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俺、下僕です。  作者: 猫宮 胡桃
18/26

ザンコク。

お待たせしました!番外編を終了し、本編に戻ります。楽しんでいただけると嬉しいです。

「なんかすげぇ個性的な兄弟だな」

 アリスの話を聞いて一番にそう思った。

「ええ、あいつらはみんな変なのよ」

 そういうアリスも充分変わってるんじゃないかと思う。でもまぁ他の兄弟に比べたらマシなほうなんだろう。

「そういえば、親父さんやお母さんは?」

 聞いた話にはアリスの親御さんは一度も出て来なかったよな?あまり子供達のことには口を出さない主義なのか?それとも、国王・お妃様だから忙しいのかもな。

「実は私たち、お父様とお母様には会ったことがないのよ」

 会ったことが無い??自分の親の顔も知らないのか?てか、なんでだ?

「ジームゲームでは最終的な判断は国王が行うわ。公平な判断を行うためには参加者に対して感情を持たないのが一番。そのためにゲームの決着がつくまでは家族といえど、面会は許されない」

 よくわかんねぇけど、レジームゲームが原因で親と会えないって事だよな。一緒に飯も食えないんだろ?やっぱり、残酷だ。

「こんなゲーム、無くなっちまえばいいのにな」

「ええ。でも何百代にも渡って続いてきたゲームよ。今更止められないわ」

 運命って奴なのかもしれない。せっかく生まれてきたのに「殺される」か「殺す」を選べというのだから。なんて残酷な運命なんだろう……。俺はアリスが殺されるところなんて見たくない。兄弟を殺すところだって見たくない。それにもし、アリスが兄弟を殺したらその瞬間にアリスはアリスじゃなくなっちまうような気がする。

「残酷だな」

「仕方ないことなのよ」

 そういうアリスの目には悲しみが宿っていた。まだ、後ろめたい気持ちがあるんだと思う。俺はそんなアリスを見るのが辛い。見たくない。

「レジーム家は他の家系に比べて子供が多いわ。レジームゲームのためよ。参加者が多いほどたくさんの悲劇がおこる。それをいつしか皆が楽しむようになってしまったのね……。これはもう手のつけようが無いわ。私たちの使命は皆が楽しめる残酷な悲劇を、自らの命を賭けて作ること。それが事実なのよ、受け止めるしかないわ。だって私はレジーム家に生まれてきてしまっ」

「黙れ」

 俺はもう我慢の限界だった。死を悟った爺さんみたいに諦めの色をちらつかせながら語るアリスをだまって見ていられるほど、俺は出来た人間じゃない。

「なによ、急に」

 急にキレた俺にアリスは驚いているようだ。

「あたしは敬語は使わなくてもいいって言ったけど、自分の立場を弁えなくてもいいなんていった覚えは無いわ。あんたはあたしに命令できる立場じゃないのよ!」

 キッと釣りあがった目はとても生き生きしていて少し、落ち着いた。

「分かってる。俺はアリスの下僕だ」

「そうよ!さっきの言葉に対して謝るのが妥当じゃないかしら?」

「俺は謝らないぞ」

 元をたどれば、アリスが変な話をしたのが悪い。あんな消極的ならしくない話しておいて、だまってきいてろなんて無茶だ。

「どうしてよ!?」

「アリスが変なこと言うからだろ!」

「あたしは事実を言っただけじゃない」

 まあ、アリスが言ったことは事実かもしれない。恐らくそうなのだろう。でも俺がもっと嫌だったのはそれをアリスが受け入れてるってことだ。そんなアリスは……嫌いだ。

「俺はアリスにそんな残酷な運命を受け入れてほしくない。アリスには、アリスのままでいてほしいんだよ!」

「運命は受け入れなくてはいけないものよ」

 そんな落ち着いた声が更に俺を苛立たせた。

「そういうところが嫌なんだ。アリスにはゲームに勝つことを目標にして欲しくない。このゲームを終わらせることを目標にして欲しい。それが嫌なら、俺が終わらせて見せる!!……アリスには十字架を背負って生きてほしくなんか無いんだ。優しいアリスのままで、いてほしいんだよ……」

 無意識に俺はそう言い放っていた。無意識といってもこれが俺の本音で、俺の望む全てだ。

「……せっかく諦めかけてたのに、あんたの所為で台無しじゃない。……ジルの、バカ」

 アリスはすっかり冷めた紅茶が入ったティーカップを俺に投げつける。おかげで俺は紅茶をかぶっちまった。高そうなアリスの愛用しているティーカップだって割れちゃったし。怒らしちまったかなぁ。

「悪い」

 素直に頭を下げる。悪気は無かったが、機嫌を損ねちまったのは他でもない俺だかんな。

「わ、悪いと思うなら、全力で、あたしを……守りなさいよね」

「ああ、そうさせてもらう」

 アリスはこくりと頷くと、色白ですらっとした奇麗な指で俺の頬をなでた。意味不明な行為だったが、後から聞くと「ティーカップで怪我させちゃったから治してあげたのよ」ということだった。それに加えて「あれくらいで顔赤くしちゃって、気持ち悪かったわよ」と鼻で笑われた。

読んでいただき、ありがとうございました。今回は久々にジルが登場しました~。本編に戻ったということで、次回からも頑張りますのでよろしくお願いします。

前回までの番外編はアリスの兄弟のことを皆さんにも知ってもらおうということで書いていました。なんとなく分かっていてくだされば幸いです。

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