極悪度SSの囚人たちに怯える看守の私、実は真の【SSランク】でした〜米30キロのために伝説の傭兵団をFPS感覚でボコボコにした元プロゲーマー、無自覚に世界を救う〜
全自動化したこの牢獄には看守などいらないのでは、と思うけれど話さないと狂うらしい。研究ではそうあるらしい。その結果を知っていることは、やったことなのだなとわかる。そっちの方が怖い。
ミネアはちょっとピッタリすぎる服を整えて出勤してきた。それは、とっても有意義ではない仕事。看守として囚人の会話係だ。
看守と呼ばれるのはあくまで業務的に必要だから、体裁的に呼ばれている。前世という価値観もあって逃避感が強いんだけど、給料がいい。
ため息を吐く。長い長い。ここには何人かの囚人がいるのだが、この人数は兎も角……囚人ランクがおかしい。ここは都会に比べれば田舎の部類。都会の人たちが嫌がった結果ここに立てられたというのは暗黙の認識で、皆はわかっている。
ここに住んでいたミネアは仕方なく給料が良いからとその仕事をしている。しかし、なんの嫌がらせなのか本当に囚人の内約が酷い。
それもこれも、都会の人達が関わり合いたくないと思っているせいなのだ。ここにいる人達は囚人のレベルがSSに分類される人達で、極悪犯なのである。
乙女ゲームならともかく、違うし。おまけに、ゲームのガチャなら喜んでな感じなのだが。おかげで毎日、刺激的を通り越してげんなりな日常を過ごしている。乙女ゲームだとしても、ごめんなレパートリーだ。
「ドゥさん。こんにちは」
囚人の一人、SSランクの男。
「お、ミネアちゃん。昨日ぶり」
「なにか不便なこと、体調が悪いことはありますか?」
いつものやり取りをする。
「いーや、ねぇよ。こんなに細かく聞いてくるお話係なんて初めてだからおじさん、本当に健康でなぁ」
この人、今はいいおじさん風だがプロフィールには建物破壊をしまくった喧嘩屋みたいなことを長年している現役の傭兵らしい。この世界、やっぱり怖い。
あと、おじさんとか言ってるけど顔は年齢より若いし顔が整っていてファンがたくさんいるとのこと。衛兵にファンってなんだろう??
皆怖くないのかなぁ?って聞く度に思うわけでさ。自分と関係ない遠い出来事だから、他人事に思えるのか?分からないと首を傾げる。
「お体今日は拭かせてもらいますね」
「おう。ミネアちゃんは余計なことやセクハラってやつも、しねぇから安心してやってもらえるわな」
それ、聞くことがあるけどミネアとしても看守の立場で囚人にそういう態度をするなんて恐ろしくて真似するなんて無理。そんなことをした人、今も無事なのか?ちょっと怖い想像に首を振った。
看守は別にやらなくていいし、自主性を推し進めているが、お世話もする。殆どは囚人が拒否するが、それが許されないシステムがあり無理矢理触れられることができるとのこと。
だから、なんで皆怖くないのかっ。出てくることはないから怖くないとでも思い込んでいるのか?
