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俺、下僕です。  作者: 猫宮 胡桃
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ヨウカイ。

 ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございます。楽しんで読んでくれると嬉しいです。

「ゲームスタートは今夜12時。最後の1人になったところで、ゲームは終了です。では皆さん、これで開会式を終了いたします」

 なんか、すげーことになっちまった。城の従業員がここに来るのを拒んだのはジャンが死んだからじゃなくて、このゲームに参加したくなかったからかもな。

「ジル、帰るわよ」

 え~。まだ何にも食ってないんだけど。

「アリス、もうちょっとだけここに……」

「だめよ」

 即答された。なんで?

「ゲームスタートは今夜なのよ。ここには敵が5人もいるわ」

 そういうことか。ここはたしかに危険すぎるな。

「じゃあ、帰った方がいいよな」

 俺はご馳走に後ろ髪を引かれながらも馬車へ向かった。

 あいかわらず立派な馬車だ。

 中にはソフィアの姿があった。そういえば、城にはいなかったもんな。一緒に来る意味無かったんじゃないか?馬車の見張り番とか?

「なぁ、アリス。ソフィアはゲームには参加しないのか?」

「下僕っ!」

 ソフィアは珍しく大きな声を出した。なんだ?いきなり。

「下僕のぶんざいでその口の利き方はいけませんっ!下僕の10か条、忘れたんですかっ!」

 これは、アリスに許可をもらって……。あれ以来ソフィアは俺を立派な下僕にするための教育係らしきものになっている。

「ソフィア、あたしが許可したのよ」

「な、なぜです?」

 ソフィアが真剣な顔つきになる。よっぽど驚いたんだろう。俺からしたら大してびっくりするような事でもないけど、ソフィアのアリスへの忠誠心は凄いからな。ここ何日か下僕やってて分かった。

「借りが出来たから」

 借り?ああ、ゲームに参加することか。たぶん。

「そうですか、失礼致しました。あの、借りというのはもしや「レジームゲーム」ですか?」

 レジームゲームってそんなに有名なのか?ソフィアも知ってるんだな。

「ええ」

「アリス様、私も参加させていただけませんか?私の力、お役に立てると思います」

 チカラ?あのエスパーみたいな?

「いいの?ソフィア。あなた、死ぬかもしれないのよ?」

「かまいません。アリス様をお守りできるのなら」

 ソフィアって案外、いい奴なのかもしれない。

「ありがとう。じゃ、あなたも敬語、免除してあげるわ」

「いえ。そんな無礼、私には出来ません」

 は?マジかよ。せっかくのチャンスなのに、もったいねぇ。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「ただいま」

「おかえりなさいませ」

 アリスを城中の従業員でお迎えする。

「ジャンの死体はどうしたの?」

 玄関はジャンの死体が無くなり、奇麗に掃除されていた。

「奥の部屋へ置いてあります」

「そう。じゃあ、冷凍室へ運んで」

 魔界ここじゃ、死体は埋葬しないで冷凍すんのか?

「アリス、なんで冷凍すんの?」

「このゲームに勝った者には力が与えられるわ。そこで治癒能力をもらって生き返らせるの。そのためには原形をとどめておかなくちゃいけないでしょ」

 ゲームに勝つことを前提に話してる。こりゃ、勝たなくちゃいけないな。

「アリスって優しいのな」

「何言ってるの?別に、これは姫として当たり前のことだし……」

 アリス、もっと素直になればいいのに。せっかくほめてやってんのにさ。

「げ、ゲームの準備しないと」

 そういってアリスはつかつかと歩いていく。俺もその後に続く。

「そういえば、あんた人間だったわよね」

「ああ」

 そりゃ、もちろん人間ですけど。

「どうやって戦うの?」

 ……?普通に剣とかピストルとか使うんじゃないの?

「魔界にいる者のほとんどは自分の力?のようなもので戦うんだけど」

 そういえば、ソフィアも「私の力」とか言ってたな。

「例えば、ソフィアは吸血鬼バンパイアよ。だから血を吸うことが出来るわ。あとは魔法使いに、ゾンビ。エスパーとか、透明人間とか、獣人とか……いろいろいるわ。みんな、その力で戦うの」

 ソフィアがバンパイア?てか、ほとんどがそういう奴ってことはこの城だって妖怪の溜まり場みたいなもんじゃんか。俺、そんな恐ろしいとこで働いてたのか。

「じゃあ、俺はその妖怪みたいな人と戦うの?どうやって?」

「だから、それはさっきあたしが聞いたじゃない。知らないわよ」

 嘘だろ。俺、きっと1撃で死ぬじゃん。

「困ったわね。じゃあ、とりあえずソフィアに相談してみて。あの子の知識はかなりのものよ。たぶん玄関にいるわ」

「わかった」

 バンパイアのとこに行くのか。もう暗くなってきたし怖いな。


◆◇◆◇◆◇◆◇

 玄関ではソフィアが箒を持って掃除していた。

「ソフィア」

「なんですか?」

 一旦掃除を中断してこっちに来てくれた。

「俺さ、人間なんだけど、どうやって戦えばいいのかな?」

「んんー、そうですねぇ」

 顔をしかめて顎に手を当てる。しばらく考え込んでなにか思いついたのか口を開く。

「あなた自身に力が無いわけですから、力のある武器を装備してはいかがでしょう?」

「力のある武器?」

「ええ。変身能力のある者に武器化してもらい、それを使うのです」

 さすがだ。ソフィアに相談してよかった。よく理解できねぇけど。

「その変身能力のある者って誰?」

「妖精ですね」

 妖精か。あの小さくて、羽がはえてる……。弱そうだな。

「で、妖精ってどこにいるの?」

 早く頼みに行かないとな。ゲームが始まっちまう前に。

「牢獄です。よかったら一緒に行きます?私もそろそろ食事に時間なので」

 牢獄?そしてなぜ食事?

「悪いことをして捕まった妖精がいますから」

「俺はその悪いことして捕まった妖精を武器にするの?」

 どうせならいい妖精が良かった。

「時間が無いのでしょう?いい妖精はここから2000億キロ離れたところにしかいないので」

 2000億キロ。たしかに無理だな、仕方ないか。

「じゃあ、その牢獄に連れて行ってくれる?」

「はい」

 城から出て、森の中を歩く。薄暗い中、変な形の植物のなかを歩くのはなかなか恐ろしいもんだ。ソフィアと一緒でよかった。

「さっき、食事がどうとかって言ってたじゃん。食事の時間なのに連れ出しちゃって悪いな」

「いえ、私、食事は牢獄でするんです」

 牢獄で食事って、なんでそんなことを?アリスの命令か?

「アリス様が……」

 やっぱりそうなのか。酷いだろ、さすがにそれは。

「牢獄の者達の生き血なら好きなだけやる。っておっしゃったので」

 そう言って嬉しそうに頬に手を当てる。

 バンパイアだったもんな。そっか……。

「ここです、牢獄。今日はエルフの血を頂こうかな。」

 そういってニコッと笑ったとき、ソフィアの長い犬歯が月明かりに光っていた。

 読んでくれてありがとうございました。こらからも、よろしくお願いします。

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