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Sな王子様とM?な迷い子  作者: 雲猫’
婚約者編
17/19

のんきなのは才能

 夕食も食べ終え、一息ついているとナナが本日3回目のおかわりを要求してきた……一体その体の何処に入るだよ。


 茶碗に多目によそったご飯を渡しながら心のなかでボヤいた。この手の話題は女性には禁句だ。声に出すなんてヘマはしない。



「ニーアさんの作るご飯は…懐かしい味がします。……モグモグ…お母さんの味ですね…モグモグ」


「そうかそうか……俺はお前のお袋か」



 呑気だな。いや、知らない世界に連れてこられたにしては剛胆だよな……。あっても間もない俺を信用してるんだ……本当に信用してるかは知らないが。



 今晩は俺が料理を作った。ナナは自分の妄想に忙しそうだったのとあの状態のナナに近付くのは危険だと前世の経験上知っていたから。確かあれは父方の親戚のおばさ……女性に対して母さんが兼もほろろに「あの手の妄想癖持ちは妄想している時に近付くと火傷するから近付いちゃダメだぞ!」と割とマジに言っていた。特に腐のつく女性は危険らしい。それは顔を青白くさせ真剣な顔で父さんに忠告された。父さんの過去に何があったのかは聞くなと母さんには釘を刺された……今なら何となく想像がつく。




「特にこのポタージュなんだか昔飲んだ様な気がします……モグモグ」


「それはジャガイモのポタージュな。別に珍しい味でもねぇーよ」



 今日の特訓で慣れない教える側になったことで精神的にも疲れた俺は夕食を手抜きにした。とはいえ品数が少なすぎるのもどうかと思ったので作りおきしていたジャガイモのポタージュを出してみた。


 ちなみに今日の献立はミルフィーユカツレツ、ポテトサラダ、デザートに林檎のコンポート。ミルフィーユカツレツは薄い豚肉を重ねて真ん中に薄くスライスしたチーズを挟んである。これが熱々だと旨いんだ。母さんの母さん……俺の婆ちゃんの得意料理のひとつだってさ。俺が5歳の時に死んじまったけど……儚そうに見えて芯の一本通った女性だった。何年経とうとも婆ちゃんから受け継がれた味は未だに俺は覚えていた。懐かしんでガキの頃はよく作ってマーサを油で火傷しないかハラハラさせ、作りすぎて辟易もさせたな。



 このポタージュの味も俺の母親が教えてくれた作りかだ……勿論前世のな。


 凝ったものは作れないとか言ってた母さんだが、俺や父さんのリクエストにはよく答えてくれた……手作りのバースデーケーキとか店で買って貰うよりも子供ながら嬉しかった。確かに凝ったデザインじゃなく、何の変哲もないイチゴケーキだったけど、俺も父さんも喜んでた……父さんは目を輝かせていてちょっと引いたけど。


 その他にも母さんが料理をしているとキッチンに入り浸っては味見と称して摘まみ食いをさせてもらったなぁ……そうやって料理をしているところを見ていたお陰か料理は得意な方だ。凝ったものは出来ないが。


 他にも倹約の癖を身に付けた。母さんの若い頃は結構苦労してたらしい。母子家庭は厳しいよな。そんな母さんを真似してか小さい頃から守銭奴になる道を歩いてきていたのだった。ま、だから城の暮らしは性に合わないんだよなぁ……



 あの時が俺のなかで一番の幸せな時間だった……。もう戻らない幸せな……時間



「モグモグ……ニーアさんは……前世の記憶があるんですよね? 何歳なんですか?精神的なのは


「食うか喋るかのどっちかにしろよ」


「…………モグモグ」



 どうやら食べることに集中することにしたようだ。正直だな……



「モグモグモグモグ……モグモグモグモグ…」


「………」←(食べ終わり食後の紅茶を飲んでいる)


「ヒョイパク……モグモグモグモグモグモグ」


「……(よく食うな……いっそ清々しい)」



 俺がこの世界で見てきた女性は皆食事は残すクセに食後のデザートはペロッと食べる。もしくは誰も見ていない所でしか食べない様な奴ばかりだった。


 正直理解できない。作ってくれた人に失礼だし、人並みにお腹一杯位には食べないと招いた方の人にも失礼に思えるのだが……ま、女の意地って奴なんだろう。


 俺からしたら見栄を張って「私、少食なの~もうこれしか食べれな~い」とかぶりっ子している女は苛々する。本当に少食なのなら仕方ないが……お前もっと食えるだろって思える奴がそうしてると滑稽に見える。


 対してナナは気にせず食べる様だ。単に俺が異性として見られてない可能性もあるのだが……ん?



「(それじゃまるで……俺がこいつに異性として見られたい何て思ってるみたいだ……)」



 んなバカな。氷に例えられた俺が?ナイナイ。



 あ、そうだ。懐かしかったんだ。マーサ以外でこんなにも素に近い態度で接しられるのが……懐かしいんだ……俺は。




「モグモグモグモグ……ん。ご馳走さまでした。」


「お粗末様」


「あ~…お腹一杯で若干吐き…イエイエ何でもないです。」


「そりゃあれだけ食べれば吐きたくもなるわな」




 何だか雲行きが怪しくなり始めてないか?これはどこぞの乙女ゲーか?……母さんの友達が騒いでいた乙女ゲーって奴のストーリーってのはこんな感じでキャラを攻略していくんじゃないか!?


 まさか、こいつに限って…。


「クンクン……は、この匂いは……苺の匂い! ニーアさん、もしかして苺があるのでは?」



 ………無いな。無い。断言する、無い。



 こいつは色恋様よりも食い気を取る。それに乙女ゲーの主人公なら逆ハーなるものを目指すのだろ?


 こいつにそんな頭脳が有るか?無い。


 それにこいつは………何だろ。よくわからないが……確信にも近いなにかが……「こいつはバカだから」とか、「惚れたら一筋」とか何か頭に浮かんでくる。


 ………特訓で教えるのに疲れたのだろうか?







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