センセンフコク。
遅くなりました!
ごめんなさい。
「アーリース♪オレの大事な下僕を傷つけるのは止してくれるかな?」
そういって現れたのはグラン。アリスに聞いていたとおり、ツンツンとした金髪でピアスを邪魔なほどに付けている。俺としては関わりたくない人の部類に入るグランとやらは俺を見てふっと笑う。
って、何でだよっ!?
「せっかくアリスが可愛いのに、下僕は美しくはないようだね」
いやいや、俺は美しさを追及するなんて趣味は持ち合わせてないっていうかいきなり美しくないって失礼じゃねぇか。
確かに俺はアンタみたいに王子様を連想させるような顔立ちはしてねぇけどさ。これでも一応それなりにモテてはいた……んじゃねーの。
「あたしはグランお兄さまのような”イカツイ”奴よりもジルみたいに忠実な犬のほうがよっぽど好きよ」
ほらな。アリスだって……ん? 今スキって聞こえたんですけど。アリスの声でスキって! スキって好き? って、アリスが俺を? いや、でも犬って言ったよな。だけどさ、たとえlikeだとしても素直に嬉しいんだけど。
軽く舞い上がった俺にアリスがあいかわらずキツい口調で言葉を放つ。
「ちょっと、ジル!」
うわー。すげぇもんだな。なんかいつもより数倍アリスが可愛く見えるんですけど。
「んぁ?」
「しっかりしなさいよ!」
アリスが俺をキッとにらむとグランがいきなり笑い出す。って何でなんだよっ! 俺、なんかコイツとはウマが合わねぇみたいだ。コイツの行動原理のすべてが理解不能だもんな。
「アリスちゃん。簡単に好きとか言っちゃダメでしょ~?」
意味ありげにニヤっと口元を吊り上げると「ほら、下僕くんみたいなのは誤解しちゃうよ♪」だなんて。ありえねぇって。俺はそんなんで変な誤解するほど馬鹿じゃねぇっつの! そりゃ、ちょっとは期待しちゃったりはしたかもしんねーけどさ……。
「あ、あたしはそんなこと言った覚えは無いわ! それより、何の用なの!?」
アリスの問いにグランの目つきが変わる。なんてゆうか、真剣な目に変わったんだ。
「もちろん、レジームゲームだけど?」
その言葉がグランの口から放たれた瞬間、みんなの顔が曇ってピリピリとした空気が張り詰める。
「あたしを殺すつもり?」
冷静に言い放ったアリスにグランは首を振る。どういうことだ? レジームゲームのためにここに来たっていうのに、アリスを殺すつもりは無いってことか? やっぱり、理解できねぇよ。
グランが重々しく口を開く。
「アリス、俺と組まない?」
おっ! これっていい話なんじゃね? グランがアリスに協力してくれるんだろ? 最低でもここは平和に収まるわけだし、アリスが勝てる可能性もぐんと上がるわけだし。
なのに……
「イヤよっ!」
アリス。お前はどうしてそんなにも強気で勝気なんだよ。そんなあからさまに否定することもねぇだろ。断るにしてもな、ちょっとくらい考えてもいいんじゃねぇか?
「ふーん。じゃあ、ゲームしようよ♪」
「ゲーム?」
「ああ。俺たちの命を賭けて、さ♪」
そう言って怪しい笑みを浮かべるグラン。そんなグランを勝ち誇ったような笑みで見つめるアリス。
二人のシルエットが淡い光を放つ月明かりに浮かび上がった。
ありがとうございました。