「ドゥさん。今日は背中拭きますね」
「ああ。ミネアちゃんは業務的で助かってる」
「そうですか。今日は天気良いですよ」
そうして、雑談をする。メインの仕事は話すこと。
「この間は雪降ったんだったな」
「ここら辺は雪深くなる地域なので、雪が降ると本当に歩けなくなるんですよ」
「都市なら即どうにかするのに、予算はどうなってるんだ」
「そんなの、人数的に損切りされてますよ」
田舎なのでろくな予算が来ない。近未来っぽいのにその恩恵に入れてない世界にウンザリする。それにこの付近にいる子供世代は皆ここを離れてしまい残ったのは己の身。超過疎地域の限界集落。
アンドロイドなどというものは旧式だし、不便ではないけどお年寄りの方にもお話係という自主的なことをしている。
「おれらを収納するから予算たっぷりなはずだぜ?」
「あーはは、そんなの関係者の懐の中ですよ」
お世話ロボがいるけれど、それだけで終わらせるには限界集落すぎて。近くに家が集まっているのでそれは楽々だけど。この世界は年齢が伸びに伸びているし、健康的な人達なので会話はできる。
都会に出ないのかと言われたけどミネアは自称二十一世紀の専門家として研究をしていることにして引きこもっていた。
「もしかして、調べたのか?」
「はい。がっつり消えてました」
実はこのサイバー異世界が怖い。ディストピアというより、その逆なポップな世界観だ。別に暗黒かっていう空気でもない。
ただ、メカメカシイ。デカい3メートルのロボットが街中を行くのをテレビで見た時、うわぁとなった。そもそも二十一世紀の都会にすら行く気がなかったのに、さらなる発展を極めている都会に行く理由が見当たらない。
「おれが上にかけやってやろうか?政府を脅せるネタくらいあるぞ?」
「大丈夫です。そちらの貴重なネタが少なくなるのは悪いですから」
それに、限界集落ではあるが二十一世紀からしたら、この辺は十分すぎるほど繁栄している。
「ミネアちゃん……あんたは優しすぎる」
「そうですか?結構俗物ですけど」
過疎とは言ったが、生活する分にはなんら不便ではない。この世界の人たちの辺鄙と、ミネアの辺鄙が違っただけの話。
二十一世紀の風景からしたら、発展してる。ドゥは慰めるように言うが、本音ではこちらに不満はもうない。なくさないとね。お金は戻ってこないし。
「はぁ、たく。ミネアちゃんしか若い子がいないってことはマジで限界集落みたいだな」
長年というには微妙だけどそこそこ長く過ごしている。ここが建ってから給料が安定して入ってきているので今の所自分には不満はない。地域への消えたカネの不満は大いにあるけど、無駄な思いだしさ。
「別にいいんですよ。若い子がある意味ここで補充できてますし」
「いや、おれらはカウントされちゃダメじゃないか」
苦笑して突っ込まれたものの、実質ここの住人として登録されている。
「ドゥさん達が来てくださったので平均年齢が低くなりました」
「それだけだろ?おれたちは動けるわけじゃねぇしなぁ。地域貢献しちゃいない」
「いえいえ。近所の方達にドゥさんたちの年齢を言うと、若いもの同士と話せてよかったわねって喜ばれます」
おほほほ、と笑う彼らの声が思い出される。
「自分で言うのもなんだが、おれたちゃ囚人でSSランクの超危険人物なんだが、相変わらず緩い」
それくらい、若い子がマジでミネアと囚人しかいない。
「あと、逆ハーレムねって」
「ぐはっ。おいおい!」
思わず吹き出したドゥにこちらも笑う。
「ですよね!リアル乙女ゲームねって言われましました」
「くく!はは!やっぱミネアちゃんと周り面白いなぁ」
笑う男に追加。
「この仕事をリアル乙女ゲームなら、さっきの体を吹くのってミニゲームですよね」
さらにドゥは大笑いした。その後、他の囚人のところへ行く。少人数なので回る分には楽だ。その分質は良くしようと思っている。
囚人ランクSS。アズ。トレードマークはメガネ。近未来の眼鏡は薄くてかけているのかよく見ないとわからない。
「こんにちはアズさん」
本来はあのメガネはコンピュータだが、機能を抜かれているので本当にただの眼鏡だ。犯罪内容はサイバー関連。
「こんにちは、ミネアさん」
丁寧な物言いである。この人、優しい言葉とは裏腹に経済に大ダメージを与えた極悪犯である。
「差し入れの目録が更新されたので持ってきました」
「いつもありがとうございます」
「メガネもお拭きします」
「はい」
