コップの中
今日も朝から彼女はあたりをきょろきょろと見渡しながら歩いていた。
理由は何度聞いてもはぐらかされてしまう、相手に合わせて強く聞けない私も悪いので気にはしないようにしているのだが毎回彼女の行動は気になり、私が守らないといけないと強く思うようになっていた。
家に閉じこもっているのは身体に良くないと引っ張り出したは良かったが、いつにもましておびえている様子だった。
「暑いしどこか寄ろうか」
「……」
「何か喫茶店とかでいい?」
「…ウン」
私たちは近くの飲食店に入っていった。
店内は落ち着きすぎている雰囲気だったが、熱すぎる外に比べればこちらの方が心地いいかもしれない。私たちの来店を見るなりぶっきらぼうな店員が水だけ出して定位置である場所に戻っていった。彼女は店員に渡されたコップをひたすら見ていた。
「交換しよう」
そういうと彼女は私にコップを渡してきた。
「なんで?」
「ダメなの?」
彼女は少しイラついたように聞いてきた。
「いいよ。」
いつもの奇行に付き合っているわけにも行かず、私は渡された水を一気に飲み干した。
「あ」
彼女は絶望したような顔で私を見た。
「なに?」
「いや、大丈夫?」
その返事にイラついて私は追い詰めるように言った。
「気持ち悪いんだけど。何なの?」
「私、ミエるんだ」
「みえる?なに?はっきり言ってよ!」
「私、霊がミエるんだ。なんでかわからないけど。それで……」
「それで?なに?」
わけのわからない話をされて私はイラつきながら聞いた。
「さっきコップの中につよい霊がいてそれで飲めなかったんだ、飲んでほしいとかじゃなく飲んだら乗り移られそうで交換したかったんだけど……」
「何?私が悪いの?」
「そうじゃないんだけど」
「そうとしか聞こえないんだけど」
私は腹を立ててコップを床に叩きつけた。彼女のおびえる顔を見ていささか爽快だった。




