モラル・ラック
裁判所 報告書
被告 ルティナ・ド・ヴェレル 二十歳 ヴェレル家息女
被害者 ドルス・オルシュタン 二十四歳 オルシュタン家嫡男
一、死亡の状況について
三月十一日、午後四時頃。オルシュタン家別邸、一階応接室。
被害者の死亡を確認したのは同家侍女および従僕。
死亡時、室内には被告一名がいた。
二、遺体について
外傷は頭部左側に一箇所。
その他、死因に結びつく外傷は確認されていない。
衣服に乱れはない。
駆け付けた理髪外科医が検め、頭部への打撃によるものと述べた。
三、室内について
ソファー、書棚、ローテーブル。
ローテーブル上に紙束、封筒、ペーパーナイフ一本。
窓は閉じられていた。
応接室の物品に持ち去られたものはない。
四、被告の供述
被害者と二人でいた。
被害者が急に倒れた。
声をかけたが返事がなかった。
殺していない。
なお、被告は面会の目的および事件直前の会話について、回答を拒んだ。
五、証言
侍女。被告の悲鳴を聞いて駆けつけた。被告が被害者のそばに膝をついていた。
従僕。同上。
なお被害者には他に意中の女性があった。このことは広く知られていた。
複数の証人。被告が被害者およびその意中の女性から侮辱を受けていた事実を認めた。
六、認定
被害者は頭部への打撃により死亡した。
室内には被告以外の者がいなかった。
被告には被害者を害する理由があった。
また、被告は事件直前の会話について供述を拒んでおり、被害者との間に重大な争いがあった可能性が高い。
よって被害者を害したのは被告である。
七、判決
ルティナ・ド・ヴェレルを絞首に処する。
執行は上級審の承認を経たのち、速やかに行うものとする。
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報告書を読んだバーナードはすぐさま地下牢へ向かった。
王都直属の上位騎士という肩書と、その証である銀の徽章。それらを最大限に利用すれば、本来は厳重なはずの死刑囚への面会もあっさりと通すことができた。
奥の牢に彼女はいた。
数日後、死刑となる予定の幼馴染、ルティナが。
ルティナは冷たい石壁にもたれて座っていた。足音に顔を上げ、鉄格子の向こうの相手を確かめると、少しだけ目を見開いた。
「バーナード……」
「ルティナ……!」
バーナードは格子の前に立った。
隙間から冷たい空気が漏れ出てくる。その中に佇む彼女は、最後に会った時よりもずっと小さく見えた。
「っ……こんなのあり得ない……!」
バーナードは手にしていた紙束を思わず強く握りしめた。
格子をガツンと素手で叩き、重い金属音が地下牢に響き渡った。
「君が人を殺すわけがない! 絶対にこんなのはおかしい!」
声を荒らげるバーナードに対し、ルティナは静かに身を起こした。
「っ……」
「なぁ、ルティナ。殺してないんだろう」
その問いに、ルティナはすぐには答えなかった。
しばらく格子の向こうで俯いてから、小さく息を吸って呟いた。
「……私は、殺してない」
その言葉を聞いてバーナードは頷いた。
「調書を読んだ。ひどいものだ。まともに調べもせず、ルティナが部屋にいたというだけで結論を出していて……」
吐き捨てるように言うバーナードに対し、ルティナはただ静かに目を伏せ、何も言わなかった。
「取り調べだって同じだ。動機があるからやったに違いない、と最初から決めてかかっている」
バーナードはギリッと奥歯を噛み締めた。
「あんな杜撰な報告書で君の命を奪わせるわけにはいかない。俺が絶対に冤罪だと証明して見せる!」
バーナードの言葉に、ルティナは力なく首を振った。
「もう判決は出たわ……。私……」
「刑の執行まではまだ数日の猶予がある。上級審で俺がひっくり返せない証拠を叩きつけてやる。上位騎士である俺が申し立てれば、いくら腐った上級審だろうと無視はできないはずだ!」
ただ感情で喚いているわけではない。上位騎士としての権力と地位、そのすべてを懸けて彼女を救うつもりだった。
「昔からそうだ。俺が剣の稽古で無茶をして怪我をするたび、君は自分のことのように痛がって手当てをしてくれた。そんな優しい手で人を殺すなんて絶対にあり得ない」
「バーナード……」
「ルティナは殺していないって俺が必ず証明する。だから絶対に諦めるな!」
熱を帯びたバーナードの眼差しを正面から受け止め、ルティナはほんの少しだけ目元を和らげた。
「……ありがとう、バーナード」
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地下牢を後にしたバーナードは、その足で真っ直ぐに事件現場へと向かった。
