パートナー。
遅くなってごめんなさい。楽しんでいただけると嬉しいです。
「ここです、牢獄。今日はエルフの血を頂こうかな」
恐ろしい。俺、これからはソフィアにはなるべく逆らわないようにしよう。
「じゃあ、入りましょうか」
そこには大きな鉄の扉。トラックが突っ込んでも傷1つ付かなそうなくらい頑丈に出来ている。俺はその扉を押してみたがピクリともしない。
ソフィアは扉に両手を向けると「はっ」と言って目を赤く輝かせた。
その瞬間、
―――――――――ギー
手も触れてないのに、扉が重たい音をたてて開いたのだ。手から波動でも出したのか?
「どうやったんだ?それ」
「コウモリが超音波を出すように、私も見えない力で押したのです」
やっぱり。てか、コウモリの例は要らなかったんじゃないか?
「こんばんわ、皆さん」
ソフィアが言ったとたん、ざわめきが静寂に変わった。
「エルフ12番、16番・妖精はすべて。ここに来なさい」
安心したような声や悲鳴が牢獄中に響きわたった。
「今日は腹が減ってらっしゃるんだろうかねぇ」
「静かにしないとアンタも吸われるぞ」
などなど、様々な声が聞こえる。
俺たちの前に2人のエルフと、100近くの妖精が並んだ。初めて見たのだが、怖い目の奴が多かった。さすが牢獄。
「いただきますわ」
俺がまじまじと妖精たちを見ているとソフィアが嬉しそうに声を弾ませた。
そして、エルフの首筋に噛み付いたのだ。エルフがうめき声をあげているにもかかわらず、ソフィアはこの上ないくらい幸せそうな表情をしている。エルフが力尽きたころ、ソフィアはやっと口を離した。エルフの方には痛々しい犬歯の跡。
ふとソフィアに目を向けると、もう1人のエルフに噛み付いていた。
「ごちそうさまでした。おいしかったですわ」
目の前で妖精たちが、自分達も吸われるのではないかというようにびくびくしている。
「妖精、あなたたちの血はまずいからいらないわ。今日はお願いがあって来たのよ」
みんな、ほっとしたように肩を落とす。
「あのぉ、お願いとはなんでございましょう?」
1番年老いた妖精が尋ねる。
「全員、武器に変化しなさい」
妖精たちは戸惑いながらも姿を変えた。
剣、銃、槍……様々なものがある。
「下僕、選んで。あなたのパートナーを」
俺のパートナー。
俺はたくさん悩んだあげく、俺の身長の3分の1はありそうな大きさの太い、金で縁取りされた赤いもち手の剣を選んだ。強そうだろ。んにしても、あんなちっこいのがこんなに立派になるなんてな。
「これはぁ……かなり弱い妖精ね。もう1人強いのを連れて行ったほうが身のためですね」
立派な剣のくせに弱いのかよ。ソフィアはそのもう1人を選んでいる。そしてしばらくして戻ってきた。片手にピストルを抱えて。
「こいつが一番強いです」
プラスチック製で、いかにもおもちゃっていうか、水鉄砲みたいなのを指して言う。弱そうだなぁ。
「これ、もらっていいの?」
「まだ、契約を交わしていないでしょう。それからです」
契約?めんどくさそうだな。やり方も知らねぇし。
「どうやってやんの?」
「妖精たちにお願いするだけです」
これまたアバウトな説明だ。
でも、とりあえず契約すればいいんだよな。そしたら俺だって妖怪同然なんだよな。
俺はみんなのためにも戦わなくちゃいけないんだから。
そう、みんなのために。アリス、ソフィア、ジャン……
今回はアリスが登場しませんでした。次回もあまり出てこない予定ですが、よろしくお願いします。
読んでいただき、ありがとうございました。