ライホウ。
遅くなって本当にごめんなさい。待っていてくれた皆さん、ありがとうございます。お待たせしました。
今回は”ファリーヌ”が登場します!
俺達は屋上で冷たい風に当たりながら待っていた。12時を……
「いよいよ始まったわね」
アリスがしんみりとした空気を打ち破るように言った。そう、12時になったんだ。レジームゲームが始まったんだ。
「アリス。これからどうするんだ?」
「相手が戦いを仕掛けてくるのを待つわ。こっちから仕掛けるなんて馬鹿なまねするわけ無いじゃない」
じゃあ、戦いに備えてればいいんだな。
『ア~リスちゃ~ん♪』
外から甘ったるい声が聞こえた。聞いたことのある声だ。
「ファリーヌの奴、もう来たのね。ソフィア、始末してきて。1人でできるわね?」
始末って……。しかもファリーヌの奴とか言ってるし……。この前は「ファリーヌお姉さま」って言ってたのに。
「ハイ。あんな雑魚、私1人で充分です。全部、いいですか?」
アリスの姉さんのこと、こいつ雑魚とか言ってるし……。
「ええ、全部吸っちゃっていいわ」
「了解です」
そう言ってソフィアは柵を飛び越えてファリーヌの元へ向かった。
「キャー」
ソフィアがいなくなってから数十秒でファリーヌの悲鳴が聞こえた。その直後、ソフィアが屋上に戻ってきた。ぐったりとしたファリーヌを抱えて。
「それは何?」
アリスは不服そうに尋ねる。
「こいつ、戦いに来たのでは無いようでしたので連れてきました」
「そう。で、何かしら?ファリーヌお姉さま」
「今日はアリスちゃんとお話したくって……」
つくづく似てない姉妹だな。
「30字以内で用件を言いなさい」
アリスは国語のテストに良くある問題のような口調で言う。
「アリスちゃんと、手を組もうと思ってお願いしに来たの。」
手を組みに来た?良かったじゃないか、あっちから来てくれるなんてな。
「お断りいたします。ソフィア、吸いたい?」
「ハイ!!」
なんで断った?せっかくのチャンスなのに、もったいねぇ。
「あのね、ちょっとでいいからお話、聞いてくれないかな?」
なんか、弱そうだな。ファリーヌって。本当にアリスの姉さんなのか?
「アリスちゃんの大好きなショートケーキ、あげるからぁ」
食べ物で釣ろうとしてる……。ショートケーキかぁ、俺も食いてぇ。
「あたし、ショートケーキなんて好きじゃないわよ。それに自分の好きなものは皆も好きとかいう考え、いい加減やめたほうがいいわよ」
ショートケーキ好きなのはファリーヌの方だったのか。んにしてもアリス、はっきり言っちゃったな。きっとファリーヌも傷ついたと思うぞ。
「えぇ~、じゃあ何が欲しいの?なんでもあげるよ。レアチーズケーキ?モンブラン?」
傷ついてはなさそうだな。てか、ぜんぶケーキじゃねぇか。でもアリス、レアチーズケーキはもらってもいいんじゃないか?貰って、俺にくれよ~。
「なんでもいいのよね?」
アリスが不気味な笑みを浮かべる。
「うん。アリスちゃんの欲しいものなら、なんでも買ってあげるよ~」
ファリーヌ、敵対心とか無さそうだな。
「じゃあ、ファリーヌお姉さまの命、いただけませんか?」
アリスの方は殺気出しまくりなんだけど……。
「命?それはダメだよぉ。死んじゃったらお話できないもん」
「じゃあ、帰ってください」
「え?アリスちゃんはもっといい子だと思ってたのに。酷いよぉ」
こりゃもう心理戦だな。アリスのほうが強そうだけど。
「酷いのはお姉さまの方です。何でもくれると言っておきながら、ダメだなんて」
アリスは眼に涙をためて言う。きっと、嘘泣きだろ。でもすごいな、女優になれるぞ。
「泣かないで、アリスちゃん。命じゃなかったらなんでもあげるから」
「じゃあ、お姉さまのこのゲームへの参加資格」
ファリーヌのこと、ゲームに参加できなくするっていう魂胆か。
「え?それも無理よぉ」
「2度も嘘をつくなんて……。お姉さまはあたしの事がお嫌いなのね……」
アリスはためていた涙を流し始め、顔を手で覆って「酷いわ」って震える声で言う。こんな演技、できる奴なんてそういないぞ。
「アリスちゃん、ごめんね。ショートケーキ100個でどう?私の命よりも価値はあるわよ」
ファリーヌ、自分の命はショートケーキ100個以下の価値だって言ってるし。どんだけ好きなんだよ。
「そうですか。じゃあ仕方ないわね」
アリスはてっきり諦めたんだと思った。
「ショートケーキを1000個あげますから、命をくれませんか?お姉さま」
アリスも、食べ物で釣りに入ったか。
「100個じゃなくて1000個もくれるの?お医者様に止められて自分の家では食べれなかったのよ……。うわぁ、どうしようかしら?」
ファリーヌ……ケーキで心動かされんなよ。まあ、そのほうがこっち的には嬉しいんだけど。
「お姉さま。レアチーズケーキも、モンブランも1000個ずつあげるわ。これでどうかしら?」
アリス、太っ腹だな。やっぱ金持ちはすげぇ。
「本当なの?アリスちゃん!ケーキ、ちょうだい!」
マジかよ。ケーキのために死ぬなんて悲しすぎだろ。
「じゃあ、命はもらっていいのね?」
「やっぱり、ダメ。歯医者さんに怒られちゃうもん」
そういう問題っすか……。
「そう。じゃあ、帰ってください。あと、1つお願いしていいかしら?」
「うん!」
また、命とか参加資格とかって言うんだろうな。
「あたしを敵に回さないで下さいね、ファリーヌお姉さま」
「うん!約束する」
そう言って黒ずくめの来訪客は姿を消した。
「ふぅ、これで敵はあと4人ね」
「ああ。頑張ろうな」
なんか、このゲーム勝てそうな気がしてきた。
読んでいただき、ありがとうございました。ゲームスタートとか言っておきながらなんか、すみません。そのうち、きっと戦います。少々お待ち下さい。
次回もよろしくお願いします。