今は華やかな社交シーズンであり、地方に領地を持つ貴族たちもこぞって王都へ集まっている。ルティナや被害者であるドルスも同様だった。
邸宅を警備していた私兵や家令は、突然の訪問者に難色を示した。
本来、殺人事件の捜査権限は裁判所の役人たちにあり、一介の騎士がでしゃばるような管轄ではないからだ。
しかし、バーナードは王都直属の上位騎士である。
王の剣として都の治安維持を担う彼らには、非常時において独自の判断で動ける強い権限と、ある程度の自由な裁量が与えられていた。
「王都で起きた貴族の不審死だ。騎士団としても独自に状況を把握しておく必要がある」
バーナードがもっともらしい大義名分を口にし、上位騎士の証である銀の徽章をちらつかせると、私兵や家令はそれ以上口出しができなくなった。
実際にはただの職権濫用に近かったが、ルティナの命を救うためなら知ったことではない。
バーナードは半ば強引に邸宅の中へと押し通った。
家令によって案内されたのは、邸宅の一階にある応接室だった。
部屋の中はドルスが死んだ時の状態のまま手付かずにされている。
刑が執行されるまでは念のため部屋をそのまま閉鎖していたとのこと。
一歩足を踏み入れ、バーナードは鋭い視線で室内を観察した。
ごく普通の、しかし質の良い調度品で揃えられた応接室だ。
壁際には本が整然としまわれた棚があり、部屋の中央にはソファーとローテーブルが置かれている。
テーブルの上にあるのは、紙束や封筒、封を切るためのペーパーナイフ。
紙束は領地経営に関する書類で、封筒にも事件につながるような内容はなかった。
バーナードは部屋の入り口で怯えたように立ち尽くしている侍女を振り返った。
事件直後、第一発見者となった女性とのこと。
「念のため、もう一度事件当時の状況を聞かせてください」
威圧しないよう努めながら尋ねると、侍女は身を震わせながらぽつぽつと語り始めた。
「……あの日、ルティナ様が当家を訪問されました。ドルス様はルティナ様を招き入れ、お二人でこの応接室に入られて、扉を閉めました」
「……」
「案内後、私はいつものように掃除を再開しました。すると、しばらくして中からルティナ様の悲鳴が聞こえたんです。驚いて従僕と一緒に駆けつけると……ソファーの前でドルス様が倒れていて、ルティナ様がその傍らに跪いておられました」
侍女の証言は、裁判所の報告書と寸分違わない。
そして、ルティナが訪問してから悲鳴が上がるまでの間、この応接室を出入りした者は誰もいなかったと侍女は断言した。
「遺体を検分した理髪外科医の話では、頭部に打撲のような傷があったそうですね。そこから死因は頭を強く打ったことによるものだと断定されている」
「はい……。部屋にはルティナ様しかいらっしゃらなかったので、ルティナ様がドルス様を殴り殺したのだと……」
バーナードは静かに息を吐いた。
確かに状況だけを見れば、ルティナが犯人だと決めつけられてもおかしくはない。密室状態の部屋で死体と一緒にいたのだから。
バーナードは再び侍女に尋ねた。
「一つ聞きたい。この部屋で不足しているものはありませんか? 例えば、盗まれたり紛失しているようなものは……」
「いえ……何も失われてはおりません」
侍女は首を横に振った。
「棚の本も全て揃っておりますし、ローテーブルの上のものも……一部はドルス様がご自身で持ち込まれたものですが、無くなったものは何一つありません」
バーナードは壁際の棚に収まった本にざっと視線を走らせた。どれも装丁がしっかりとした分厚い本ばかりだ。人の頭に振り下ろせば十分な凶器になり得る重さだが、背表紙に不審な汚れはなく、どれも
綺麗だった。
バーナードは少し考え込み、ハッとし口を開く。
「……この部屋に血痕は?」
「血痕、ですか?」
予想外の問いだったのか、侍女は困惑したように目を瞬かせた。
「頭部の打撲で死に至ったというのなら血が流れていたはずでは」
「あ……いえ、私が悲鳴を聞いて部屋に入った時、血は見られませんでした」
「え……?」
そこまで言って、侍女の顔にサッと怒りの色が浮かんだ。主人を殺された悲しみからか、彼女はルティナへの恨みをあらわにするように声を荒らげた。
「きっとあの女が……血痕を綺麗に拭き取ってから悲鳴を上げたんです! なんて恐ろしい……っ!」
憎々しげに吐き捨てる侍女の言葉を聞きながら、バーナードは内心で不自然だと断じた。
報告書によれば、当時ルティナの所持品の中に凶器になり得る物はなかった。当然、彼女が持っていたハンカチにも血痕などは付着していなかった。
室内にある物で人の頭を殴れそうなのは、書棚に並ぶ分厚い本くらいだ。しかし、どの本にも不審な汚れは付着していなかった。
