表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/14

第十四話

 ダンジョンから帰ってきた俺はエリッサを独占するべきだと、心の底から思った。


 彼女の血肉を味わい、膨大な魔法知識を吸収し、さらなる進化を遂げる。これが俺の根本的な願望だった。

 エリッサという唯一無二の人物を殺害し、血肉を食べて、その魔法と知識を得るべきなのは明らかに俺だけだからだ。


 ダンジョンで彼女が危険にさらされた時、俺は反射的に彼女を守った。その時の感情は、強烈なものだった。


 俺が力を得るために捕食するための対象を守るための愛情。

 そう、これは間違いなく愛情に到達していた。

 エリッサを完全に自分のものにしたいという純粋な願望。他の誰にも渡したくないという独占欲。そして、そのために彼女を捕食するためだけに保護し続けるという行動。

 これらすべてが統合されて、この今の状況下において、俺の感情となっているのだ。


 一般的な人間の愛情とは異なるかもしれないが、俺にとってはこれが最も自然で合理的な愛情の形である。

 俺はこの感情変化について、何の疑問も抱かない。極めて論理的で当然の過程だった。


 この確信により、これからの俺の行動指針は明確になった。


 エリッサを他の誰からも守り、彼女の安全を確保し、彼女を完全に俺の支配下に置いて、捕食するべき時を待つのだ。


 そして、この愛情を彼女に伝える必要がある。

 なぜなら、俺の感情変化を理解してもらい、俺の愛情を受け入れてもらったほうが、保護しやすい。


 翌朝、エリッサが俺の部屋を訪れた時、俺は自分の変化について語ることを決めた。


「おはようございます、タカシ。昨日のダンジョン探索の件で、お話ししたいことがあります。」


 エリッサが微笑みながら言った。


『俺も話したいことがある。』


 俺はテレパシーで応答した。


「それは興味深いですね。ぜひ詳しく聞かせてください。」


 エリッサが研究者らしい興味を示した。


 俺は自分の論理的思考過程と、その結論について説明を始めた。


『俺は君を捕食したいという欲求を持っている。だから、君を捕食するために君に害なすものをすべて攻撃する、君を保護するということだ。』

「なるほど。それは矛盾していませんか?」


 エリッサが冷静に分析した。


『矛盾ではない。論理的な帰結だ。』


 俺は自分の結論を伝えた。


『君をほかの存在に捕食されないようにする。それだけのことだ。』


 エリッサの表情に変化が現れた。驚きではなく、深い理解の光だった。


「つまり、あなたの愛情表現ということですね。」


 彼女がそう言った時、俺は安堵した。


 エリッサは俺の感情を正しく理解してくれた。これが愛情であることを認識してくれた。


『そうだ。俺の愛情だ。』


 俺は確信を持って答えた。


「変わった恋の告白ですね。」


 エリッサは口でこそ、そうはいっていたが、特に嫌がる様子はなかった。

 彼女は俺をじっと見つめた。


「なるほど、これはまたすごい存在から愛されましたね。えへへ。」


 彼女は恐怖や嫌悪感を示すことなく、むしろ知的好奇心に満ちた表情で俺を見つめていた。

 彼女は俺の異常な愛情を、恋の告白として受け取ってくれた。その独特さに魅力を感じているようにすら見える。


「あなたの感情の変化は、学術的にも非常に興味深い現象です。」


 エリッサが研究者らしい興奮を込めて語った。


「捕食欲が保護欲に転化し、最終的に独占欲として統合される。これは愛情の新たな形態と言えるかもしれません。」

『君は俺の感情を理解するのか?』

「いいえ、正直、分かりかねますが。その愛情の表現方法に正解や不正解はありません。あなたのそれも、一つの選択肢として十分に価値があります。」


 そういう彼女は満更でないもない様子だった。


『そうか。』

「はい、では旦那様とお呼びすればいいですか?」


 茶化すかのような言葉を彼女は問いかけてきた。

 俺は無視した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