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22/27

上位連合


朝、エレベーターの扉は誰に対しても同じ速さで閉まった。


乗り遅れそうな人間にも。

昨日の続きをまだ背負っている人間にも。

今日で何かが終わるかもしれない人間にも。


同じ速さで開き、同じ速さで閉まる。

機械の公平さは、人間には少し冷たい。

でも、冷たいものの方が信用できる朝もある。


今日はそういう朝だった。


相沢悠は、その扉の前で一瞬だけ立ち止まった。


昨夜は、草原ではない場所で眠れた。

訓練場跡。

草原の八割くらいの眠りだった。


完璧ではない。

でも、眠れた。


それだけで、朝の世界に少しだけ輪郭が戻っている。

目の奥の重さが、いつもより半音だけ低い。

肩の芯に沈んでいた鉛も、全部ではないが少しだけ薄い。


それでも、不安は残っていた。


今夜もあそこで眠れるのか。

草原が封鎖されたままなら、次の寝床はどこになるのか。


寝ること自体は身体がやってくれる。

でも、「どこで寝るか」を毎日考えるのは頭の仕事だ。

頭の仕事は、寝ても回復しない。


席に座る。

モニターを点ける。

鬼塚のチャットが点滅していた。


「念のため、昨日の件。代替案の粒度を揃えて」

「あと、先方向けにもう少し安心感ある言い方で」

「今日の会議前まで」


代替案。

安心感。

会議前まで。


全部、こちらの夜を削るための丁寧語だった。


「了解しました」


打つ。送る。


最近はもう、削れるというより欠ける。

陶器の縁が小さく欠けるみたいに。

まだ使える。

使えるから、また使われる。

使われるから、また欠ける。


午前中、数字を整える。

文言を丸める。

不安を見せないための文章を作る。


会議前、コピー機の前で資料を揃えていた時、横から声がした。


「相沢」


振り向く。


一条美奈だった。

仕事の服。社員証。現実の顔。


でも目だけは、ゲームの中と同じだった。

怒っている目。

心配している目。

その二つが同時にある目。


美奈は、紙ではなく悠の顔を見た。


「今日、顔ひどい」


「最近いつも言ってません?」


「今日は言い方をやわらかくした方」


少しだけ、口の端が動いた。

笑う形を、筋肉が思い出しかけたみたいな動きだった。


美奈は小さなゼリー飲料を差し出した。


「これ」


「……ありがとうございます」


「昼、ちゃんと入れて。あと、今日、早く帰って」


悠は少しだけ黙った。


「帰れたら、ですけど」


「帰るの」


低い声だった。

でも命令じゃない。

同じ高さにいる人間が、同じ高さのまま言う声だった。


「寝床、安定してないんでしょ」


喉の奥が、少しだけ詰まった。


寝床。

ゲームの中の言葉なのに、現実の廊下で聞くと別の意味になる。

帰る場所の話みたいだった。


「……はい」


それしか言えなかった。


美奈は何かを言いかけて、やめた。

現実で言いすぎると、ゲームの中の線が壊れる。

でもその線も、もうだいぶ薄くなっている。


最後に一言だけ残した。


「今夜、無理しないで」


悠は頷いた。


心の中では、別の答えが出ていた。


――無理しないと、眠れない。


---


夕方、ログインして初期村へ入った瞬間、空気が違った。


草原封鎖の騒ぎとは別の熱だった。

もっと人間くさい熱。

怒りと正論と不安が混ざった、会議室みたいな熱。


広場の中央では、人だかりが二つに割れていた。

一つは掲示板の前。

もう一つは露店通りの角。


掲示板の方から、硬い声が飛ぶ。


「だから危険なんだって!」

「危険でも、前よりマシになってる場所はあるだろ!」

「それを私設でやるのが問題なんだよ!」

「じゃあ公式がやれよ!」


声が交差する。

怒鳴り合いではない。

まだ理屈の顔をしている言い争いだった。


理屈の顔をした争いは長い。

感情の喧嘩は疲れれば止まる。

理屈の喧嘩は、正義の数だけ長引く。


悠は足を止めた。


「……何ですか、これ」


すぐ横に来たMINAが、疲れた顔で息を吐いた。


「分断」


「何が」


「プレイヤー」


MINAは掲示板を顎で示した。


「“闇ギルドは危険だから切るべき”派と、“でも草原周辺の治安は前より良くなった”派」


木の掲示板には、新しい告知が貼られていた。


```

【対ECLIPSE対応協議会 発足】

参加ギルド:

REGALIA 他 上位有志ギルド

目的:

・草原周辺異常現象の監視

・ECLIPSEの私設支配拡大への対処

・第二次共同対応の準備

