ゲームスタート。
おそくなってすみません。
「ふーん。じゃあ、ゲームしようよ♪」
「ゲーム?」
「ああ。俺たちの命を賭けて、さ♪」
明らかに不利な申し出。だけど、アリスはやっぱり……
「いいわよ」
なんで、そう簡単に命を差し出すようなマネをするんだ。でもアリスが決めた以上、俺には”下僕”としての使命ってもんがある。
「アリス様っ!」
だけどさ、アリスが危険な目にあったりすると、ソフィアたちはこうやって一生懸命それを阻止しようとするんだ。
「アリス様、駄目じゃ!」
ノームだって。みんな、アリスのことが心配で、大切なんだよ。でも、アリスは何でもかんでも無茶しすぎなんだ。だから、俺はそんなアリスを支える。そのために、俺は今こうやって”下僕”なんてしてるのかもしれない。
「ルールはオレが決めるよ」
グランが楽しそうに言う。
「いいわよ」
でも、そこは否定してくれないか? だってさ、自分より強い奴にルール決めさせるってのはどうかと思うんだけど……。
さらに俺たちが不利になるわけじゃん?
「そーだなぁ、じゃあ下僕戦ってのはどう?」
グランがにやっと口元を吊り上げて言う。ほらな、やっぱり変なこと言い出したじゃねぇか。
「下僕戦?」
「アリスの下僕くんと、うちのイーヴァルを戦わせる。もちろん、オレやアリスも手を貸していいっていうルールでさ♪」
つまり、俺がイーヴァルと戦うってわけだな。何度も言うけどさ、俺、人間だぜ? 悔しいけどさ、よくわかんねー仮面野郎のほうが力があるのは確かなんだけど。
「ジル、いいかしら?」
アリスにそう尋ねられる。俺は断らねぇーよ。お姫様が戦うってのに俺が逃げてたんじゃ、男が廃るっての。
「ああ」
俺が答えると、グランとアリスの目つきが変わった。二人ともやけに楽しそうで、それでいて真剣な目でお互いをじぃっと見つめている。
グランがゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、さっそく始めようか♪」
「ええ」
「ジル、こっちに来なさい」
アリスに促されて俺はウィーヴァルと向かい合うかたちで立つ。目の前で勝ち誇ったように笑う仮面野郎がなんだかすっげームカつく。
俺もこいつに負けないくらい強くならねーとな。
「目覚めよ、レッド・グリーン」
俺の言葉で現れたのはやけに上機嫌なレッドとグリーン。
「主! 戦いだなっ!?」
「主人、でしたら僕は頑張りますよ」
皮肉なことに俺はこいつらの力を借りなくちゃ、ただの弱い人間だ。でも、それでアリスを守れるならレッドとグリーンには感謝しないとな。
「ああ。頼む!」
そう言った瞬間、俺は白い光にやんわりと包まれた。って、何これ? 武装するときってこんな派手な演出とかあったか??
まあ、よくわからねぇけど俺は武装できたわけだ。
がっちりした鎧なんて着ちゃってさ。腰にささってるのは水鉄砲もどきのピストル(※グリーンです)で、手にはでっかい刀(※レッドです)が持たされている。
人間界にいたときにハマってたゲームの主人公がたしかこんな格好してた気がする。
「ジル……?」
なぜだか俺をみてアリスは大きく目を見開いている。となりにいるソフィアもノームも。やっぱりみんなもこの変な変身シーンみたいなのに驚いたのか? そりゃ、俺だってびっくりしたし。てか、結局あれは何だったわけ?
「絶対に、勝つのよ!」
「頑張ってください」
期待を秘めた目でそう言うアリスとソフィア。そのとなりではノームが「頑張るのじゃ、小僧!」なんて言いながら俺をすっげー怖い目でにらんでいた。
「ああ!」
「準備はいい? アリス♪」
グランが静かに髪をかきあげる。
「ええ!」
まっすぐにグランを見つめてそう言ったアリスのきれいな金髪が、風でふんわりと揺れる。
『ゲーム、スタート!』
アリスとグランの声が重なった。