本当のハジマリ。
遅くなってすみません。お待たせしました!
今日からまた再開します。
城のみんながこれから始まるであろう大戦争に備えて慌しい日々を送っている中、俺たちは呑気にお茶会をしていた。アリスが言うには「グランお兄様に勝算なんて無いわ!」という事らしい。よっぽど自信があるのだろう。でも、そのおかげか最近アリスやソフィアは笑顔でいることが多くて城の雰囲気はどこか温かかった。
「ソフィア、これにお茶をもう一杯くれないかしら?」
そう言ってアリスがめちゃくちゃ高そうな戸棚から出したのは桃色のバラの飾りがついたティーカップ。いつの間に買ったのか、それとも俺が見たことが無かっただけなのか分からないけど、アリスらしい高そうなものだった。
「はい」
ソフィアは不思議そうな顔をしてティーカップを受け取ると慣れた手つきで紅茶を入れ始める。んにしても、なんで2つもティーカップが必要なんだ?それにアリスがおかわりなんて珍しい。いつもなら薦めても「紅茶は一度にそんなに飲むものじゃないわ。ゆっくり味わって飲むからこそ美味しいんじゃない!」なんて毎回、力説してるのに。ソフィアもそれで”違和感たっぷり!”みたいな顔をしてたんだろう。
「どうぞ、アリス様」
あっという間に紅茶を入れ終えて、丁寧にアリスに渡そうとするソフィア。それなのにアリスは「あたしは一杯で十分だわ」とお決まりの一言。
自分で催促しといて要らないって意味わかんねー。どうしたんだ?アリス。ソフィアなんて今にも泣き出しそうな顔してるじゃねぇか。
「アリス様?あの……」
震える声で訊ねるソフィアの言葉を遮ってアリスはまたもや不思議なことを言い出した。「あなたの分よ」なんて澄ました顔でさ。
そしてきょとんとするソフィアにもう一度言い直す。
「あなたがそれを飲むのよ。そのティーカップもこれからは貴方の物なの。明日からはわたしの紅茶を用意するとき、貴方の分も一緒に淹れてきなさい。そして、一緒にお茶するのよ」
そんなアリスの言葉は余計にソフィアを混乱させてしまったようだ。さらに「ジルの分も用意してあげてちょうだい」なんて言うもんだから俺まで驚いちまったじゃねぇか。
「アリス様?あの、私はそんなご無礼なこと……」
「これは命令よ!別に貴方達のためじゃないわ。ただ、一人でお茶するのに飽きてきただけよ。分かった?」
これはアリスなりの気遣いなんだと思う。ウィーヴァルの件があってからアリスはどこか優しくなった。従業員のみんなの”心が弱っている”状態を無くすために頑張っているんだと思う。
「では、いただきます」
そして、みんなもそんなアリスの優しさを温かく受け入れている。ソフィアが控えめに紅茶をくこりと飲んだときだった……「バタンッ」なんて鈍い音がして崩れ落ちるようにしてソフィアが倒れたのは。
「ソフィアッ!」
アリスが血相を変えて駆け寄る。
「んん…やめ、な、さい」
ソフィアは険しい顔をして何度もそう繰り返す。いきなりのことでその場に居た皆が慌てていたが、
「ウィーヴァ、ル……」
ソフィアのこの言葉で全てを悟った。ウィーヴァルが、ウィーヴァルの魂がソフィアへの侵入を試みていることを。そしてソフィアの額に汗が溜まり始めた頃……
「き、気色悪いですっ!!!!」
その言葉を境にソフィアは正気に戻り、俺たちの目の前には仮面オタク&ナルシストことウィーヴァルが姿を現す。
「ちっ、この我が侵入に失敗するとはっ!」
あの時聞いた機械じみた声が響く。
「あなたみたいなのが私の中に入るなんて気持ち悪すぎです!誰が入れるもんですかっ!!」
やっぱ、ソフィアってすげぇ。俺は改めて尊敬した。それと同時にレジームゲームの本当の始まりを目にしたような気がして、少し、怖くなった。
「よくやったわ、ソフィア。あとはあたしに任せなさい」
息が上がっているソフィアを庇うようにしてアリスがウィーヴァルの前に立ちはだかる。
「アーリース♪オレの大事な下僕を傷つけるのは止してくれるかな?」
そう言って現れたのはアリスの兄さんであり、このゲームの敵であるグラン……
読んでいただき、ありがとうございました。
改訂作業の都合により更新が遅れるかもしれません、すみません。