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俺、下僕です。  作者: 猫宮 胡桃
15/26

モネ

投稿、遅くなってしまってごめんなさい。お待たせしました!


さて、今回は次女のモネがメインです。楽しんでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

「アリスお嬢様、本日の午前の授業は体育になっております。さあ、グランドでモネ様がお待ちですよ。いってらっしゃいませ」

 メイドは笑顔でアリスを見送るが、アリスは曇った顔をしている。

「モネ……」

 姉の名をため息交じりで口にする。グランドではモネが待っている。アリスの体育の授業はモネが指導してくれるのだ。理由は簡単、王族に教える上で必要な体力を持った者がいないからだ。……モネを除いては。モネの身体能力は生まれつきずば抜けていた。だから王族に必要な身体能力は既に身に付けている。そのため、体力を必要とする科目の先生に任命されたと言うわけだ。

 重たい足を動かしているともうグランドが見えてきた。

「アーリースッ!!」

 そんな声と共に光の速さで突っ込んでくる人物、彼女こそがアリスの姉・モネ。短く切った茶髪と赤いジャージは彼女にとても似合っている。お洒落に着飾るより、この姿の方が彼女らしい。

「モネ、お手柔らかにお願いするわ」

 アリスは無駄なことだとは分かっていながらもお願いする。呼び捨てにしているのはモネが「上下関係とか面倒だから気にするな」と言ったため。こんなさっぱりした性格だから、アリスはモネが好きだった。

「ああ、死なない程度にはするから安心しなっ!」

 アリスの言葉はやはり意味が無かった。命だけは保証してくれるようだが……。

「今日は何をすればいいのかしら?」

「とりあえず、グランド100周。アタシはその間に差し入れでも作ってきてやるよっ!」

 アリスはモネの「差し入れ」と言う言葉に恐怖を覚えていた。以前もらったソレは最悪といってもいいくらいの物だったのだから。今日ももう少ししたら持ってくるのだろう。

「差し入れなんていらないわ。別に欲しくなんてないし」

 アリスは正直にそう思った。しかし、

「気にするなって、このツンデレっ娘っ!」

 モネはそう言って二カっと笑った。そして「アリスはツンデレだから本当は欲しいのにそうやって言うんだろ?」と。アリスはもう面倒になってきたため、コクンとだけ頷く。が、後にこの行為をとても悔やむことになる。

「まったく、アリスは……」

 大きくため息をつかれるが、アリスの方がため息をつきたかったに違いない。

「じゃ、走っとけよっ!」

 これだけ言い残すと、またしても光の速さで姿を消す。アリスはかなり重い足を動かして走り始める。50周目を走りながら、モネは話すとき語尾に「っ!」がよく付くのは何でだろう?などとどうでもいいことを考えていると誰かに呼ばれた。

「アーリースッ!」

 無駄に大きな声。城の中で叫ぶのなんてアリスは一人しか知らない。

「も、ね……」

 アリスは走りつかれて、息が上がっている。

「準備運動でこんなに疲れちゃダメだろっ!ふふん、そんな時こそ『モネ特製さっぱりゼリー!!』を食うがいいっ!」

 差し出された皿の上にはゼリーにはというか、食べ物にすら見えない物体がある。フォークで刺したら「サクッ」なんて音がしそうだ。黒くて透明感が無くてまるで炭のよう。

「これは、何?」

 アリスは恐る恐る効く。見た目からして「ゼリー」じゃないことは確かだ。だってモネは料理がかなり下手なのだから。食べ物とは言いがたいものばかり作る。今頃キッチンは悲惨な状態になっていてコック達が泣いているだろう。

「だから『モネ特製さっぱりゼリー!!』だってばっ!」

 アリスは「モネ特製」が付いている時点で危険物だと思った。

「モネは食べたの?」

 モネがもう毒見済みなら食べてもいいかな。なんて少しだけ思う。

「ううん、食べてないけど。疲れたアリスより先に食べるなんて悪いだろっ!」

 後半怒るようにして言う。アリスは思う……これを食べるとなったら今の数十倍も疲れるだろう、と。肉体的ではなく精神的に。

「いいわよ、モネは頑張って作ってくれたんでしょう?だったらモネが一番に食べるべきよ」

 アリスは自分の危機は逃れられたがモネを殺すような発言をしたことに少し後悔する。あんなのを食べたら本気で死ぬと思う。

「そうか?じゃあ、半分こなっ!」

 モネがフォークで炭(のようなゼリー?)を刺すと中からドロドロとした液体が出てくる。これがオレンジやピンクだったのならまだ良かったものの、その液体は青色だった。青……食欲が失せる色だ。

「あ……」

 モネが一口サイズの物体(炭ですらない)を口に入れた瞬間、アリスは思わず声を漏らしてしまった。

「ん~、美味いっ!」

 アリスの心配とは裏腹にモネは美味しそうにソレを食べる。半分に分けた内の片方が無くなるとお皿をアリスに突き出す。

「はい、アリスも食えよっ……」

 唇を噛み締めるモネを見てアリスは思いついた。ソレを食べずに済む方法を。

「モネ、あたしの分も食べていいわよ?」

「アリス、お前はいい奴だっ!」

 ものすごい勢いでソレに噛み付く。噛みちぎる際に青い液体が口からはみ出すのをアリスは気持ち悪そうに眺めた。


◆◇◆◇◆◇

 その日の夜。アリスはメイドによって、モネが体調を崩したことを知らされた。医者の話によると『モネの体が丈夫だったから良かったものの、そうじゃなかったら命が危なかった』とのことだ。

 アリスは心底、あの危険物を食べなくて良かったと思った。


――――――モネの体力は3日ほどで回復した。しかし後日……

「アリスちゃ~ん、助けてよぉ。モネちゃんが怖いのよ~」

「ファリーヌお姉さま?」

「モネちゃんがね、新作デザートが出来たから食べろって言うのよぉ~」

「体には気をつけた方がいいわよ、頑張って」

「いやぁ~、アリスちゃんが代わりに……」

「イヤよっ!」

読んでくれて、ありがとうございました。たくさんお待たせした上にこんなのになってしまって申し訳ないです。

次回はファリーヌの登場です、よろしくお願いします。

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