```


「……協議会」


「建前」

MINAは即答した。

「実質、上位連合」


上位連合。


その四文字だけで、広場の意味が変わる。

個人の反発じゃない。

一部ギルドの苛立ちでもない。


まとまる側が、まとまり始めた。


別の場所から、また声が上がる。


「でもRMT農場潰したのECLIPSE側だろ!」

「市場の談合崩したのもそうじゃん!」

「危険なのは分かるけど、恩恵受けてるやつもいるって!」


反対側から別の声。


「だからって認めるのかよ!」

「草原の周りで勝手に法を作ってる集団だぞ!」

「次は宿場も流通も握る気だろ!」


悠は、そのやり取りを聞きながら少しだけ気分が悪くなった。


どっちも分かる。

分かるから削られる。


正しいこと同士がぶつかると、間にいる人間だけが潰れる。


今の自分は、その間にいる側だった。


---


草原へ向かおうとして、足が止まった。


見えない壁は、今日もそこにあった。


画面の端に白い線。

足元には、昨日と同じ表示。


```

Special Event Control Area

Access Restricted

Alternative Rest Facility Available

```


「……今日もだめですか」


「だめ」

MINAは短く言った。

「草原本体はまだ箱の中」


「じゃあ、今日はどこに」


そこが、今夜いちばん怖いところだった。


草原に入れないことより、

今夜どこで眠れるか分からないことの方が怖い。


MINAは少しだけ間を置いた。


「訓練場跡はまだ残ってる。でも昨日ほど安定してない」


「安定してない」


「“寝られる”条件が揺れてる。場所じゃなくて、条件だけが残り始めてる」


悠は少しだけ口を開いて、それから変な言葉を選んだ。


「……寝床ガチャってことですか」


言ってから、自分でも少しだけ嫌になった。

でも嫌なものを軽い言葉で包まないと、持てなかった。


「笑えないけど、ほぼそう」


MINAの返しが正確すぎて、余計に嫌だった。


---


同じ頃、中継都市の会議場では、もっと静かな空気で同じ話が進んでいた。


長机。

白銀の旗。

整った沈黙。


《REGALIA》のASTERが中央に立っている。

JUDGEはその少し後ろ。

物流ギルド、製作系ギルド、護衛専門の上位勢が並ぶ。


ここには怒鳴り声はない。

ない代わりに、言葉の一つ一つが重い。


JUDGEが口を開く。


「確認しておきたい。我々が問題にしているのは、“強さ”そのものではない」


視線が集まる。


「問題は、私設の秩序が生まれ始めていることだ。治安、流通、寝床、境界、裁定。本来はバラバラであるはずのものが、ECLIPSEの名の下で束ねられつつある」


別のギルドマスターが言う。


「だが、草原周辺のPKは減った。BOT農場も消えた。談合も崩れた。一般プレイヤーから見れば、“怖いが便利”になっている」


JUDGEは一歩も引かなかった。


「だから危険なんだ」


静かな声だった。

だが、その静けさの中に支配の意志があった。


「私設の正義ほど危険なものはない。便利だから認める。役に立つから黙る。その積み重ねの先にあるのは、秩序ではなく依存だ」


会議場の空気が少しだけ冷えた。


自分たちが今やろうとしていることも、私設だ。

協議会という名の連合も、公式ではない。

ECLIPSEと同じ構造を、逆側から作ろうとしている。


その矛盾に、JUDGEが気づいていないはずがなかった。

気づいた上で、押し通す。

必要だからだ。


ASTERが低く言う。


「魔王そのものより、魔王に適応した人間たちの方が問題になり始めている」


短い一言だった。

だが、それで会議の重心が決まった。


危険なのは夜だけじゃない。

夜の周りに、役割と正当性が生まれ始めている。


「よって」

JUDGEが言う。

「本日をもって、対ECLIPSE上位連合を組織する。名目は共同監視。実態は共同対応。必要なら公式とも連携する」


誰も拍手はしなかった。


祝いではなかった。

覚悟の確認だった。


ASTERだけが最後まで机上の地図を見ていた。


草原。

訓練場跡。

宿屋裏。

水車小屋横。


聖域が増えている。


一つを包囲するのは簡単だ。

四つになると面倒になる。

十になれば戦争になる。

そして増え方に歯止めがないなら、どこまで増えるか分からない。


「遅かったな」


誰にも聞こえないくらい小さく、そう言った。


---


初期村では、その「上位連合」の話が、もう別の形で広がっていた。


広場。露店通り。鍛冶屋前。掲示板の裏。

どこでも同じ話をしている。

同じ話なのに、同じ結論には辿り着かない。


「上位連合って、結局また討伐でしょ?」

「でも今の草原放置もやばい」

「ECLIPSEいるから初心者狩り減ったじゃん」

「減ったけど、その代わり境界の中はあいつらの顔色だろ」


分断はきれいに二つには割れない。

三つにも四つにも割れる。


怖いけど便利派。

便利だけど危険派。

危険だから潰せ派。

怖いからもう見たくない派。


