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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
45/49

45 魔法

よく一人でバルフェルトの尻尾を切り落とすことができたな。

これは、あとでめちゃくちゃ褒めちぎってやるしかない。


「どうだ! 魔王」


すごい、ドヤ顔してる。……それよりも。

尻尾からキャロを助けだすと、苦しそうにしていた。


「キャロ、大丈夫か」

ケガを治すと「すみません」といつも通り謝ってきた。


「謝るんじゃなくて、そこはありがとうだろ」

「ありがとうございます」

「あいつ、グリオンを倒すにはキャロが必要だ」


「自分がいても──……」

「そんなことない。俺が必要だって言ってるんだ」


前世みたいに一人でロマネスクと戦えるほど強くはない。

勝つには、キャロだって必要なんだ。ここにいても無駄な奴なんていない。


「誰が欠けてもダメなんだ。だからキャロも必要だ」

「自分もですか」

「ああ、そうだ。だから、元上司を一緒にぶん殴ってこれからも一緒にいてくれ」

「……はい!」


地面を叩く音がした。

バルフェルトがこっちを睨んでいた。


「僕の尻尾を切り落としたのが、そんなに嬉しいの?」

「そりゃ嬉しいだろ、自分の教え子がすごい活躍してるんだからよ」

「景品ついでにキャロを返してあげるよ、そんな役立たずいてもいなくても変わらない」

「それで負けても知らねぇかんなー」


キャロが弱いわけあるか。噛むだけですぐに回復できるなんて最強のヒーラーじゃねぇか。


「僕は魔王バルフェルトだ。君たちみたいな低俗な種族と低ランクの魔物に負けるわけがない」

「それじゃあ、魔王を倒したら俺が正真正銘の魔王ってことだよな」

「そういうことでいいよ、勝てたらね」


話がはやいな。今までは空いていた魔王の席に座らせてもらってたから、反感を買ってたけど

仮初でも魔王になったグリオンに勝てば、俺が魔王だって周りに証明できる。


「行くぜ、魔王。これが俺の──」

「バルフェルトはうちには、勝てないよ。バーカ」


そこでセリフ被せてくるか。

かっこよく決めようと思ったのに。いつまで噓ついてるんだよ。


「僕が負けることはありえない。僕には秘策がある」

「うちは、そんなの無効にできるけど!」

「つまらない噓だね」


なんで張り合ってんだよ。

でも、そのおかげでバルフェルト(グリオン)が何かを隠してるってことはわかったのはありがたいな。


「俺たちには通じないぜ」


魔族には、精霊の秘宝(ランドマーク)みたいなトンでもアイテムはない。

仮に魔女が使ったとしても、ロマネスクと俺たちでカバーすればどうにかなる。


「それはどうかな。君はまだこの世界のことを知らなすぎるんだよ」

「これから知ってくつもりだから楽しみにしてる」


なにを隠してるか気になっちゃうな。

ドゥルガーとオリブに目配せすると、俺の意図をくみ取って二人はバルフェルトに奇襲をしかけた。


「魔王を倒すのはあたしだ!」

「  」


二人の攻撃をドゥルガーは飄々と避けている。

なんだなにか話してるのか? いや口が動いている……。

話してるわけではない。遠くて聞き取れない。


「あれは、アマツさま逃げてください!」


キャロに押し飛ばされた次の瞬間、視界が全て真っ暗になった。

俺は知っているこの魔法を一度だけ見たことがある。


「おい、みんな! ドゥルガー! オリブ! キャロ! ライ!」


いくら叫んでも声が返ってこない。ずっと空間は黒いままだ。

どうやら死後の世界ってわけではなさそうだ。俺の心臓は動いてる。

闇の魔法に当たると、異空間に飛ばされるのか。


「みんなと会うか。いや、まず同じ空間かわからないな」

とりあえず、みんなを探すしかない。

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