そもそも、頭を強く殴って出た血を、小さなハンカチ程度で綺麗に拭き取ることなど不可能だ。本気で血の痕跡を消そうとするなら水が必要になるが、この応接室に水はない。
事件の前後でルティナが応接室を出たという証言もない。
バーナードには、この状況でルティナによる殴打だけを断定する方がよほど無理のある話に思えた。
だとすれば、考えられるのは……
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バーナードは応接室を出て、邸宅内の他の場所にも目を向けることにした。
廊下を歩くと華やかに飾られた生花が目に留まった。
ふと足を止めて観察すると、美しく生けられた花々の中には、微量ながら毒性を持つとされる植物もいくつか混じっていた。
「この屋敷で、薬などを置いている場所はありませんか?」
「……承知いたしました。こちらです」
家令に案内されて向かった先は、邸宅の一角にある医務室のような部屋だった。
部屋の奥には立派な薬棚が備え付けられている。
「この部屋の管理はどうなっていますか?」
「特に制限は設けておりません。鍵もかかっておりませんので、屋敷の者であれば誰でも入ることができます」
「誰でも……では仮に薬が盗まれたとしても気づかないと?」
「恥ずかしながら……。使用人たちは薬の知識がないため、そもそも不気味に思ってこの部屋には近寄りません」
バーナードは薬棚を見つめながら目を細めた。
管理体制は甘い。これなら屋敷の者であれば誰でも毒になるような薬を持ち出すことが可能だ。
「ルティナが訪問した際、応接室で紅茶などは?」
「いえ。飲み物はお出ししておりません」
「なら、ドルス殿がその前に口にしたものは?」
「ルティナ様が見える直前まで、自室で昼食をとっておられました」
その言葉に、バーナードの脳内で新たな可能性が急速に形作られていく。
応接室で毒を盛られた可能性はない。
飲み物すら出されておらず、ルティナがドルスに何かを口にさせた形跡もなかった。
もしそれよりも前に遅効性の毒が混入されていたとしたらどうだ。
食事を終えた後、応接室でルティナと話している最中に毒が回り、突然倒れた。
その可能性まで否定することはできない。
だが、仮にルティナが屋敷の使用人と通じ、あらかじめ毒を仕込ませていたのだとすれば、あまりにも間が悪すぎる。
なぜ、自分がドルスと二人きりになる時間に合わせて発症させる必要があるのか。
発症させるなら翌日でも、数日後でも、大勢が同席する夕食の席でもよかったはずだ。
計画的に毒を盛るだけの用意をしておきながら、自分が最も疑われる状況で死なせるなど、あまりに不自然だった。
それに、ルティナが屋敷の者と通じていた形跡も、毒物を用意した証拠もない。
嘔吐や痙攣といった異変があったという記録もなく、何の毒を、いつ、どのように摂取したのかすら分かっていなかった。
毒殺の可能性自体は完全には否定できない。
だが少なくとも、それをルティナの犯行だと決めつける根拠はどこにもなかった。
考えを巡らせていると、不意にエントランスの方から甲高い女性の声が響いてきた。
「ドルスが死んだってどういう事よ! 嘘でしょ!? ねぇ、ドルスに会わせて!」
ヒステリックな金切り声に、邸宅の侍女たちが慌ててなだめようとする気配が伝わってくる。
「ジュヌ様、どうかお静かに……! ドルス様はここには……ご遺体はすでに別の場所へ安置されております」
「別の場所ってどこよ! 教えなさいよ!」
「そ、それは……当主様より固く口止めされておりまして、お教えできません」
「なんでよ! あたしはドルスの運命の相手なのよ!? 顔を見る権利くらいあるじゃない!」
眉をひそめたバーナードは、傍らに立つ家令に視線を向けた。
「彼女は?」
「……っ」
家令はひどく気まずそうに目を泳がせた後、小さな声で答えた。
「ドルス様と恋仲の女性……ジュヌ様です」
「は……?」
つまりは浮気相手だ。
ルティナという正当な婚約者がいると知りながら恥びる様子もなく逢瀬を重ねていた女が、白昼堂々被害者の別邸に乗り込んできたというのか。
まるで自分がこの家の女主人であるかのような非常識な振る舞いに、バーナードは呆れ果てた。
一方のジュヌは、侍女たちの制止を振り切り、エントランスで地団駄を踏んで喚き散らしていた。
「なんでドルスが殺されないといけないの!? あんな女……ルティナとかいう地味な女の方が死ねばよかったのに!」
周囲の目も憚らず、ジュヌはさらに甲高い声で喚き散らす。
「夜会で会った時だって、私が何を言っても下を向いてオドオドしてるだけだったくせに! ドルスにまとわりつく陰気で面白みのない女のくせに! ドルスが愛していたのは私なのに!」
