レジームゲーム。
「あたしはアリス。こいつは護衛のジルよ」
アリスはてきぱきと手続きをこなす。
「護衛はジャンという者だと伺っておりますが」
メイドさん、そういうことは聞かないほうがいいと思うよ。世の中には聞いていいことと、ダメなことがあるんだよ……。
「ジャンは体調不良なのよ」
あまりにも淡々と言うもんだから、少し感心してしまった。やっぱり、慣れてるんだろう。
「かしこまりました。どうぞ」
重々しく扉が開かれる。大きな城なだけあって、玄関もかなり立派で大きかった。
アリスはヒールの高い靴をコツコツと鳴らして歩く。パーティーって靴は脱がないんだな。てっきり玄関みたいなもんがあるんだと思ってた。
「アリスちゃん!!!」
ホールに着くとすぐ、女の人が駆け寄ってきた。黒髪に黒い瞳、そして黒いドレス。魔界に来て初めて日本人らしい人を見た気がする。こういう人を黒ずくめの女っていうのかな。なーんて思ったり。
「ファリーヌお姉さま」
ふぁりーぬ?お姉さま?アリスって姉妹いたんだな。にしても似て無すぎだろ、髪の色も目の色も違うじゃねぇか。
「久しぶりだね、アリスちゃん」
性格も全然違うし。ファリーヌは「元気いっぱい」って感じなのに
「久しぶりです、お姉さま」
アリスはいたって冷静だ。
二人が見つめ合ったとき、不思議な感じがした。
空気が凍りつくような感覚……。
「じゃぁね、ありすちゃん!」
ファリーヌは笑顔のままアリスに手を振ると別の人のところへ向かった。
さっき感じたのは、気のせいだったんだろう。
仲良さそうだし。
その後、アリスは20人ほどの人とあいさつを交わした。そのうち4人がアリスの兄弟だということが分かった。お兄さんとお姉さんが二人ずつ。つまり、ファリーヌとアリスも合わせて6人兄弟だったんだ。でも、みんな似ていなかった。
◆◇◆◇◆◇◆
急に部屋の明かりが消えて、1人のおじさんだけがライトに照らされた。高そうな服を身にまとっている。あれが、きっとアリスの叔父さんだ。
「えぇ、この度は舞踏会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。我がレジーム家の親族が全員集まれたのは皆様のおかげです……」
全員、親戚だったのかよ。多いなぁ、さすが王族。
「……今回、皆様にお集まりいただいたのは他でもない「レジームゲーム」の開会式を行うためでございます」
とたんに歓声の声が上がった。しかし、隣にいるアリスの表情は険しいものだった。
「アリス様?どうしたんですか?」
「……」
聞こえてないのか?
「アリス様!」
「え? 何?」
「険しい顔してたから、です」
すると、アリスは何か決心したかのように手をぎゅっと握った。
「ちょっと来て」
アリスに連れられて、廊下に出た。冷房が効いていて、少し肌寒かい。
「ジル。ここに来たからには貴方にも「レジームゲーム」に参加してもらわなくてはいけないわ」
決まり悪そうにアリスは顔をしかめる。
「れじむげーむって何? ……ですか?」
「レジームゲームよ。レジーム家の後継者を決めるゲームのこと。あと敬語、練習しておきなさい」
う……。俺、国語は苦手なんだよ。
てか、後継者ってゲームで決めるのか? 魔界ってやっぱり変なとこだな。
「で、貴方も参加してくれるわよね?」
まあな。俺、下僕だし。
「これだけは自分で決めていいわよ。」
下僕なのに? でも、断るのも悪いし。それに、また剣突きつけられるのはイヤだ。
「参加するよ……じゃなくて、参加します」
「本当にいいの?」
「はい」
だって、ゲームなんだろ。
「ありがとう」
アリスは、今まで見たことも無いような笑顔で言った。
「じゃあ、もう敬語で話さなくていいわ」
マジで? 下僕の十か条、破っていいの? てか、なんで?
「お礼みたいなものよ。それにあんたのぎこちない敬語なんて聞いてて疲れるわ」
酷い言われようだが、これには返す言葉がない。
「あ、でもそれだけよ。他の約束は守ってもらうわ」
あぁ、残念。でも、敬語から逃れられるんだ、よかったぁ。
「じゃ、戻るわよ」
「ああ」
ホールでは「レジームゲーム」とやらのルール説明が行われていた。
「このゲームは……」
俺はその言葉を聞いて後悔した。
読んでくれてありがとうがざいました。至らぬ文章だったと思いますが、感想や、アドバイスいただけると嬉しいです。