生者。コレはかなりお高い霊薬。売れば一生遊んで暮らせるほどお高い。大概の病も怪我も治せる。嫌な予感がする、持っていろ」


「売ってもいいか?」


「何もなかったらな。」




 冗談のつもりが本気の答えが帰ってきた。いや、売らねぇーし。勿体ない。大事に奥の奥に仕舞っとくよ。


 それにしてもそんな高い薬を待っているなんて、それもこんなに簡単に俺に渡すなんて……ホントにこの人何者なんだよ。王族だからとかもう理由にならねぇだろコレ。




「使わない事に越したことはないが……そうそう。あの蛇使い魔にしたからお前に仕えさせよう」


「……何でもアリだなぁあんたは…」


「そうでもないさ」




 離宮のキッチンに潜んでいたある意味憐れな黒い蛇はナナが自室に行って直ぐにニーア伯父さんの使い魔により離宮からこの店に移動させられていた。


 机の上に鎮座する黒い蛇は金目をうるうるとさせて俺を見ている……伯父さんに何をされたのだろう……コワッ。



「俺が使い魔にしないと……どうなる?」


「ニヤァ…」


『( ;∀;)』


「うん、わかった…わかったから。(そんな目で俺を見るな!)」



 黒い蛇は余程ニーア伯父さんにトラウマを植え付けられたのか……知りたくねぇ……。




「なにもしてないぞ。まだそいつは子供だから私の内包魔力に怯えているのだろ……動物なら余程鈍感なもの以外は怯えて近づきもしない」


「あ、あぁ~……俺も近々そうなる?」


「無いだろう。王族はその瞳で生き物を惑わす事も出来るが……制御出来ているのだからそれはないだろう。ホレ!」


「どわっ!?」



 あろうことかニーア伯父さんは俺に向けて黒い蛇を投げて寄越した。おい、生き物投げるなよ。


 その蛇は俺の額に当たって机に落ちた。まぁ、普通の動物なら痛いだろうが、コイツは魔物…なんだろう。金の目が……不思議な光を発している…気がする。魔力もかなり保持しているようだし…。


 それにしてもこの蛇、やけに大人しいな。普通なら物陰に逃げるか、毒蛇なら気性も荒いしもっと攻撃的だろう……。



「その蛇は普通の蛇じゃない。それはお前にも分かるだろう。魔物でも特別な種族だ。その昔、大地を一回りするほどの巨大な大蛇が居たそうだ……とある神と相討ちしたと言われる大蛇の子孫……それがその蛇だ。魔力も他の魔物より群を抜いている」


「お前…そんなにスゴい蛇だったのか?」


『シュー?』


「もう少し成長すれば人の言葉も話せるようになるだろう。おっと、この子もお前に託そう」


「へ?」



 だんだん話についていけなくなった。何だよ使い魔なんてそう何匹も要らないって……



 その時は俺もそう思った。




『きゃん!』


「うっ……(可愛い……)」


「(お前も誰に似たのか可愛いもの好きか…)」




 ニーア伯父さんが一旦席を立ち何か生き物が入っているケージを持ってくる。すると待ちきらないのかケージの中に入っているのが嫌なのか机の上でケージが暴れている……あれだ、某RPGに出てきそうな偽宝箱の魔物に似ている。俺はあれやったことないんだけどな。


 そして出てきたのは……これまた真っ黒な仔犬。それも目なんかくりっくりの頭から尻尾の先まで真っ黒。こっちを見る目がキョトンとしていて……可愛いもの好きには堪らない涎ものだ。



 ヤバイ、ホントに可愛いコイツ……








 一方その頃~ナナside~





「う~ん……」



 私は今悩んでいる……。そう。



「……どうして膨らまないの?」



 シュークリームのシューを焼いたのだが、膨らんだと思ったら萎むという初歩的な失敗をここ三回繰り返しているのです。もうカスタードクリームとホイップクリームはもうできているのです……肝心のシューが出来ないと……何が悪かったのか。



 もしかして分量を間違えた? あ、もしかしたら湯煎の仕方が不味かったかなぁ……もう少しぬるめかな? もとの世界のコンロと違ってこのコンロ火が強すぎて調節し辛いのよねぇ……はぁ。



「でも負けるもんかぁ! ニーアさんにシュークリームをたべてもらうんだぁぁ!!」




 何でもこの世界にはお菓子文化が浸透してないんですって。あれ?これ前にも言った気がする……ま、いいか。オッホン……クッキーとかは存在はするみたいだけど、ふわふわなシフォンケーキも今作ってるシュークリームも無いんだって……マーサさんから聞きました。ニーアさんの好物とか聞こうと思ったんだけど……好物以前に好きなお菓子はあまりなかった。


 いえ、この世界にはまだ存在しなかった! 



 多分同じ世界出身だとすれば、私が作れるお菓子のなかに好きだったものがあるのかもしれません……俄然やる気が……と、同時にしかしたらほホームシックを引き起こさないかと……大丈夫ですよね?ニーアさん………




 そんなちょっとした不安を飛ばす様にお菓子作りに集中する私でした。






 前世の親に似て可愛い物好きの気があるニーアでした。それを分かっていてからかうのが伯父のニーアです。


 ちなみにニーアの父親はホラーゲームが好きでしたがニーアが居ないところで遊んでました。母親に睨まれたからです。





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