その言葉を聞いて、バーナードの脳裏に報告書の一文がよぎった。
『複数の証人。被告が被害者およびその意中の女性から侮辱を受けていた事実を認めた』
社交の場で、ルティナはドルスだけでなく、この愛人からも一方的に嘲笑され、謂れのない暴言を浴びせられ続けていたのだ。
大切な幼馴染を徹底的に見下すその言葉に、バーナードの中でどす黒い怒りがふつふつと湧き上がる。
今すぐ腰の剣の柄に手をかけてしまいそうな衝動を、上位騎士としての理性を総動員してなんとか抑え込み、彼は静かにジュヌへと近づいた。
いかに非常識な振る舞いであっても、被害者と深く関わっていた関係者の一人には違いない。事件前の被害者の様子を聞き出そうと、バーナードが彼女の前に立ち止まった、その時だった。
ジュヌは不意にハンカチを顔に押し当て、ひどく悲劇めいた様子で泣き崩れた。
「この前の遠乗りの時は、あんなに元気だったのに……っ」
唐突に出てきたその単語に、バーナードは訝しげに首を傾げた。
「……遠乗り?」
ハンカチを握りしめて涙ぐむジュヌに、バーナードは感情を殺した声で尋ねた。
見知らぬ騎士に声をかけられ、ジュヌは一瞬怪訝な顔をしたものの、悲劇のヒロインめいた態度ですぐに口を開いた。
「ええ、この前馬に乗ってドルスと遠出をしたのよ。王都郊外の森で、二人で並んで歩いて……」
話を聞けば、それはドルスが亡くなる二日前のことらしい。
使用人も最小限しか連れない、お忍びのような逢瀬。馬に乗って森を散策する、要はデートである。
「……その時、ドルス殿におかしな点はありませんでしたか? 体調不良など」
「はぁ? あるわけないでしょ。ドルスはとても丈夫だし、私をしっかりエスコートしてくれたわ」
すると、ジュヌは聞いてもいないことまでペラペラと語り出した。
「湖畔で食べた昼食は美味しかったわ。あ、でも、用意されていた葡萄酒はあまり美味しくなくてドルスと文句を言いあったっけ。ただ遠乗り自体はお天気も良くて最高だったの。帰り道は馬の機嫌が悪くて、ドルスが馬から落ちた時はちょっとびっくりしたけど……ずっと楽しかったわ」
すると、ジュヌの声色が変わった。
「なのに殺されるなんて……。せっかく上手くいきそうだったのに」
「……上手くいきそうとは、何の話ですか」
思わず聞き返したバーナードに対し、ジュヌは涙を拭うのも忘れて言い放った。
「決まってるじゃない。私がドルスの正妻になることよ!」
「正妻……?」
突拍子もない言葉に、バーナードは眉をひそめた。しかしジュヌはそんな彼の反応を気にかける様子もなく語り続ける。
「あの遠乗りの時、ドルスは私に言ってくれたの。『僕の隣にふさわしいのは君だけだ』って。だから私、もうすぐオルシュタン家の正式な奥様になれるはずだったのよ!」
得意げな顔でとんでもないことを言い出すジュヌに、バーナードは呆れを通り越して絶句した。
「……そうだわ、きっとあの女、事件の日に婚約破棄を告げられて逆上してドルスを殺したのよ! 自分の立場もわかってない、本当に最低な女!」
「……そうですか。お辛いところ、失礼しました」
これ以上この女と関わっても事件の手がかりは得られないと判断し、バーナードは話を打ち切って背を向けた。
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屋敷を後にしたバーナードは、重い足取りで王都の石畳を歩きながら、改めて今回の事件について思考を巡らせた。
ルティナ。
バーナードの幼馴染であり、同じ貴族として共に育った女性。
ドルス・オルシュタン。
彼女の婚約者であり、今回の事件の被害者。
二人の関係が冷え切っているという噂は、王都の騎士団に所属するバーナードの耳にも入っていた。
ドルスは浮気を繰り返している、と。
華やかな社交の場において、ルティナは常に一人きりで壁際に佇んでいた。その一方で、婚約者であるドルスは妻となる彼女を放置し、別の女性……ジュヌを連れ歩いていた。そのあまりにも不誠実な振る舞いのせいで、二人は社交界において悪い意味でひどく目立っていた。
だが、どれほど惨めな思いをさせられようと、ルティナがドルスの愚行を強く咎めることはできなかった。
この婚約は、政略的な側面が非常に強いものだったからだ。
ルティナの生家であるヴェレル家は、歴史と格式を持つ由緒正しい名家だが、現在は没落の一途を辿っている。そこへ、歴史は浅いが裕福なオルシュタン家が財政支援を対価として持ち掛けた縁談。
明確な力の差があり、ルティナ側の立場はあまりにも弱かった。
