2話「レイゾウコ怪人」
「私ってこの街、案外好きではないんですけどね。」
私は一人テレビにつぶやいた。
今日ゴリラ君は交通安全週間と言うことで警察官と一緒に保育園や幼稚園。
それと小学校に一緒に同行しているから。
なんか最近トレンド入りしてるみたい。
- ゴリラの横断歩道 -
あら、私?
熱いからクーラーのきいたこのビルにいます。
出たくないの。
何でこんなに暑い県に配属になったのかしら?
都道府県でなぜか暑さ一位を叩き出す県。
プールとか少ないし海行くのに時間がかかるのもつらいわね。
人口も少ないからあんまり発展しないし。
団扇を仰ぎながら心の中で答える。
え?
私ですか?
レイゾウコです。
家事やガーデニングが大好きな付喪神怪人です。
特技や必殺技は秘密よ。
乙女は隠したい事なんて山ほどあるんですもの。
で、なんで暇を持て余しているかと言いますと。
「なあなあ!?ゾウコ!またお前さん面接落ちたんだってな!?」
ほら見て。
面倒くさいのが来ましたわ。
この方も私と同じ怪人。
「何をおっしゃいますの?センプウキライオン。」
「その名前で呼ぶんじゃねえ!ガオウウゥゥゥ!」
そう扇風機とライオンが合体した姿。
扇風機の付喪神だったんだけど細くて弱いのが気に入らないとエヌ様にお願いしてライオンにしてもらったと自慢していましたね。
「じゃあ何て呼べばいいのよ?」
「前から言ってるだろ!『ハリケーンレオ』ってな!」
実を言うと私、この方があんまり好きではありません。
自分勝手で中二病。
怒りっぽいしすぐ絡む陽キャラ。
・・・・・・・・・・・・
まあいいわ。
まあ苦手なんです。
「何か用かしら?レオ君。」
「レオ君だあ!?照れるじゃねえか!暇そうなんで俺と遊べよ!」
もう忘れてるわ。
あなたが絡んできたダルがらみ。
ちょっと怒ってるのに。
「お断りしますわ。」
「えええ!?何でだよ!?何にもしてなかっただろ!?」
「そうね。何もしてなかったわ。・・・・・・・正しくは何もしてなかったけど用事が出来ました。」
「いきなりできる用事ってなんだよ!?わけわかんねえ!?」
納得してないご様子。
私はため息をついてイヤミったらしく答えた。
「あなたが私に言ってきたじゃないの。『面接に落ちた。』ってね。なので今からアルバイト、パートを募集している所に電話をかけて面接の予約をするの。」
「なっ!はあぁぁぁ!?面接だ?俺たちは怪人なんだぞ!?町を襲って宝石泥棒とかすればいい!」
「そうね。私達は怪人よね。でもエヌ様はそう言うの好きじゃないみたいだし。エヌ様が嫌がることはお断りします。」
「エヌ様エヌ様ってお前は。わかった!もういい!俺は一人で遊んでくる!」
「はーい。行ってらっしゃい。『あ、TRまでよろしいでしょうか?私、怪人をしておりますレイ、ゾウコと申します。あ、はい・・・・・・』」
私はセンプウキライオンを無視して電話をかけるのであった。
一週間後
私は今日もアルバイトへ!
場所は大型スーパーTRさん。
何か電話をしてすぐ面接したらすぐ来てほしいと。
どんな事をさせられるのかドキドキしてましたが。
レジ打ちとなりました。
朝方ですけど。
「おう!象さん!今日も頑張ってるんな!」
常連さんのおじさまがいらしました。
彼はいつも農家で使う器具、道具をここで買って使っています。
「今日は土かしら?」
「ああ、畑に入れて混ぜるんだ。カート二つ分な。」
「そんなに乗りますか?」
「それが乗るんだよな。俺のマイカー、軽トラックに!」
真っ白の軽トラックがこのおじさんの愛車。
前、同じように土を大量に買っていったとき手伝ったの。
暇なときは毎回洗車をしてるって聞いたわ。
そういうたわいもない話をしながらレジを終わらすと次のお客さんが来ていた。
「おっ!じゃあな!象のお嬢さん!」
「またねおじさん!あっ、いらっしゃいませ!」
私は会釈すると次の方を打ち始めた。
「今日も象ちゃんだけかい?全く!」
「朝早くだから仕方ありませんよ。」
「頑張ってね!応援するから。」
こんなたわいもない会話をしてレジを打つ。
怪人的にこれでいいかわからないけど・・・・・
「財布、車だわ。ちょっと待ってて!すぐとってくるから!」
「はい。では預かっておきます。」
そう言って私は体の冷蔵庫にカゴごと閉まった。
まったり時間が流れる。
案外こんな日常も悪くないわ。
エヌ様がこの県を支配するまで頑張りましょう。
野望の為に。
そう思いながら次のレジを接客するのであった。