SABLEがその流れを見ていた。


「綺麗に割れてるね」


声は平坦だった。

でもその平坦さの下で、頭が高速に回っているのが分かる。


「対立軸がはっきりした。もう怪談じゃない。政治になった」


MUSEが顔をしかめる。


「最悪な言い方」


「でも正確」


LEDGERは別の画面を見ていた。


「連合ができると物流が変わる。護衛対象が増える。倉庫の位置も変わる。街道の価値も変わる」


MINAが小さく言う。


「また構造か」


「もう、そこしか壊れていないので」


LEDGERの返答は平坦だった。

平坦なのに、恐ろしく正確だった。


---


悠は訓練場跡へ向かった。


昨日眠れた場所。

草原ではないけれど、草原に一番近かった場所。


着いて、少しだけ安心しかけた。

でも、その安心は長く続かなかった。


昨日は立った瞬間に身体が少し軽くなった。

今日は違う。


軽くならない。

重さが残っている。


風はある。

匂いも少し近い。

でも、昨日ほど沈める感じがない。


「……今日、昨日より遠いです」


MINAが眉を寄せる。


「やっぱり」


「何が」


「場所が固定じゃない。条件だけが残って、場所は揺れてる」


条件だけが残る。

それはつまり、聖域が「土地」ではなくなり始めているということだ。


悠は少し俯いた。


「……寝る前に、寝床探すのしんどいです」


今までで一番小さい弱音だった。

でも、たぶん一番本音だった。


PKより。

公式討伐より。

パッチより。

市場崩壊より。


今いちばんしんどいのは、「今夜どこで寝るか」を毎日探さなきゃいけないことだった。


MINAの顔が少しだけ変わった。

怒りでも焦りでもない。

もっと静かな何かだった。


「そっか」


その言葉が、やけに柔らかかった。


「じゃあ今日は、探すの手伝う。ちゃんと眠れる場所が見つかるまで」


悠は返事をする前に、少しだけ驚いた。

手伝う。

その言葉が、今はやけに真っ直ぐに聞こえた。


「……ありがとうございます」


言ったあと、少しだけ引っかかった。

最近、自分はこの人に礼ばかり言っている。


MINAは少しだけ視線を逸らした。


「借りとかにしなくていいから」


読まれた気がした。

たぶん気のせいではなかった。


---


その頃、ECLIPSEの側でも、主人公不在の会議が進んでいた。


村外れの閉じた倉庫。

帳簿。地図。箱。

昨日までの「草原周辺を守る」から、今日は一段変わっている。


VARGAが地図に線を引く。


「守る場所が増えた。なら線も増える。草原本体、訓練場跡、宿屋裏、水車横。全部を守るのは無理だ。優先順位を決める」


LEDGERが帳簿を開く。


「物資を一点集中から分散へ切り替えます。倉庫も、献上品も、食料も、寝具も。草原一箇所前提では回りません」


MUSEが頭を抱える。


「待って、つまり広報も全部書き換え? “聖域”が一個前提で説明してたのに?」


SABLEが即答する。


「書き換え。外ではもう“増殖する寝床”で認識されてる。こっちも前提を変えないと遅れる」


ORACLEだけが、少し違う言葉を使っていた。


「神は閉じ込められなかった。ならば我々は、広がる御座所を守るだけです」


MUSEが半分本気で言う。


「御座所って言い方やめろ」


ORACLEは少しも気にしなかった。


「言葉は器です」


「その器が重いんだって!」


場違いな口喧嘩だった。

でも、その場違いさが逆に、組織が本当に回り始めていることを示していた。


VARGAが短く言う。


「上位連合、今夜は動かない」


LEDGERが視線を上げる。


「なぜ」


「集めてる最中だ。今夜は来ない。来るなら次だ」


短い分析だった。

だが、その短さの中に戦争屋の確信があった。


「だから今夜は――」


そこで言葉を切る。

切った先を、ORACLEが継いだ。


「こちらが整える夜です」


---


訓練場跡では、悠が結局そこへ横になることになった。


昨日より条件は悪い。

でも他よりましだった。


草は薄い。

風は少し遠い。

村の音も、まだ完全には消えない。


完璧じゃない。

でも、今日の身体には完璧を探す力がもうなかった。


画面を開く。


```text

SLEEP MODE (Beta)

Alternate Sanctuary detected.

Proceed? [Y/N]

```


少しだけ迷う。


迷う理由は、怖さではなかった。

不安定さだった。


ここは明日もあるのか。

次の夜も、同じ条件で眠れるのか。


「……毎日、変わるんですかね」


小さく言う。


MINAが三歩先で答える。


「たぶん」


少し間を置いてから続けた。


「でも、変わるなら追う。私は」


短い。

でも、今までで一番まっすぐだった。


悠は少しだけ目を閉じる力が抜けた。

安心したからではない。

一人じゃないと分かったからだ。


「……それ、かなり助かります」


MINAは返事をしなかった。

でも、少しだけ肩の力が抜けたのが見えた。


Yを押す。


```text

Resting...