バーナードはそのいびつな関係と、ルティナがどれほど肩身の狭い思いをしているかを把握していた。しかし家同士の契約である以上、ただの幼馴染であるバーナードが介入できる隙はなく、これまで歯痒さを抱えながらも何もできずにいたのだ。
そして起きた、今回の事件。
周囲の人間からすれば、婚約者の浮気と思い通りにならない不条理な環境に耐えかねた末、ついにルティナが殺人という凶行に走ったのだと思われてもおかしくはない。
動機としては十分すぎるほど揃ってしまっている。
あと数日もすれば、ルティナの死刑を確定させる上級審が行われてしまう。
上級審とは名ばかりで、現在のそれは完全に形骸化している。下級審からの状況報告が淡々と読み上げられ、ただただ死刑執行の判があっさりと押されるだけの無意味な場だ。
だからこそ、証明しなければならない。
ルティナは、絶対にそんなことをする人間ではない、と。
バーナードの知るルティナは、昔からとても穏やかな人だった。
理不尽な状況に置かれても決して微笑みを絶やさず、誰に対しても優しい。聡明で優秀でありながら、自分のためではなく、常に誰かのために動くことができる芯の強い女性だ。
どれほど憎い相手だろうと、彼女が自らの手で誰かを殺めるような真似など、決してするはずがない。
状況証拠も、杜撰な検分も、周囲の思い込みも、全て上級審判でひっくり返してみせる。
歩みを進めるバーナードの瞳には、一切の揺らぎのない強い意志が宿っていた。
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バーナードは遺体を検分したという理髪外科医の元にいた。
現在、ドルスの遺体は遺族、特に当主である彼の父親の強い要望により、とある礼拝堂に安置されているとのこと。貴族の遺体を再検分するには、上級審または王族による正式な許可が必要だった。
そのため、事件直後に現場へ駆けつけた理髪外科医の証言が、医学的な見地からの唯一の頼りだった。
王都の一角にあるこぢんまりとした診療所に足を踏み入れると、初老の理髪外科医が一人で道具の手入れをしていた。
バーナードが丁寧に身分を明かし、事件当時のことについて尋ねると、男は少し困惑したように眉を下げた。
「私が検分に出向いたのは、オルシュタン家と何か特別な関わりがあるからというわけではないのです。ただ、あの邸宅から一番近くに診療所を構えていたのが私だったというだけの理由で急遽呼ばれましてな」
そう前置きをしてから、理髪外科医は当時の記憶を探るように口を開いた。
「亡くなったドルス様の頭部には、確かに大きな打撲のような傷がありました。ですが、それを死因だと断定したのはいささか早計でした」
「というと?」
「現場に鮮血がなく凶器も特定されていない以上……あの傷がいつ、どのようにできたものか判断できなかったからです」
理髪外科医は気まずそうに視線を彷徨わせ、頭を掻いた。
「実を申しますと……そこまでしっかりと遺体を検分できたわけではないのです」
「どういうことですか?」
「頭部の傷を発見し、それを遺族の方々に報告した直後のことです。ドルス様の父親である当主様が、『あの女がやりおったのだ!』と酷く激高されましてね。そのままあのご令嬢を犯人だと決めつけ、あれよあれよという間に話が進んでしまったのです。とても私のような平民の医者が遺体を隅々まで調べさせてくれなどと言える空気ではありませんでした」
その言葉を聞いた瞬間、バーナードは頭痛を堪えるようにこめかみを押さえ呟いた。
「……そんな杜撰な捜査でルティナを死刑にしようとしているのか……」
この国の司法が腐りきっているのは承知の上だが、それでもバーナードの中には腸が煮えくり返るような怒りが湧き上がってきた。
いくら遺族が取り乱していたとはいえ、人の命が懸かった裁判の証拠がろくに調べもしていない不完全な検分に基づくものだなど、あまりにも狂っている。
だが、裁判所の役人たちも、おそらく面倒なのだ。
半狂乱になってルティナを逆恨みする高位貴族の相手などしたくない。
だから多少証拠が不十分であろうと、さっさとルティナを死刑にして幕引きを図ろうとする。
ルティナの実家であるヴェレル家は元々没落しかけている。娘が一人死刑になったところで、国としても大して痛くはない。
ヴェレル家側もひどく傷心し、一応の抵抗は見せているものの、まるで話にならないと聞く。
結局のところ、権力のあるオルシュタン家の言い分を通した方が、すべてにおいて楽なのだ。
バーナードは静かに息を吐いた。
「……内科は専門外でしょうが、毒殺の可能性はどうですか?」
「顔色に異常は見られませんでしたし、何より吐瀉物がありませんでした。毒殺の線も薄いかと……」