メガネを取ったアズ。うーん、美男子。因みに目録は紙だ。アズにはサイバー関連は一切禁止で、絶対に触れさせてはいけない。なので、囚人用の買い物パネルがついてない。メガネを拭き終えたら返却。
「ミネアさんがきてくださり、生活が大変助かってます」
「恐縮です」
アズは顔の良さを分かっているのか、笑みを浮かべる。でもさ。
(その顔系、乙女ゲームで五億回は見た)
キラキラした顔は尚更。顔なんて皆好きに変化させられるし、アニメ風とかリアル風とか。なので、彼のかっこいい顔はパッケージ顔だとしか思えない。この人も例外なく、ファンがどっさりいるとのこと。
「アズさん、教えてくださった本読みましたよ。シリーズ全買いしました」
アズは知能犯故か、博識だ。
「それは良かった!面白いのでぜひ読んでください」
「はい。アズさんのおススメしてくださった本の続編が出たので書いてお渡ししますね」
「わざわざありがとうございます」
アズに挨拶をして、後にする。扉が閉まると息を吐く。
「相変わらず、女に媚を売るのは反吐が出るって言いそうな顔してたな」
凄く偏見を述べた。妄想、想像、空想。アニメとか漫画なら敬語の眼鏡キャラだと裏切りだったり、裏ありの顔があるキャラクター性を網羅してるのが悪い。
(そもそも、常識や愛嬌がある人が、極悪度SSに設定されるわけがない)
「次は……」
ノートタブレットが顔を照らす。そこにあるのは顔が整った男。サラッとした髪質に、すらりとした鼻筋。なのに、写真であれ存在感しかない口輪がその顔を覆う。
(カロン。SSランク。声に関する異能)
SSランクだし、犯罪者であるが声をミネアも聞いたことがない。声で人を意のままに操る異能なのだと。なので年中口輪をつけられていた。
「カロン様、おはようございます」
ぺこりも何十もの分厚いガラスに隔離された場所が見える。三人の中でぶっちぎりにやばいらしい。二人は物理的な加害になるが、このカロンは精神汚染系統なのだとか。ガラス越しだが、カロンはこちらを見て頷く。
カロンが様付けなのは意思疎通するときにそう言っておけば嫌な気分にはならないというミネアの独断だ。今の所嫌がられたりはしてない。
「今日は音楽を持ってきました」
あと、精神を安定させるのはクラシックという独自の偏見で、こちらの私物を持ち寄っている。話せないので仕方ない。カロンように文字を打てるデバイスがあるので、そちらで意思疎通は可能。
『おはよう。クラシック?』
「はい」
のほほんとした感じの口調に打たれているけれど、プロフィールでは非常に口が悪いらしい。なので、これが素の言葉ではないと知っている。
『読み聞かせをしてほしい』
「わかりました。なんの本にしますか?」
『最近の新聞は?』
「一ヶ月前のものなら許可されてますよ」
じゃあそれで、と指定される。
「わかりました。どの欄にしますか?」
『占いで』
「占い好きですね」
電子新聞を手にして、読み聞かせする。
(こういうのって後々脱走するたまにこの占い師に仲間が仕込んでたとかいうの、見たことあるな)
読みながら、占いコラムを見る。囚人の三人は、それぞれ自分たちをリーダーとした部下たちを束ねていた。その仲間や部下達がここを襲撃しないかと、警戒のためにこの建物は強固だ。
「あ、ちょうどカロン様一位です」
『……そうか』
(いつもより、返事に間があった)
一位ではなかったのに、急に一位になる占い。襲撃フラグはないよね?
仮にあっても、お話係にはなんの関係もないけどね。お話係は警備でもないし。カロンへ音読し終わるとこちらの雑談を始める。
「どうでした?」
『いつも通りいい声だよ』
「ありがとう」
絶対に思ってなさそうだなと偏見を突き抜けて、ミネアはポケッと聞いていた。だって、そこらにいる女を真面目に褒める悪党なんて世の中にいるわけがない。彼らは乙女ゲームの攻略対象ではなく、単なる現実に生きる極悪犯。
「体拭きましょうか?」
この場所で身体を吹くときは、遠隔操作でメタルチックな手が濡れたタオルで拭くのだ。
『明日頼む』
「わかりました」
『毎日来て偉いな。普通ならここまで頻繁に来ない』
「いえ、皆さんが風邪を引いてないかとか、体調を悪くしてないかとか、発狂してないかとか、気になってしまうんですよ」
『発狂……』
すぐに何が言いたいのか理解したらしい。この人は日に日に話す頻度や間隔が狭くなり、好感触っぽい。