```


横になる。


草原じゃない。

でも、昨日ほどではないにせよ、沈める。


身体が重い。

重いから落ちる。


今日は重力が味方だった。


---


夜。


今夜の不穏さは、破壊ではなかった。


静かすぎた。


誰も消えない。

誰も壊れない。

OBSERVERも落ちない。

戦闘ログも出ない。


それなのに、世界の方が変わっていく。


SABLEが最初に気づいた。


「……何か来てる」


画面を見ている。

掲示板ではない。地図だ。


初期村周辺の地図の下を、細い線が走っていく。

見えない線だ。地図上にだけ反応がある。


一本ではない。

何本も。

根のように。血管のように。


その線が、別の聖域へ向かっている。


宿屋裏。

水車小屋横。

村外れの畑。

封鎖された草原本体。


離れた点だったはずのものが、夜の中では一本ずつ繋がっていく。


「……繋がってる」


SABLEの声が少しだけ変わった。

平坦さの中に、薄い緊張が混じる。


MUSEが息を止める。


「何が」


「寝床。点じゃない。ネットワークだ」


VARGAが地図を見る。

訓練場跡から伸びる、見えない線。

その先にあるのは、全部「守る場所」だ。


VARGAは低く吐いた。


「……戦争準備だな」


その一言で、今夜の意味が決まった。


NOXは今夜、誰も消していない。

誰も壊していない。

代わりに、別のことをしていた。


夜の方が、先に戦場を整えている。


退路。

補給路。

監視点。

呼び寄せるための道。


守るための線に見えて、同時に「迎えるための線」にも見えた。

その二重性が、今夜はいちばん嫌だった。


ORACLEは静かに言う。


「来たるべき夜に備えている」


MINAが低く返す。


「備えてるのはこっちだけじゃないってことか」


その通りだった。


上位連合が生まれた夜に。

夜の方も、戦争の準備を始めた。


こちらが人を集めている間に、向こうは地面の下に道を敷いた。


誰も斬らない。

誰も消えない。

それなのに、今夜はこれまでで一番不穏だった。


静かな夜ほど、準備の音がよく聞こえる。

今夜の静けさは嵐の前ではない。

もっと計画的な静けさだった。


---


朝。


悠はまた目を開けた。


「……おはようございます」


昨日と同じ声だった。

少しだけ掠れて、少しだけ楽な声。


MINAはその三歩先にいた。

目が赤い。

でも昨夜の赤は、恐怖だけではなかった。

理解の色が混じっていた。


「おはよう」


短く返してから、地面を見る。


訓練場跡には、昨夜なかった細い筋が残っていた。

草の下を、何かが通った跡。

地面の表示が、ほんの少しだけ深くなっている。


悠もそれに気づいた。


「……昨日、こんなのありましたっけ」


「なかった」


「何ですか、これ」


MINAは少しだけ黙って、それから正確な方の言葉を選んだ。


「たぶん、道」


「道」


「寝床同士を繋ぐ道」


悠はその意味をすぐには飲み込めなかった。

でも一つだけ分かった。


封鎖して終わる段階は、もう過ぎた。


寝床は一つじゃない。

しかも、ただ増えるだけじゃない。

繋がり始めている。


点が線になる。

線が面になる。


それはもう、場所の話じゃない。

勢力圏の話だった。