理髪外科医の言葉を受け、バーナードは改めて思考を整理した。
毒殺の可能性。
食事に遅効性の毒を混入させること自体は不可能ではない。
だが、ルティナが屋敷の者と通じて計画したのなら、自分がドルスと二人きりになる時間帯に発症するような危険な方法を選ぶ理由がない。
共犯者の存在も、毒物を用意した形跡も確認されていなかった。
理髪外科医の話でも、毒殺を示す明確な兆候は見つかっていない。
可能性だけなら挙げられる。
しかし、それをルティナの犯行だとする根拠にはならなかった。
ルティナによる殴打の可能性。
血痕も、使われた形跡のある凶器も、争った跡もない。
頭部の傷だけを根拠に、ルティナがその場で殴ったと断定するには無理がある。
彼女が婚約者から侮辱を受けていたという事実も、動機になり得るというだけで、犯行を証明するものではない。
第三者による犯行の可能性。
事件当時、応接室は事実上の密室状態であり、ルティナとドルス以外に出入りした者はいない。第三者がその場でドルスを襲ったとは考えられない。
しかし、事件より前に何かを仕込んでいた可能性までは否定できない。
何者かが昼食へ毒を混入し、ルティナと二人きりの時に発症するよう仕向けたのなら、彼女を犯人に見せかけることもできる。
とはいえ、現時点では毒殺を示す明確な兆候も、毒を盛った者も、ルティナを陥れようとした者の存在も確認されていない。
可能性としては残るが、それを裏付ける証拠は何一つない。
考えようと思えば、いくらでも複雑な筋書きは作れる。
だが、どれも証拠のない仮定を重ねなければ成立しない。
ならば、もっと単純に考えるべきではないか。
そもそもドルスは、本当に誰かに殺されたのか。
「……ああ」
バーナードはゆっくりと目を見開いた。
――帰り道は馬の機嫌が悪くて、ドルスが馬から落ちた時はちょっとびっくりしたけど。
「……協力、感謝する」
短く礼を告げると、バーナードは診療所を後にした。
ルティナの無実を証明するため、彼が次に向かうべき場所は決まっていた。
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王宮の一室。重苦しい空気に包まれた審判の間で、上級審は淡々と進行していた。
部屋の中央に引き出されたルティナは、力なく顔を伏せている。
傍聴席の最前列には、被害者ドルスの父親をはじめとするオルシュタン家の遺族たちが陣取っていた。彼らの目は憎悪に満ちており、「一刻も早くこの女を死刑にしろ」と無言の圧力を放っていた。
対する審判員たちは、ただ面倒な仕事を終わらせるように書類に目を落としていた。
「――以上が下級審の認定である。被告、最後に何か言いたいことはあるか?」
形式だけの問いかけ。遺族たちの苛立った舌打ちが響く中、ルティナがゆっくりと首を横に振ろうとした、その時だった。
バンッ!!
重厚な両開きの扉が、勢いよく蹴り開けられた。
何事かと室内の全員が驚き振り返る中、銀の徽章を輝かせたバーナードが大股で踏み込んでくる。
「審判に異議を申し立てる! ルティナ・ド・ヴェレルは殺していない!」
凛とした声が部屋に響き渡る。ハッと顔を上げたルティナの目に光が宿った。
「無礼者! ここは神聖な上級審の場であるぞ!」
「証拠もないのに戯言を! さっさとその女を縛り首にしろ!」
激高する遺族たちを、バーナードは鋭い一瞥で黙らせた。
「証拠ならあります。まず、事件現場である応接室には一滴の血痕もありませんでした。凶器になり得る分厚い本もすべて揃っており、汚れ一つなかった。そして遺体には、頭部以外に死因へ結びつく外傷は確認されていなかった」
バーナードは言葉を区切り、廊下へ視線を向けた。
「入ってくれ」
促されて入室してきたのは、被害者ドルスの恋人であるジュヌだった。
なぜ息子の浮気相手がここに、とどよめく遺族たち。
「落馬の件について、証言を」
ジュヌは怯えつつも、必死に自己弁護をするように甲高い声を張り上げた。
「あ、あたしは悪くないわよ! 遠乗りの帰り道……馬が急に暴れ出して、ドルスが振り落とされたの。その時、木の幹に思いっきり頭をぶつけてて……」
「なっ……!?」
「で、でも、しばらくしたら血は止まった! そこ以外に怪我はなかったし、それにドルス自身が『何ともない、誰にも言うな』って笑ってたし、そのあとも普通にあたしをエスコートしてくれたのよ!」
さらにバーナードは、手にした書類を掲げた。
「同行していた馬丁からの証言も取れています。彼もドルス殿が転倒するのを目撃し、心配して駆け寄りましたが、『何でもない、邪魔をするな』と一蹴されたそうです。ご自身の落馬という醜態を隠したかったのでしょう。つまり、遺体にあった頭部の傷はこの落馬によるもの。殴打によるものではありません」
