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俺、下僕です。  作者: 猫宮 胡桃
10/26

ソフィア

遅くなってごめんなさい。

今回は息抜きのようなものですが、楽しんでいただけると嬉しいです。

「僕は結構強いんですよね」

 グリーンは胸をはる。

「あんな水鉄砲みたいな体でよく言うぜ」

 レッドがため息混じりに言う。

「失礼ですね、貴方はかなり弱いくせに」

「んだと、こら」

「威勢だけはいいようですね」



「下僕、こいつらウザいです。どうにかしてください」

 ソフィア、かなりイライラした口調だ。でも、どうにかしろって言われてもな。

「どうすればいいんだ?」

「封印でもしてやってください」

 封印?

「主人、僕は勘弁して欲しいですね」

あるじ、俺はやめろよ」

「聞き捨てなりませんね」

「なんだと?」

 ああ、たしかにウザいな。こいつら。

「『眠れ、○○』って言えばいいんです!早くしてくださいよ」

 こりゃ、かなり怒ってるな。女って怖い。いや、ヴァンパイアだから怖いのかもな……。

「眠れ、グリーン」

 ひとまず、このインテリ野朗から。

「はは、ざまあみろってんだ」

 このヤンキーっぽいのも。

「眠れ、レッド」

 2人は倒れるようにして目を閉ざした。これ、封印っていうより催眠術に近くないか?

「俺さ、いつの間にこんなことできる様になったんだ?」

「妖怪と契約を交わすことによって、それを操るのに必要な力くらいは与えられるのよ」

 アリスが教えてくれた。とりあえず、こいつらくらいは操れるってことか。俺、すげーじゃん。

「でさ、こいつらどうすればいい?」

 俺は熟睡状態のグリーン達を片手に尋ねる。持ち歩きに不便だ。

「ポケットにでも詰めといてくださいよ」

 ポケット?かなり無理があるぞ。仮に入ったとしてもこいつらが可哀想な気がする。

「ソフィア、どうしたんだ?」

 そんなにイライラして。なんかあったのか?

「食料を目の前にして落ち着いてられる訳ないじゃない。ソフィアは妖精の生き血が大好きだから、仕方ないのよ」

 は?だってあいつ、「妖精の血はまずい」って言ってたじゃんか。

「アリス、ソフィアは妖精の血なんて嫌いだぞ」

「ソフィアはね、あんたの武器候補を弱らせちゃいけないと思って嘘をついたんでしょう。そんなことも分からないの?」

 俺のために、ついた嘘か……ありがとう、ソフィア。

 俺だって、目の前にレアチーズケーキを2つも置かれて、しかも「食べるな」なんて言われたらそりゃめちゃくちゃ怒るだろう。てか、無理かもしれない。

 でもこれからは俺、この妖精達と一緒にいないといけない訳だし……。ソフィアをかなり苦しめることになるよな。せめて、血に似たものでもあげられたらいいんだけどな。トマトジュースとか……。あ、そうしたらいいじゃんか。でも、魔界ここってトマトあるのか?

「アリス、トマトって野菜知ってるか?」

「ええ。それがどうしたの?」

 知ってるんだ。へぇ、意外。

「ここにある?」

「人間界から輸入したものが厨房にあるわよ」

 人間界と貿易してるのか?一応、つながり有ったんだな。じゃあ、もらって作ろう。

「少し分けてくれない?」

「いいけど」

 俺は厨房目指して全力疾走。いくら長い階段でも、下りなら楽だ。

「失礼しますっ!トマト、下さい」

 俺は厨房に駆け込む。

 ひげ面のおっさん(コック)は戸惑いながらもトマトを渡してくれた。

「おっさん、これでジュース作って!」

「どうやって作るんですか?」

 コックなら知ってんじゃねぇの。俺だって知らねぇよ。

「適当にミキサーとかでやってよ」

「ああ。細かく切り刻めばいいんですね」

 切り刻む?かなり細かくしないとジュースにはならないと思うけど。コックならそんくらい分かってるよな。

「まあ、よろしく」

「風よ、我が力となれ。ハッ!」

 おっさんがトマトに手をかざすと、空中でトマトがジュースと化した。見えないなにかにものすごい速さで切られたような感じだった。そのジュースは置いてあったビンにうまく流し込まれた。

 つかおっさん何者だよ!?

「おっさん、何なの?」

「わたしは風使いです。包丁が無くても物が切れますので便利ですよ」

 便利ってか、なんか怖くないか?凶器じゃんか、その力。

「ふーん、じゃ、これありがとうな」

 俺はジュースを持って屋上へ向かう。キツイ、登りはやっぱりキツイ。厨房が53階だったのが不幸中の幸いだな。

「ソフィアー、これ」

 肩で息をしながら、ビンを渡す。

「なんですか?これ」

「トマトジュース!」

「なんか、生き血に似てますね」

 だろ?さあ、飲んでくれ。

「妖精の血の、代わりに、飲んで」

「でも、わたし生き血以外は口にしたことが無くて。アリス様、飲んでも大丈夫でしょうか?」

 なんか、毒薬みたいなあつかいされてるんだけど。

「せっかくジルが貴方のために作ってくれたんだもの。飲んであげてもいいんじゃないかしら?」

 まあ、正確には「俺が作った」じゃなくて「俺が作らせた」だけどな。

「じゃあ、いただきます」

 ビンの蓋を開けて飲み始めるが、長い犬歯が邪魔して飲みにくそうだった。それにしても、すごいスピードだ。まずくは無いってことだよな?良かった~。

 1リットルくらいはあったんじゃないかというほどのトマトジュースはもう無くなっていた。

「すごいです、ジル。妖精の生き血と同じ味です!これなら本物の生き血じゃなくてもいいです」

 妖精の生き血とトマトジュースが同じ味?不思議なんだけど……。でも、喜んでもらえたなら良かった。それに、初めて「下僕」じゃなくて「ジル」って呼んでくれたしな。

「ジル。ソフィアにあんな嬉しそうな顔させるなんて、ちょっとすごいわね。あの子の嬉しそうな顔、久々に見たわ。ありがと」

 嬉しそうな顔なら、牢獄に行けばいつでも見れると思うんだけど。

「俺、褒められたのか?」

 アリスに褒められるなんて珍しい。なんか嬉しいな。

「ちょっとよ。ほんのちょっとだけだから」

 アリスはそっぽを向いた。

「ありがとうな、アリス」

「は?何よ、いきなり。下僕に感謝されたって嬉しくなんか無いんだから」

 このツンデレ姫、扱いにくい……。


 でも、こんな平和な時間がずっと続いてほしい。そう思った。

読んでいただき、ありがとうございました。次回は、いよいよレジームゲームがスタートします。よろしくお願いしいます。

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