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第3話 天上界1日目 その2 先生、俺はこのままじゃよい転生ができそうにありません

 モニア様は、どこからか取り出したかメガネをかけ、これもどこからか取り出した指示棒を振りながら話し始めた。

 服装もスーツ姿になっている。

 これは教師姿か?

 教師にふさわしい服装に、一瞬でチェンジしたようだ。ここはアニメ化された時にコマ送りでチェックしないといけないな。

 俺は魔法少女の変身シーンでは必ずそうしている。何をチェックしているのかは、同志諸君ならよくおわかりだろう。

 ちなみに俺が座っている椅子は教室によくあるやつだ。芸が細かい。


「まず、あなたは不幸にして亡くなりました。そしてあなたは、転生者に選ばれました」

 どうやら俺は選ばれたらしい。

「そして、転生するために、ここ天上界に召喚されました」

 ここは天上界って言うんだ。

「そして、目を覚ましたら全く訳のわからない姿の女神が目の前にいたら、普通は混乱するでしょ?」

 はあ、それはまあ。

「なので、まずは転生者にわかりやすい姿を取るの」


「でも、人によりイメージって違いますよね?」

「だからまず、頭の中に声を送り込むの。最初に聞いたでしょ」

「『さあ、目覚めるのです。新しい世界への扉が待っています』ってやつでしたね」

「それを聞くと、たいていの転生者は、それを語りかけている存在のイメージを、頭の中に思い浮かべるの」

 え、ということは。

「そ。あなたが思い浮かべたイメージを即座に読み取って、私がその姿であなたの前に現われたってわけ」

 ああー、オリジナリティがなかったのは俺だったのか!

 畜生、もっとインパクトがあるというか、「つかめる」姿をイメージするんだった。


 頭を抱える俺に、モニア様は優しく語りかけた。

「大丈夫よ。九十九パーセントの転生者は、だいたいこんな感じのイメージを思い浮かべるわ。こっちも出来合いで済むので楽でいいけど」

 出来合いって、そのローブは既製服なのかな。


「でも、神様って親切ですね。そんなに一々イメージに合わせなくてもいいのに」

「あのね、こっちにも一日に何人を転生させるっていうノルマがあるの。転生者とのやり取りがスムーズにいかないと、時間がかかってしょうがないでしょ」

 ノルマって、神様の世界もなかなか世知辛いようだ。 

「だから、転生者が受け入れやすい姿を取るのよ。これでわかったでしょ。教師姿も、あなたが説明を素直に聞くように姿を変えたの。大サービスよ」

 モニア様は黒いストッキングをまとった美しいおみ足を組み替えた。

 ごちそうさまです。


 そして、モニア様は腕時計をちらっと見た。教師姿になったときに装備したようだ。

「さ、あなたにばかり時間を取ってはいられないわ。姿についてはもういいでしょ。次のステップに進むわよ」

「先生、質問があります」

「あんまり時間もないから、これが最後よ」

「スムーズにって言うなら、有無を言わせず事務的に転生させていけばよいのでは?」


「あのね、転生っていうのはそんなに簡単なものじゃないのよ。ひとりひとりに合った転生をちゃんとさせてあげないといけないの。だからここで希望を聞いたり、その人の人となりを見定めたりして、適性をきちんと見るの」

「転生カウンセラーってことですね」

「神をカウンセラーって。もういいわ何でも。さあ、次だけど」

「先生、もう一つだけ質問があります」

 はあ、とモニア様はため息をついた。


「ひとりひとりに合った転生をさせてあげないと、どうなるんですか」

「普通はこんなに説明はしないんだけどね。転生がうまくいかないと、転生先で落ちぶれてしまったり、最悪すぐに命を落としたりするわ。再転生はできないのよ」

「でも、それは転生者の責任ではないですか? 神様はそこまで責任持たなくてもいいのでは?」

「私は神よ。転生者の幸せが一番でしょ」

「それだけですか?」


「わかったわよ。教えるからあとは素直に言うこと聞いてね。転生がうまくいかないと、私の査定に響くの。出世に響くの。わかったでしょ。あ、転生者の幸せが一番というのは嘘じゃないわ。転生者も私も幸せになれば言うことないでしょ」

 ノルマの次は査定か。神様も大変だな。

 でも、いいこと聞いた。閃いた。

「先生、俺はこのままじゃよい転生ができそうにありません」


 しまった、とびっきり厄介な転生者に当たってしまったわ。

 転生担当は毎日毎日何人もの転生者の相手をしているので、たまに変な奴に当たってしまうこともある。特に私の担当地域では、そういう奴の出現割合が多いみたいね。

 ラノベやアニメが人気がある地域だからなのかな。

 全く、創作物と現実の区別くらいは付けてほしいわ。

 でも、たいていは「転生しなくていいの?」と軽く脅せば、いや、提案をすれば、おとなしくこっちの言うことに従うんだけどね。

 

 こちらの脅し、いや、提案に乗らず、なんだかんだと目の前でごねているこいつの生前の名前は、有島太郎。

 超一流大学を出て、中央省庁で働いていたバリバリのエリート。 

 そして、働き過ぎで過労死してしまった、かわいそうといえばかわいそうな若者。

 それも、自分の立身出世のためというよりは、世のため人のため真剣に職務に取り組み、真剣さの度が過ぎて過労死をしてしまったらしい。


 誰でも死んだばかりは事情がよく飲み込めず、自分がどうして死んだかわからないままにここに来ることがほとんど。

 人によっては、その人の境遇に寄り添いながら、どうして死んだかから丁寧に説明して、気持ちを落ち着かせることが必要な場合もあるわ。

 そうしてから、転生の話を徐々に説明していくの。

 ところが、こいつの態度は何なのかしら。

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