「ふ、ふざけるな! 落馬の怪我があったとして、その傷の上からあの女が殴りつけた可能性だってあるだろうが!」
「では、その凶器はどこにあるのです。頭部の傷が死亡当日に加えられた致命傷だというのなら、血痕も、争った形跡も、凶器として使われた痕跡も何一つ確認されていないのは不自然でしょう」
食い下がるドルスの父親を、バーナードは冷徹な事実で切り捨てた。
「侍女の証言どおり、ルティナは事件の前後で一度も部屋を出ていない。水もないあの部屋で、ハンカチ一つしか持たない彼女が、どうやって凶器を隠し、すべての痕跡を消したというのですか」
バーナードの指摘に一瞬遺族の言葉が詰まるが、父親がなりふり構わず声を張り上げた。
「な、ならば毒だ! あの女が隙を見て、無理やり毒を飲ませたに違いない!」
即座にバーナードは切り捨てた。
「毒殺を示す症状も、毒を摂取した経路も、ルティナとのつながりも確認されていません。可能性を口にするだけでは死刑の根拠にならない」
次々と可能性を潰され、遺族たちは青ざめた顔でわななく唇を噛み締めた。
「では一体誰が、どうやってドルスを殺したというのだ!」
半ば自暴自棄に叫ぶドルスの父親に対し、バーナードは静かに告げた。
「誰も殺していません」
「な、何……?」
呆然とする遺族と審判員たちに向け、バーナードは廊下へ視線を向けた。
「お願いします」
促されて進み出たのは、一人の初老の男だった。
その顔を見た審判員たちが慌てて姿勢を正した。
なぜならその男は、王宮に仕える高位の医師だったからだ。
室内が水を打ったように静まり返る中、医師は落ち着いた声で語り始めた。
「……王宮直属医師の立場で、医学的な見解を述べさせていただきます。頭部に強い衝撃を受けた際、直後は意識がはっきりしていても、数日経ってから脳内で出血が広がり、急激に死に至ることがあります。遅発性の頭蓋内出血と呼ばれるものです」
権威ある王宮医師の静かな説明は、理髪外科医の曖昧な見立てとは比べ物にならないほどの説得力を持っていた。
「被害者が急に倒れたというルティナ様の供述は、この症状と完全に一致します」
医師は一度言葉を区切り、再び口を開いた。
「もちろん、最終的な断定には改めて遺体を正式に検分する必要があります。しかし、先ほどの落馬の証言や現在の状況証拠からも、落馬を原因とする頭蓋内出血ならば経過を合理的に説明できます」
バーナードは審判員と遺族たちを真っ直ぐに見据えた。
「これでもまだ、彼女を死刑にするのが正しいと言えますか? もし彼女が殺したと言い張るのなら、これらすべての事実を覆すより強い証拠を提示していただきたい」
静寂が落ちた。
無理もない。落馬を証言したのは息子の浮気相手であり、少なくともルティナの味方ではない。
応接室に血痕がなかったと証言したのも、オルシュタン家に仕える侍女だ。そこに王宮医師の医学的見地まで加わった今、死刑を強行するには、あまりにも不確かな点が多すぎた。
これ以上騒ぎ立てて遺体の正式な検分を拒めば、何かを隠していると疑われかねない。
かといって検分を受け入れれば、自分たちの早計な決めつけが明るみに出る可能性がある。
遺族たちは青ざめ、誰も反論できなかった。
遺族たちの完全な沈黙を見て、審判員たちは顔を見合わせた。
バーナードの持ち込んだ証拠と証言は筋が通っている。このまま強引に死刑を確定させれば、後々王宮の医師の助言を無視して冤罪を生んだとして、国や自分たちの沽券に関わる大問題に発展しかねない。
「……本件については、提示された新事実の重大性に鑑み、死刑の執行を延期とする。後日、再審議を行うものとする」
木槌が鳴らされ、上級審の延期、つまりは実質的な判決の白紙化が宣言された。
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それから、数度の慎重な再調査が行われた。
高位の医師たちの再検分によると、頭蓋内には落馬時の衝撃によって生じたとみられる出血が確認され、頭部に死亡当日の新たな打撃痕はなかった、とのこと。
よって、バーナードが提示した見解がすべて正しいという結論が下され、正式にルティナの無罪が確定し、彼女は釈放された。
しかし、死刑判決という極限の恐怖と冷たい牢獄での生活は、彼女の心身を確実に蝕んでいた。
ひどく衰弱し、しばらくは療養が必要だと診断されたルティナは、王都を離れ、ひっそりと故郷の領地へと帰っていった。
オルシュタン家の件は、社交シーズンの終わりまで王都を騒がせた。