「はい。何年もここにいたら精神的にやられちゃいますしね」
最低義務は一週間に二回なので、それ以上やっても咎められることはない。その後はカロンと別れて報告書を作成する。なにか、ぽろりとこぼすことがあるかもしれないという名目で作ることも義務として契約書にあるので仕方なく。
ぽろりとこぼすことは今の所なさそうだ。強いて言うならばドゥの政府と取引できる材料を持つ言葉だが、それを馬鹿正直に書くわけがない。
前に一人が笑って談笑したと書いた日、強制的に本部へ来るようにと迎えを寄越されたのだが、単に聞かれるがままにそのまま言う作業を三日間させられたことは、許せん。
単に聞くだけならまだしも、帰りは勝手に帰れと言わんばかりに放置された恨みは忘れない。お金は支給されたが、この場所に戻ってくるのは大変だった。乗り継ぎとか。不親切で、不手際なやり方に二度と定期連絡で余計なことは書くまいと決めた瞬間。
よって、なにをしたとか、なにを聞いたとかは一切書かなくなった。いつも通り、とそれだけ。それに、予算を着服されていることを謝られてもない。
気付いてないのか、めんどくさがって無視しているのか。どちらでもこうなっているのだから、同じこと。
「今日も異常無し」
報告書に記載を終えて、電源を落とす。書いたので送った。呼び出されるまで事細かに書いていたが、もうそんなことをする意味はないなと怒りを燻らせて、それだけになった。
あの人達はミネアにツーアウトをしてしまってる。次はスリーアウトなわけだが。
三人のSSランクの囚人と日々おしゃべりするのが自分の今の仕事だ。副業かな。
仕事を終えると趣味の時間だ。ゲームを手にプレイ。二十一世紀のゲームなので今はレトロゲームとか骨董品ゲームと呼ばれている。
そんなことは自分には関係なく、楽しく遊んでいるけれどね。それに、おそらくミネアが無くなった後に出てきたリメイクもあるので自分的には大アリだ。
この世界にはモノや歴史があるのの、大まかなものだけであってあとは知らないものばかり。ミネアはこの世界は住んでいた世界ではなく、限りなく近い可能性のある別の世界と結論づけている。
異能や魔法に似た力を使う人たちが世にゴロゴロいるのだ。異世界であれ、ゲームがあるのならば大満足。そして、休日を珍しく取った。その日は大雪なのでいくらミネアでも歩くのは無理だった。
物理的には無理でもホログラムでは歩き回れはする。今日は久々の休みなので見に行かない。できるだけ短時間にはしているが、囚人の人たちとて、いない日があった方が伸び伸びできるだろうし。
「わ、デバイスうるさい」
何故かマナーモードが強制解除されたスマホみたいな機能のある機器。それを見ると記事があり、メールも送られてきている映像はなにか黒い煙を吐いているのが辛うじてわかる。建物が燃えているのかな。
ミネアはテレビをつけた。強制解除ということは、政府が送った緊急事態の時に一斉特報を出した時の条件になる。
『ここは、現場から数メートル離れています』
アナウンサーがなにが起きているのかを伝えてきた。政府の建物が襲われているそうだ。
「ガチ襲われてる」
思わず呟いた。確かに送ってもらえなかった時に散々悪態と悪口を言いまくったけど。現実になるとは。
他人事のようなものなので、ボーっと見ている。ビービーと囚人の人達のためにある健康チェックバイタル機器に音が入り込んだ。
見てみると三人はそれぞれ、興奮状態をさし示している。
「バイタルに異変?」
異変があってもやれることなどないのだが。医療行為は収監している中でロボやアンドロイドやシステムが自動的に行う。
「それにしても、変なタイミング?かな?」
どう見ても逃亡フラグ。無視するべきか、見てみるべきか。見ようと思えば監獄のあちらこちらをカメラで見られる。
アプリが入っているのだ。そっと開いて異常がないか見てみることにした。こういうゲーム、昔したなぁ。
異変がないか監視するゲームが流行ったものだ。怖くてすぐに消したり、やらなくなったので経験はないようなものだ。
あのいきなり出てくる演出が怖すぎてホラーが苦手なミネアには、手を出す理由もなく。
監獄の中は普通だった。が、監獄の外に問題はあった。見た感じ、三つの勢力が武器や武装を手に監獄へゾロゾロと近寄っているのが見えた。
「えっ」
思わず口を手で覆う。あまりに非現実な光景に驚く。
「ど、どうしよう?」
