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まだかなり痛む頭を抱えながらアパートに戻った大輔は、早速二日酔いと胃のクスリを飲んで、二度寝の準備をした。
さていざ布団に入ろうという時、さっきの薬局でもらった包みを開けて、大輔はもう一度考え直した。
-いくら何でも話がうますぎるよなぁ… そんなクスリが本当にあって、しかもそれがタダだなんて…-
いつもだったらもっと疑ってかかるのだが、二日酔いで頭が痛い今とあっては、そこまで深く考える事ができなかった。
-まぁ、いいや。 クスリ屋が渡してくれたんだから、毒って事はないだろう-
大輔はそう自分に言い聞かせて、パラフィン紙の中からクスリを一粒取ると、水と一緒に飲み下した。
布団に入って横になると、いろいろと下らない考えがつぎつぎに頭に浮かぶ。
-はぁ… こんな時、誰かが見舞いにでも来てくれたら最高なんだけどなぁ…-
-『大輔君、気分はどう?』 なんちゃって…-
そんな事ばかり考えているうちに、気のせいかクスリのせいか、ゆっくりと眠気が襲ってきた。
しばらくして、大輔は何度もなる玄関のチャイムに目を覚まされた。
枕元に置いてある目覚ましを見ると、さっき横になった時から30分くらい経っていた。
大輔は体を起こして、玄関の鍵を開けに行った。
二日酔いのクスリが効いてきたのか、さっきほどは頭が痛くない。
「うぁーい」と寝ぼけた声で言いながら鍵を開けてドアを開けると、そこには意外な人が立っていた。
「こんにちは…」
由香はそういうと、薬局の袋を差し出して、
「ほら、昨日あんなに飲んだでしょ? 大丈夫かなぁ、って思って、お見舞いに来たの」
「…え…あ…」
あまりに意外な来客に、大輔が言葉を詰まらせていると、
「もしかして、余計なお世話だったかしら?」
と、由香が少し申し訳なさそうな口調で言った。
大輔は両手を大きく振りながら、
「そそ、そんな事ないよ! いやあの、えっと…わざわざお見舞いに来てくれるなんて思ってもいなかったから…」
と、少ししどろもどろになりながら答えた。
その言葉を聞いて、由香は、
「そう… よかったぁ。 余計なまねして怒られるかと思っちゃった」
と、安心した口調で言って、にこっと微笑んだ。
大輔はその仕草にさらにどきどきして、
「怒るだなんてとんでもない。 さ、いつまでも立ちっぱなしなのもなんだから、中に入ってよ。 散らかってるけど」
と、普段からは考えられないほど大胆に、大輔は由香を中に招き入れようとした。
ところがまだ二日酔いが完全に治っていなかったのか、ドアに手を延ばした瞬間、くらくらっと激しいめまいに襲われた。
-まずい! 倒れる!-
大輔がそう思った瞬間、目の前にはドアが迫っていた。
思わず大輔は強く目をつぶった。
「…っ!!」
しかしいつまで経ってもドアにぶつかる気配がないので、大輔は不思議に思ってゆっくりと目を開けた。
すると目の前にあるべきはずのドアはなく、目の前、というか視線の先には、もう随分と見慣れた天井があった。
「???」
大輔は何が起こったのか解らずに、まわりをきょろきょろと見回してみた。
するとつい今までいたはずの由香の姿もなく、大輔は布団の上に横になっていた。
枕元に置いてある目覚ましを見ると、さっき横になった時から10分しか経っていなかった。
-もしかして、夢、だったのか?-
この時になってやっと、大輔は事情が飲み込めてきた。
-それにしても、夢にしては随分リアルだったなぁ-
今までこんなリアルな夢を見た事がなかった分、大輔はなおさら感心した。
それと同時に、どうしてここまでリアルな夢が見られたのかを考えてみた。
思い当たるフシは一つしかなかった。
-さっき薬局でもらったクスリだ-
半信半疑で飲んだのにこれだけの効き目。
大輔は改めてその効き目に驚いた。
「うーん、すごい効き目だ…」
思わず口に出してしまった。
-後であの薬局に行って、主人にお礼を言わなくちゃ…-
大輔はそう考えると、三度寝に入った。