嫡男が浮気相手と忍び歩き、落馬した挙句にその怪我を隠して死んだ。無実の令嬢を犯人と決めつけ、それを覆す証言をしたのは嫡男の浮気相手だった。どこを取っても笑い話にしかならない。
当主や親族は領地へ引き上げ、社交の場に姿を見せなくなった。
ジュヌのその後も噂で流れてきた。
彼女は子を身ごもっていたらしい。
あの遠乗りの日に妊娠を告げたところ、ドルスは認知すると言った。腹の子を跡継ぎにすると約束してくれた――そう彼女はオルシュタン家へ訴えたが、取り合ってもらえなかったという。
証文もなければ証人もいないのだ。当然の帰結だった。
そもそもジュヌにはドルス以外にも男がいた、と誰かが言っていた。
バーナードはそれ以上追わなかった。
しばらく季節が巡ったある日のこと。
バーナードのもとに一通の手紙が届いた。
差出人はルティナだった。
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『親愛なるバーナードへ。
私の冤罪を晴らしてくれてありがとう。
あなたが動いてくれなければ、私は死んでいました。
どんな言葉を尽くしても、この胸の奥にある感謝を伝えるには足りません。
私を信じ、最後まで戦い抜いてくれて、本当にありがとう。
でも、私は一つ、あなたに黙っていたことがあります。
私がドルスを殺していないのは事実です。それは間違いありません。
けれどあの日、私は彼を殺そうとしていました。
あの日。
応接室に呼び出されたとき、彼はソファーに座った私にこう言ったのです。
「愛人が子を身ごもった。結婚後、その子を君の子として届け出ろ」
彼は言葉を続けました。
曰く、子は嫡子として届け出る。
堕ろさせるのも面倒だし、金もかかるから。
愛人は屋敷の外に置いておく。正妻にはしない。
ヴェレル家の方が歴史ある家柄だから。
そして、こう言いました。
「君は腹を痛めなくて済む。悪い話ではない」
彼は笑っていました。
「君は今まで何をされても受け入れていた。だから、今回も受け入れるだろう?」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが壊れました。
あの女の子供を、私が産んだことにして育てる。それを彼は私への配慮として口にした。
断られるとは思っていない口ぶりで。
私は今まで、彼に何も言わなかったわけではありません。
夜会で置き去りにされたときも、他の女性の話を聞かされたときも、それを控えるよう指摘したことはありました。
しかし、彼は少しも聞いていませんでした。最初から聞く気などなかったのでしょう。
私が耐えていたことは、彼には一切見えていませんでした。
私は、その先の人生を考えました。
家に入り、自分の子ではない子を育て、あの女は屋敷の外にいて、彼はそれを行き来する。
私が何か言えば実家への支援が止まる。
だから私は何も言えない。
そして彼はそれを、私が納得し受け入れたのだと勝手に思い込む。
何年も。彼が死ぬまで。
気がつくと、私はローテーブルの上のペーパーナイフを見ていました。
あの時、殺意は確実にありました。
あれを彼の目に刺そうと思いました。抵抗される前に素早く。それから、声を上げられる前に首を絞めよう。
頭の中で、その光景をはっきりと思い描いていました。
そして、ペーパーナイフを手に取ろうと立ち上がりかけました。
その瞬間でした。彼が低く唸って、ソファーから床へ倒れたのは。
私は悲鳴を上げました。侍女が駆けつけてきて、大騒ぎになって、あとは記録にある通りです。
もし、彼が倒れるのが、あと十数えるほど遅かったら。
私は、彼を確実に殺していました。
あなたは、私が人を殺すような人間ではないと言ってくれましたね。
でも、違いました。私は人を殺そうとした人間です。
あなたが信じてくれた私は、どこにもいません。
黙っていることもできました。あなたに何も言わず去ることもできました。そのほうがあなたのためだったと思います。
でも、抱えていられませんでした。
彼を殺そうとしたことだけでも重いのに、その上あなたの中の私であり続けることが、私にはできませんでした。
だから書いています。あなたのためではなく私が楽になるために。
ごめんなさい。
あなたが信じてくれたような人間でなくて。あなたが信じてくれたものを壊してしまって。
そして、今までありがとうございました。
私は隣国へ行きます。
無罪になっても、人々が私を見る目は戻りません。
家も支援を失い、私を守る余裕はありません。
何より、あなたの知る私の顔をして、この国で暮らし続けることができません。
もう二度と会うことはないでしょうが、どうか、お元気で。
ルティナ』