村の方からMUSEの声が飛んでくる。


「上位連合、参加表明また増えた! しかも“次は公式も全力”って流れになってる!」


SABLEが続ける。


「一般プレイヤー側も割れたまま。“危険だから潰せ”派と、“でも治安は良くなった”派で、もう完全に二極」


LEDGERはもっと冷たい声で言った。


「戦争になります。今度は局地では済みません」


悠はその言葉を聞いて、少しだけ遠くを見る。


草原はまだ封鎖されている。

でもその外側で、寝床は増えた。

さらに昨夜、それらは繋がった。


「……また、イベントですかね」


小さく言う。


MINAはそれを聞いて、少しだけ笑いそうになって、やめた。


「イベントって規模じゃなくなってきた」


その返しが妙に真っ直ぐで、かえって怖かった。


イベントには終わりがある。

でも今起きていることには、まだ終わりが見えない。


---


NEOSPHERE ONLINE 匿名掲示板:初心者草原総合 Part 54


`901:` 上位連合できたってマジ?

`904:` マジ。REGALIA主導で対ECLIPSEの共同対応

`908:` とうとう来たか

`912:` でも一般プレイヤー側、けっこう割れてるぞ

`916:` そりゃ草原周辺の治安だけ見たら前よりマシだし

`920:` でも私設支配は普通にやばいだろ

`924:` 封鎖したのに寝床増えた時点で、もう普通の対処じゃないんだわ

`928:` しかも今度は寝床同士が繋がってるらしい

`932:` は?

`936:` 訓練場跡から宿屋裏まで、地面に変な筋出てる

`940:` それもう戦争の補給路では

`944:` やめろ

`948:` 上位連合:参加者一万突破って流れてる

`952:` 一万で足りる?

`956:` 足りるわけないだろ

`960:` 次は公式も全力って話だし、もう第二次討伐前提じゃん

`964:` でも寝てる初心者は今日も普通に起きたんだろ?

`968:` そこがいちばん意味わからん

`972:` 昼の初心者、夜のNOX、外縁のECLIPSE、対抗する上位連合

`976:` 勢力図できすぎだろこの初心者エリア

`980:` 初心者エリアとは

`984:` でも正直、次は見たい

`988:` 見たいけど怖い

`992:` 怖いけどスレ閉じられない

`996:` それもう戦争前の空気なんだよ


---


訓練場跡の朝に、悠は立っている。


草原ではない場所で眠れた。

でも、その寝床は昨日と同じではなかった。

その周りで、世界の方がまた一段進んでいた。


上位連合ができた。

プレイヤーは割れた。

寝床は増えた。

さらに、繋がった。


守る側も。

攻める側も。

まだ誰も開戦とは言っていない。


それでも、空気はもう知っていた。


次は、準備の段階じゃ済まない。


MINAは地面の細い筋を見下ろしていた。

寝床同士を結ぶ、夜の道を。


昨夜は静かだった。

静かすぎた。


静かな夜ほど、次に来るものは大きい。


悠はその意味の半分も分からないまま、ただ一つだけ思った。


今夜、ちゃんと眠れるだろうか。


その問いだけが、本人にとってはいちばん切実で、

世界にとってはいちばん危険だった。


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