45 魔法
よく一人でバルフェルトの尻尾を切り落とすことができたな。
これは、あとでめちゃくちゃ褒めちぎってやるしかない。
「どうだ! 魔王」
すごい、ドヤ顔してる。……それよりも。
尻尾からキャロを助けだすと、苦しそうにしていた。
「キャロ、大丈夫か」
ケガを治すと「すみません」といつも通り謝ってきた。
「謝るんじゃなくて、そこはありがとうだろ」
「ありがとうございます」
「あいつ、グリオンを倒すにはキャロが必要だ」
「自分がいても──……」
「そんなことない。俺が必要だって言ってるんだ」
前世みたいに一人でロマネスクと戦えるほど強くはない。
勝つには、キャロだって必要なんだ。ここにいても無駄な奴なんていない。
「誰が欠けてもダメなんだ。だからキャロも必要だ」
「自分もですか」
「ああ、そうだ。だから、元上司を一緒にぶん殴ってこれからも一緒にいてくれ」
「……はい!」
地面を叩く音がした。
バルフェルトがこっちを睨んでいた。
「僕の尻尾を切り落としたのが、そんなに嬉しいの?」
「そりゃ嬉しいだろ、自分の教え子がすごい活躍してるんだからよ」
「景品ついでにキャロを返してあげるよ、そんな役立たずいてもいなくても変わらない」
「それで負けても知らねぇかんなー」
キャロが弱いわけあるか。噛むだけですぐに回復できるなんて最強のヒーラーじゃねぇか。
「僕は魔王バルフェルトだ。君たちみたいな低俗な種族と低ランクの魔物に負けるわけがない」
「それじゃあ、魔王を倒したら俺が正真正銘の魔王ってことだよな」
「そういうことでいいよ、勝てたらね」
話がはやいな。今までは空いていた魔王の席に座らせてもらってたから、反感を買ってたけど
仮初でも魔王になったグリオンに勝てば、俺が魔王だって周りに証明できる。
「行くぜ、魔王。これが俺の──」
「バルフェルトはうちには、勝てないよ。バーカ」
そこでセリフ被せてくるか。
かっこよく決めようと思ったのに。いつまで噓ついてるんだよ。
「僕が負けることはありえない。僕には秘策がある」
「うちは、そんなの無効にできるけど!」
「つまらない噓だね」
なんで張り合ってんだよ。
でも、そのおかげでバルフェルトが何かを隠してるってことはわかったのはありがたいな。
「俺たちには通じないぜ」
魔族には、精霊の秘宝みたいなトンでもアイテムはない。
仮に魔女が使ったとしても、ロマネスクと俺たちでカバーすればどうにかなる。
「それはどうかな。君はまだこの世界のことを知らなすぎるんだよ」
「これから知ってくつもりだから楽しみにしてる」
なにを隠してるか気になっちゃうな。
ドゥルガーとオリブに目配せすると、俺の意図をくみ取って二人はバルフェルトに奇襲をしかけた。
「魔王を倒すのはあたしだ!」
「 」
二人の攻撃をドゥルガーは飄々と避けている。
なんだなにか話してるのか? いや口が動いている……。
話してるわけではない。遠くて聞き取れない。
「あれは、アマツさま逃げてください!」
キャロに押し飛ばされた次の瞬間、視界が全て真っ暗になった。
俺は知っているこの魔法を一度だけ見たことがある。
「おい、みんな! ドゥルガー! オリブ! キャロ! ライ!」
いくら叫んでも声が返ってこない。ずっと空間は黒いままだ。
どうやら死後の世界ってわけではなさそうだ。俺の心臓は動いてる。
闇の魔法に当たると、異空間に飛ばされるのか。
「みんなと会うか。いや、まず同じ空間かわからないな」
とりあえず、みんなを探すしかない。