流石に、これはどうにか連絡しておかないといけない。一応報告をメールで添付しておく。
「この人達は、どっち?」
助ける方か、命を狙う方か。異世界政府襲撃と関係がありそうだし。今は混乱している現場だろうから、助けなんて期待薄。ミネアはとりあえずレトロコントローラーを手にして、なんとか落ち着こうと試みた。
*
現在、孤島は雪に覆われて視界は最悪だ。しかし、最新のスコープと装備により難なく各エリアに散らばるものたちは監獄へ進む。
傭兵、または各リーダーが監修されている部隊は奪還のために歩を進めていた。今日は三つの組織が手を組み互いのボスを助け出す合同の計画。
途中までは順調だった。だが、一体のロボが出てきたことにより一気に計画が狂い始める。見たところ、そのロボは最新式の対戦闘型ロボ。
アンドロイドかもしれないが、一体くらいわけなかった。はずだった。
そのロボが動き出しこちらも反撃に打ち込むとひらりと避けられ、さらに加えるが当たらない。その間に一人ずつ確実に無力化されていく。
「撃て撃て撃てっ」
実弾ではなくエネルギー弾であり、気絶させるためのもの。何度やっても当たらないのにこちらは当たる。削られていき、計画続行不可の人数まで減らされたと思いきや急に攻撃は止み、次に見た時ロボは消えていた。
「なんだあのやべぇロボは」
一つの戦闘部隊がほぼ壊滅状態にさせられるなど、本来考えられない。
「どうなってる?ドゥ様奪還の機会は次、ないかもしれないというのにっ」
木に拳を叩きつけたら、エネルギーを食らい気絶した。遠くから撃たれたらしかった。
残りの二つの部隊の一つは現在、何者かの襲撃を受けていた。アズ奪還のサイバー部隊でもある。相手がロボならば楽勝だ。セキュリティプログラムにさえ、入り込んでしまえばいい。
「できませんっ」
「なんだと?ありえん!」
アズをボスとして腕利きの天才たちを集めてきた。
「恐らく、電脳ではなく直接動かしている可能性が」
「はぁ?なんだそれは!?」
天才の言葉に我々は混乱を来す。
「電脳で操っているのならば繋げられるのですが、つながりません。オートではなくコントローラーを握っていなければ説明が」
「もっとマシな言い訳をしろ!」
今の時代、仮に直接操作するやつがいるとしても衛兵や訓練された部隊を相手取ってこんな一方的な戦闘を繰り広げられる腕を持つものがいるなど、ない。
今や電脳で機器を操るのが普通になった世界で、誰もかれもが世迷言を言い続けるしかない。そのうち、アズ奪還部隊もやられていく。
「ぐは!」
セキュリティ部門も壊滅させられた。
残りの一チーム、カロンの救出部隊は異能や魔法を使えるものが多い。カロンが声を封じられて長いが、声さえ出せれば怖いものなどないという信念が渦巻く。
「聞け、二チームがやられた」
「やつらは異能を使わないがサイバーと腕力、統率が取れていた。不足はないはず」
ざわりとなるが、彼らは問題ないと迎え撃つ。
「ん?がっ!」
後ろから現れた小さいロボが男の一人を気絶させる。
「なに?地面から?」
大きな一体が相手だと聞いていたのに、新たなるロボが現れた。その小さいロボがわらわらと現れると数に押されて一人一人無効化され異能もうまく活用できなくなる。
「ぐっ!カロン、様……」
口輪を外してやりたいとせめて思っていたのにと麻酔を打たれた部下は気を失った。
*
「はぁー、久々で肩凝る」
ミネアは首を緩くする。
「それにしても、この人達FPSやったことないの?」
めちゃくちゃ疑問符を飛ばす。レトロコントローラー、すなわち二十一世紀のゲームコントローラーをテーブルに置くと、ホログラムの画面を見る。そこには赤い点が薄く点っていたが、消えかけている。
「全員ロスト確認っと」
三チームはなかなか骨が折れる作業だったが、三チームがぎこちなかったのでできた。あれで動きが滑らかだったりしたら、撃ち漏らしていたところだ。
「いくらなんでも急すぎたかな〜。でもなぁ、もし命狙ってる方だったら流石に夢見悪いもん」
ミネア、田舎島で生まれ二十一世紀の自称専門家けん、看守【お話係】。
「あ、はーいおばあちゃん?どうしたの?」
そして。
「え?今年の地元開催、射撃ゲームの商品が米……三十キロ?えっ、やばっ!腕が鳴る!任せて!必ずその米をウチのものにするよ」
元FPSプロゲーマーである。
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