ゲボク戦。
遅くなりました!
『ゲーム、スタート!』
アリスとグランの声が重なった。
戦場はアリスの城の屋上。
今日は月が綺麗だ。赤くぼんやりと光るそれは残酷なほどに、美しい。
「かかってくるがいい」
そう言って口元をニヤリと吊り上げるウィーヴァル。
だけどさ、こんなに余裕かましてる奴に何の策もなく突っ込んでいくほど俺はバカじゃねぇ。
「アリス、どうすればいい?」
俺の少し後ろにかまえるアリスに指示を仰ぐ。
「そうね……アンタの好きにしていいわよっ!」
返ってきたのは予想もしなかった、いやしたくなかった返事だ。まじかよ……!
「負けてもしらねぇぞっ」
なんて言いながら、真正面からウィーヴァルに突っ込んでいく。
だけどさ、俺、負けるわけにはいかねぇんだ。アリスやソフィアを守るって決めたんだから。
「うぉおおおおおおおおおお!」
俺はでっかい刀を力任せに振りかざす。
けど、ウィーヴァルはいとも簡単にそれを避けるんだ。
「おっと……そんな野蛮な」
口元に笑みをたたえたままさ軽々と。
まあ、あたりまえだよな。ウィーヴァルは魔界の、しかも王族の下僕だろ? 弱いわけねぇじゃん。だってさ、この下僕戦の間はそいつに命を預けるわけだろ?
グランのやつ、よっぽどウィーヴァルに自信があるに違いねぇ。
第一、下僕戦を持ちかけてきたのはグランだ。勝算が無くちゃ、そんなマネできねえし。
「くそっ!」
だけど、俺はこの身体が使えなくなるまで戦い続けようと思う。
アリスたちは俺を信じてくれてるんだから。
「おりゃあああああああ!」
俺は力いっぱいに刀振りかざす。
ウィーヴァルはすかさず右にひょいっと避ける。だがな、いつもいつも右にばかり逃げてるんじゃ、俺だってアンタに刀あてるくらいできると思うんだけどっ!
「っ!」
俺はウィーヴァルのわき腹に思いっきり刀を走らせる……はずだった。なのに俺の想像していた残酷な音なんていつになっても聞こえなくて、かわりに鋭い金属音が響く。
俺の渾身の一撃をイーヴァルがとめたんだ。アイツの手に握られているのは……
「……槍っ!?」
俺の身長と同じくらい、いやそれよりも長いかもしれない槍。鋭い槍先は一突きでもされたら、間違いなく重傷を負うだろう。
打ち所が悪ければ、最悪の場合死んでしまうかもしれない。だけどさ、
「戦いってこーゆーもんなのなっ!」
やっと分かったぜ! 俺は何が何でも勝たなくちゃいけねぇ。たとえ、この身体が動かなくなっても、戦い続けなくちゃいけねぇんだ……勝つまではっ!!
”命を懸けて戦う”
それがこのレジームゲームってやつなんだろ?
俺はこんな醜い争いを止めるためにも、こいつを倒す!
「っ! あっぶねー」
次から次えとすごい勢いで俺に向かってくるアイツの槍をよけるのは結構つらい。地面に足をついてる
暇もないくらいに!
――俺は、絶対に負けない! 負けられない!!――
ありがとうございました!