第11話 そんなママの露天風呂。
時計を見ると19時だった。
「そろそろ、お風呂にいきましょうか?」
俺がそう言うと、舞雪さんは少し悩んでこう言った。
「貸切は1時間だから、30分ずつ入りましょう。先はわたしと秋桜でいいですか?」
「あ、はい……」
さすがにお風呂は一緒じゃないのか。
少し期待しちゃったよ。
すると、秋桜ちゃんが言った。
「おにーちゃん。ごめんねっ。ママ、夜の運動会のために、色々ご準備があるのっ。つるりんにしたりとか、かわいいパンツ履いたりとか」
よ、夜の運動会ってなんだ?
「みたい?」
そう言うと秋桜ちゃんは、カバンに手をつっこんで、何か黒い塊を飛び出した。
それは、パンツだった。
黒いレースで、横をリボンで結ぶようになっている。
正直、かなりエロい。
舞雪さん真っ白だから、たぶんスゲー似合う。
「いたいぃ。ままぁ」
秋桜ちゃんはパンツをとりあげられ、舞雪さんにグリグリをされている。どうやら、調子に乗りすぎたようだ。
俺が別風呂にしょんぼりしてるように見えたのだろうか。秋桜ちゃんは言った。
「おにーちゃん、鼻血でたから。お部屋のお風呂がいいんじゃない?」
「そっか。そうよね。せっかく部屋にも綺麗なお風呂あるし」
舞雪さんはそう言うと、貸切風呂のキャンセルの電話をしてくれた。
部屋の露天風呂に入ることになったらしい。
「じゃあ、わたし達、先に入るね。隼人くんは、あとね」
舞雪さんと秋桜ちゃんは、先にお風呂に入って行った。たしかに、部屋風呂からも雪景色の絶景が見えている。無理して、部屋から遠いお風呂に行くこともないのかもしれない。
そういえば、さっき舞雪さん、「隼人くん」って呼んでたよね? やばい、嬉しい。俺は拳を振り上げた。
俺は部屋で待つ。
でも、落ち着かない。
あのブラインドカーテンの向こうには、全裸の舞雪さんがいるのか。
……ちょっとくらい見ちゃおうかな。
いや、でも。
秋桜ちゃんもいるし、ダメか。
俺は諦めることにした。
しばらくすると、浴室が騒がしくなった。
どうしたんだろ?
何かあったのかな?
秋桜ちゃんが駄々をこねる声が聞こえる。
「あの。何かありましたか?」
脱衣所の手前から声をかけた。
「いえ、秋桜がワガママを言ってて……すいません」
「いやだぁぁ。おにーちゃんも一緒じゃないとダメーっっ」
たしかに、秋桜ちゃんが絶叫している。
「はぁー……」
浴室の中から、大きなため息が聞こえてきた。そして、舞雪は言った。
「すみません。隼人くんも一緒に入ってもらえませんか……?」




