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俺、下僕です。  作者: 猫宮 胡桃
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レッドノチカラ。

おそくなりました!

「ぐはっ!」

 そううめき声をあげたのは俺だった。

 槍が、さ……俺の右胸に刺さってんだよ。俺がさっと避けたからなんとか心臓は刺されずに済んだ。

 ――アイツ、本気だ――

 ウィーヴァルは確実に俺の心臓を狙ってきた。俺を、殺しにきたんだ。


「かはっ」

 急に喉に違和感が襲ってきて、俺は大量の血を吐いた。

 刀を握る手に力を入れる。立ちたいのに、立てない。

「くそっ!」

 さっきまで焼けるように痛んだ胸も、もう何も感じないんだ。力が、入らない。

「動けっ! 動けよっ!」

 使えない足をたたいても体力を消費するだけに過ぎない。

「ジルっ!」

 アリスが血相を変えて俺に駆け寄ってくる。それなのに……

「来るな」

 それなのに、俺はそう言っちまった。俺はアリスのそんな顔が見たくて戦ったわけじゃねぇ。アリスを守るためにこの刀を振るうんだ!

「うおおおおおおおおお!」

 刀を杖にして震える足に力を込める。ふらふらしながらも何とか立って、再び刀をかまえる。

「おやおや、まだ立てたのですか?」

 ウィーヴァルはフンと鼻で笑って、余裕な表情で槍をくるくると操る。その動きはやけにしなやかなのに比べて、でっかい刀を持ってるだけで体中が悲鳴を上げている俺はカッコわりいかな。

「レッド、行くぞ……」

 俺は息を荒立ててウィーヴァルに刀を向ける。月明かりを帯びて光る刀の先は確実にウィーヴァルを捕らえた。

「ウィーヴァルっ!」

 思いっきりアイツにむかって走る。俺の身体がどうなろうとそんなの知ったことじゃない。男には命をかけてでも守りたいってものがあるんだ。それはときに大きな力になる。

「刀が……生きてる!?」

 アリスが目を大きく見開いた。

「おりゃあああ!」

 振り下ろした刀には確かな手ごたえがあった。

「き、貴様っ!」

 刀は、レッドはまるで噛み付くかのようにウィーヴァルの肩に刺さっている。深く、しっかりと。

 俺にまだこんな力のこってたのか? いや、そうじゃない。

「刀が……」

 ソフィアも気が付いたみたいだ。そう、さっきアリスが言ってたように”刀が生きてる”んだ。燃えるような炎に包まれた刀は踊るように火花を散らす。

「レッド?」

 俺は変身中は口が利けないはずのレッドに声をかけた。

「おう! どうした、主。戦うんだろ?」

「ああ!」

 即座にウィーヴァルの肩から刀を抜く。肩からは痛々しいほどに出血していて、思わず目をそらしたくなる。

「これで、おあいこだな」

 なんて余裕かましたフリして言ってる俺ももう限界。すっかり力が抜けちまった。

「ずいぶん派手にやってくれましたねぇ……はぁ、ですが、その様子じゃ貴方もそろそろ限界ですか」

 自分だって息が上がってるくせにウィーヴァルはそう言ってにやりと口元を吊り上げた。まあ、そうだろうな。皮肉なことに俺はもう立つことすらできねぇんだから。

「これで、終わりだっ」

 槍の矛先がまっすぐに俺に向けられる。

ありがとうございました。

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