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俺、下僕です。  作者: 猫宮 胡桃
19/26

イセカイジン。

遅くなってごめんなさい。今回もよろしくお願いします。


ここ―――アリスの城では、ある事件が起こっていた。

それはちょうど一週間前のことだった。メイドが1人、買出しへ行く最中に亡くなったのだ。原因は不明らしいがたくさんの血を吐いて倒れていたらしい。

それからずっと一日に1人ずつ、城の関係者が命を落としていった。ガードマンに執事、メイド、コック……全部で8人。今日も牢獄の管理人が無くなった。

みんな、たくさんの血を吐いて倒れている姿で発見されたようだ。まるで、ジャンのように……。今、彼らは冷凍室で深い眠りについている。


「今までの事件は他殺だと思われます。皆が同じように亡くなっていることから同一犯の犯行だと考えていますが、どの現場にもこれといった手がかりは見つかりませんでした。恐らく魔術による犯行ではないでしょうか?」

 ソフィアが淡々とした口調で言う。今、俺たちはこの連続殺人事件についてアリスの部屋で話しているところだ。ソフィアとアリス、それから魔術研究者のノームに俺という少ないメンバーでの話し合いだが仕方が無い。城の中に裏切り者がいる可能性を考えるとこうするしかなかったようだ。

「犯人は特定できないけれど、まずはこれ以上死者を出さないことね」

 そっと目を伏せるアリス。人には見せないがかなり悲しいんだと思う。

「ああ。とりあえず、皆を城の外に出さなきゃいいんじゃないか?」 

 城の中なら外よりは何十倍も安全だし、いざとなれば戦える奴だってたくさんいる。我ながらいい案じゃないか。なんて思ってると、この日初めてノームが口を開いた。

「実際ジャンは城の中で亡くなっておる。犯人は間接的な魔術を使用しているのではないじゃろうか。だから城の中にいようと防ぐのは難しいと思うのじゃが」

 遠まわしに「今日の殺人も防げない」と言っているノームに正直ムカついたけど、魔術研究者なだけあって一応筋は通っている。

「ならどうしたらいいのよ」

 悔しそうに唇を噛み締めるアリスだがこの一週間誰にも涙を見せていない。アリスはなんでも1人で溜め込んじゃう性格だからよけいに心配だ。

「犯人はきっとお兄さまやお姉さまの関係者よ。汚い手を使うものね……」

 やっぱりアリスの兄弟が関係しているみたいだな。でも王族の使いとなると手ごわい奴に違いない。ノームがいうには間接的に殺人が出来るらしいしな……。

「せめて結界的なのでも張れればいいのになぁ」

 なんとなく呟いた言葉だったんだけど、俺のその一言でノームが気持ち悪いほどにしょぼしょぼな目を輝かせた。

「結界……なかなかいいことを言うじゃないか、小僧!どうじゃアリス様。貴方のお力で無効化ノンマジックの結界を張ってみては」

 アリスは難しい顔をしつつも頷く。なにか問題でもあるのか?

「どうかしたか?」

「城一帯に結界を張るなんてかなりの魔力が必要なのよ。私が頑張ったところで半日で限界だわ」

 ああ、この城無駄に広いもんな~。

「大量の魔術を使い続けてはアリス様のお体が危険です」

 そうなのか?だったらソフィアの言うとおり、アリスに危険が及ぶなら出来るだけそれは避けたいな。

「大丈夫よ」

「いや、やはり止めるのが妥当じゃ。アリス様の魔力を消耗させるのが奴らの目的かもしれんからの」

 アリスは誰になんと言われようとも結界を張ると思う。自分の参加するゲームの所為で次々と人が死んでいくのだから、優しいアリスには自分を守るために他人の命を奪うなんて選択は出来ないんだろう。

「なるべく魔力を消耗しないで結界を張る方法は無いのか?」

 せめて消耗魔力を減らすことが出来たら……

「うむ。あるといえばあるのじゃが、あまり薦められんのぉ」

 薦められるとかそんなことを言ってる場合じゃないだろ。

「どうすればいいんだ?」

 ノームは眉間にしわを寄せて難しい顔をする。そう簡単にはいかないみたいだな。

「…………異世界人の生き血を飲めば魔力を高い状態で一定に保つことが出来るのじゃ。そうすれば魔力の消耗など問題ではないんじゃが」

 異世界人の生き血。異世界人……つまり俺の生き血が必要ってことだな。

「で、どれくらいなんだ?」

「何がじゃ?」

「どれくらい、生き血が必要なんだ?」

「ああ。とりあえず、コップ一杯分くらいで一週間はもつじゃろう」

 コップ一杯分、か。死にはしないよな。よし……。俺はアリスと約束したんだかんな。全力で守るって。アリスが皆を守るために魔力を使うなら俺も全力で力を貸す。生き血くらいいくらでもくれてやるさ。今の俺に出来るのはこれくらいだ。

「目覚めよ、レッド」

 レッドの体から怪しげな光が放たれる。

「なんだよあるじ。オレになにか用か?」

 久々に目を覚ましてご機嫌なレッド。伸びをしながら相変わらず偉そうに仁王立ちしている。

「刀に……なってくれ」

「あ?もしや戦いか!?ついに俺様が役に立つ日が来たか~。うっし!変身だぜ!!」

 あやしく体を光らせると一瞬にしてレッドは大きな刀へと姿を変える。ノームやアリス達は急に刀を手にした俺を不思議そうに眺めている。俺はそんな空気の中で刀を手首に当てる。どくどくと流れ出す真っ赤な血を近くにあったティーカップへと流し込む。カップがいっぱいになってもまだ俺の血は止まらずに流れ続ける。そして俺は…………意識を手放した。

「ジル!!!」

 そう叫ぶアリスの声が最後に聞こえたような気がする……………………




読んでいただき、ありがとうございました。ちょっと短かったかもですね……。

次回もよろしくお願いします。

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