番外編 ~クリスマスの過ごし方・ニーアとナナ友達以上?恋人未満~前編・イブの過ごし方
注意!
この話は番外編です。ちょっと本編よりも未来の話です。そしてまだ本編に出ていないキャラが登場してますご了承ください。
登場人物はニーアとナナ、それと件の新キャラしか出てきません。
この世界にトリップしてから初めてのクリスマスなのだ!
あのバレンタインの悲劇は繰り返さない……ハズだった。
「あの、ニーアさん?」
「いいかナナ、お前は王妃にお菓子を横流しするの禁止な?」
何故かいきなりニーアさんからのストップがかかったのだった。クリスマスにはケーキは無理だけどジンジャークッキーマン(あの某緑のモンスターが活躍する映画にも出演した人形クッキーだ)を差し入れしようかと思っていたのだが……何かあったのだろう。
「り、理由をお聞きしても?」
「…何で敬語?ま、いいか。そうだな、昨日王妃のお茶会が開かれたんだが……」
何でも、お茶会で出されたクッキーの中に微量ながら毒が入っていて毒味やくの下女さんが盲目になってしまったらしい……役目とはいえ何とも後味の悪い結末ですね……あ、いや、まだ犯人も捕まってないので結末では無いですけど。
で、これを王妃様に出す前だからよかった(被害が出ている時点で良かったとも言えないけどかが、一歩間違えれば王妃様や集まったご令嬢やご婦人方に被害が出るところだったのだ。
「だから疑われるので止めろと?」
「話が早くて助かる……女勇者(笑)は「私は毒なんて入れませんからご心配なく!」とか言ってローアの助言を突っぱねたからな。お前が物分かりよくて良かったよ」
「お!ニーアさんに誉めてもらえた♪」
「あぁ、今回は誉めてる」
……いつになく素直なニーアさんに不安が募る。いつもは慇懃な態度で私を誉めるようなことはない……まさか偽者……
「頬骨を折られたいか?」
「滅相も御座いません!」
私の頬骨辺りをガッチリ掴んで言われたらそう答えるしかないでしょ!?
心配した私が……バカじゃないもん!
ふん! そんなニーアさんにはブッシュドノエルはあげませんよーだ。
この日のために今しがた作っていたブッシュドノエルを持ってキッチンを出ていこうとすると……
「待った……俺は食べないとは言ってない」
「あ、気にしないでください、私が責任持って全部食べますから……折角……二人で食べようかなぁ…って。王妃様に賄賂を渡してニーアさんの仕事を少なくして貰う手筈だったのに……このジンジャークッキーも私が一人で食べますよぅぅ」
いいんですよ別に。日頃忙しくて寝不足気味なニーアさんが心配で王妃様に相談したら「お菓子で手を打つわ♪」って言われたから「じゃぁ近いうちに渡しますね♪」って返したのは浅はかだったんですよええ。
「ん?ちょっと待て……いつ渡すか言ってなかったのか?」
「え?あぁ、はい。近いうちに…と。」
「……なら……見当がつ付くな…」
何が見当が付くのかよく分からないけれど……何だか何かを企んでいるような顔をしているニーアさんは敵に回したくないと心底思う私であった。
「あ、それ後で食うからな。冷蔵庫にでもしまってろ。ほれ、行くぞ!」
私の手を引いて……あ、て、照れますよ~そんなダ・イ・タ・ン♡……
「(-_-#)」
「はいっ!調子に乗りました!Σ(ノд<)」
一気に機嫌を悪くしたニーアさんに引きずられて私はブッシュドノエルを冷蔵庫に入れて何処かに連れて行かけることになりました。
私はどうなるのでしょう?
********
王妃のお茶会で毒が仕込まれていた。仕込まれていたお菓子は前に見覚えのある物だった……確かあれは……ナナが前に差し入れしたクッキーに形がよく似ていた。あのクッキー型は俺と一緒に買いにいった物だ……それならあの店に行って確かめよう。ナナの話ではここ最近は護身術の取得に力を入れていたので王妃には差し入れをしていないとか……俺にはクッキーとかマフィンを差し入れに来てたのにな……ま、いいか。
「あのクッキー型は手作りなのでそんなに数は無いって店主さんは言ってましたよ。」
「あぁ、あの店は俺も馴染みだ……家財道具の殆どはあの店から買ったものだ」
「ほへぇぇ……スゴいですね」
あの店の店主は俺と同じである程度似たような世界からの転生者だ。話が合うし、子供な頃には世話になった。不思議なことに何処かで会ったことがあるような感覚さえ感じるのだ。
そしてたどり着いた店の名は“狐火のランプ”。不思議な炎を使ったランプを主に売っている雑貨屋だ。その割りに品揃えは王都一だと思う。取り扱ってないと言われたのは毒薬、劇物、爆発物、法に触れるもの位だ。他の物は大抵揃う。
「いらっしゃーい……どんなご用で?」
「ニーア、あんたの所の顧客を調べさせてくれ」
「ニーア……さん?」
そう、この店主の名前は“ニーア”そして俺の名前も“ニーア”。それもその筈、俺はこいつの名前を貰ったのだ。こいつは俺の消えた今生の両親に協力していた。両親にとっては命の恩人……俺にとっても血の繋がらない親と言ってもいい。
城では教えられなかった事を色々と教えて貰った。例えば闘い方、生き残る術もこのニーアが居なければ死んでいたことだろう。暗殺から何度助けて貰ったことだろう。防犯の魔術もこいつに伝授して貰ったものだ。ま、俺も独自にアレンジしてるけど。
「穏やかじゃないね……何かな? できる範囲は…協力するよ。それにしても、今日はクリスマスイブだろうに……デートかな?」
「で、デート?私とニーアさんが……はぅぅぅぅ(照)」
おい、何でデートになるんだよ。俺は調べに来たって言っただろ!
「まぁ、そう睨むな……で?顧客を調べたいなんて……どうしたんだい?」
俺はことの顛末をニーアに聞かせた。するとニーアは長めの前髪を弄りながら答えてくれた。
「あのクッキー型……あぁ、あれは確か……そこのお嬢ちゃんともう一人……その娘もお嬢ちゃん位のお嬢ちゃんだったよ……えっと……ん~~あ?」
何か思い付いたのかと思ったらカウンターの引き出しから帳簿を取り出した……最初っから出して見ろよ……
「いやぁ……この頃特に物忘れが酷くなってきてねぇ……もう歳だからね……そろそろおっ死ぬ頃さ……」
「縁起でもない」
見た目二十歳前後の容姿のために本来の年齢は解らないがマーサが若い頃からこの姿だったらしい……こいつの年齢はもしかすると骨董並みに古いのかもしれない。
白く体を隠すほど長い髪に前髪に隠された白い瞳は一見白目に見えるからと隠しているらしい……
そして力は強いわ、弓の腕前も勝てる気がしない。
「ん~~~……あぁ、あった。王宮に使える侍女殿と軽そうな男性と三人で来た黒目黒髪のお嬢ちゃんだね。」
「決まったな……」
「え?……でも、彼女がそんな事を…ないと思うけど?」
「厳密にはアイツらじゃないな……でもこれで目星は絞れた」
後は奴等の証拠を掴むだけだ。掴むだけなら後は簡単。人の口には戸は立てられないからな。
「また危ない事に首を突っ込むつもりだね……これでも持って行きな…」
「?なんだこれ?」
「御札?」
「持っているだけで効果があるよ……リバースドールさ。」
また来てねぇ~♪と手を振る店主ニーアを背にして俺たちは城に戻った。
「(気を付けろって事か……しかも二枚…)」
俺はその御札をナナに渡しもう一枚は自分の懐にしまった。さて、どこから奴等の巣を崩そうか……
その日はナナの作ったブッシュドノエルをマーサに冷やかされながらナナと二人で食べることになった。何でそんなに赤くなってるんだよ……こっちまで恥ずかしくなるだろ。ったく……
まぁ、……ケーキとジンジャークッキーは美味かったけどな。
~後編に続く~
はい、ナナさんはニーアさんの体調が心配で王妃様に休みを貰うために賄賂を渡すはずでした。そして起きた毒入り騒動……これは誰の仕業でしょう。
あのキャラにピンと来た方もいるかもしれませんね?
後編はクリスマス当日の話をお送りしたいと思います。そして犯人を割り出します。