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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
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44 やるべきこと

「風よ、踊りたまえ『ヴァーユ』」


魔王城まで巨人が歩いたみたいに地面や木を簡単に切り刻まれていた。

こんな広範囲を数秒で弾け飛ばすなんて恐ろしいな。


俺は今まであんなバケモノの中に入っていたのか。

こいつと戦う前に戦力を整えないと。


「ドゥルガー、オリブを寄こせ」

「わかったァ」


オリブを抱き替え、噛みつく。


「痛! なにそんの! 変態!」

「殴るなって」

「あれ、腕が治ってる」


ライの能力をコピーして治した。

これで戦力は、整った。あとは、キャロを助ける。


「ドゥルガーと俺で、隙を作る。アイツの尻尾を切ることできるか?」

「誰に言ってるの。それくらい楽勝」


二人がバルフェルトに向かったと同時にライが裾を引っ張った。


「う、うちは何すればいいの!」

「隠れてろ」

「え」


ライは口をポカンと開けて、自分だけ時が止まっているみたいに動かなくなった。


「冗談」

「うざい!」


バルフェルトには、俺らだけじゃ勝てない。

勝てる要素がなにもない。雲泥の差だ。

でも、たった一つその差を埋められるとしたら、運とバルフェルトを超える強さが手に入ることだ。


「お前の力も必要だ」

「あいつのことすごい馬鹿にして、やる気下げてやる!」

「ちげぇよ、お前がやるのはいつも通り『噓』をつけ」


返答はなかった。珍しい、緊張してしおらしくなってるのか。


「……戦ってる最中って周りの声聞こえなくない?」

「そんなこと気にするかよ」


集中したり周りがうるさかったりして声は確かに聞こえなくなることはあるけども。

バルフェルトの耳なら、そんな心配は必要はない(体験者は語る)。


「なんでもいいから、あいつの動きを止めるようなおもしろい噓をつけよ」

「注文適当すぎ!」


バルフェルト(グリオン)は、二人相手に歴然とした態度だった。

俺が手伝ったところで、きっとあいつは変わらないだろう。

それは、三人だからだ。


「『バルフェルトを倒せ』」


声に応じて、周囲にいた何十もの魔物が竜に歯向かっている。

物量で押せばどうにでもなるだろう。


「なぜ君が『集う力(サットサンガ)』を使えるんだ」

「バルフェルトの魔法を使えないだけで、お前のは簡単だから使えるんよ」


どんな能力かも知らないし、使用条件だって知らないものよりかは、一度見たことがあるなら使えるだろ。


「これだから、転生者は嫌いなんだ」

「自分の得意技使われて可哀想だなぁ。俺とロマネスクが異常なだけだから、気を病むなよ」

「バルフェルトさまの方がもっとすごいから、君たちが可哀想だ」


言うようになったな~。

やっぱり自分の身体が強いから自信がついたのか。

さっきから魔物たちが攻撃しているけど、苦戦してる様子がない。

やっぱり低級の魔物じゃ足止めにもならないか。


「ロマネスクが来るよ」とライ。

「なにを言ってる」


ほんとだよ、なんでそんなわかりやすい噓をつくんだよ。

気づかれるに決まってんだろ。


「アマツのほうが強いよ」

それは事実だろうが。

「そんなわけない」

「そんなわけあるだろうが、絶対お前を倒してやるよ」


「さっきから君たちはなにがしたいんだ? 勇者が来るまでの足止め?」

「あいつの力借りなくても倒せるから! 俺が今やりたいのはそれじゃない」


話してる隙にドゥルガーがバルフェルトの背後に回っていた。

大鎌を振り下ろすと、背後を切りつけた。このままの勢いで、俺も一撃くわえるしかないな!


「これくらいで、僕が止まるわけないだろう」

「そのまま口明けてろよ」


風の魔法を口の中に、叩き込む。

体内は鍛えられるわけがない。いくら竜といえど口内を切り刻まれたら痛いだろ。


「ッ!」


バルフェルトの口からは、溺死するくらい出てきている。

話そうとしてるみたいだが、苦しそうな声で聞き取りずらい。


「まさか僕の口を傷つけるとは、おもしろいな」


もう口が治っているのか。いや、キャロが魔法で治したのか。

無理やり治させてるんだな。


「キャロ、今すぐ助けてやるからな」

「……アマツさま」


魔法で無理やり動かして助けようとすると、キャロを危険な目にあわしてしまうかもしれない。

力づくで俺らが助けるしかない。


「どうすんの。毎回ああやって回復されたら勝てないって」


オリブの言う通りだ。俺らがどんなに傷をつけても回復されるようじゃ勝ち目はない、

バルフェルトが今は手加減しているから、生きていられる。俺だったら、こんな生温い戦い方しない。


「キャロを助けないと、どの道勝てないからなー」

「やっぱり、尻尾を切るのはロマネスクの娘じゃなくてボクかアマツがいいんじゃないかァ」

「それは嫌だ!」


オリブは大声できっぱり断った。

先頭に立って、バルフェルトに剣を向けて


「あたしがキャロを助ける。っていうか、魔王の尻尾切り落とす」と標的を睨みつけていた。

「キミじゃ無理だァ。この中で一番強いのは、ボクだから足止めしろォ」

「いつか魔王の首を落とすんだから、その前段階よ」


言うようになったな。

ここは、士気を下げないためにもキャロ救出の決定打はオリブに任せたほうがいいだろうな。


「頼んだぞ」

「本当にあの子がバルフェルトの身体に傷をつけられると思ってるのかァ?」


ドゥルガーは小さな声で問いかけてきた。

大精霊というわりには、心配性だな。


「もしダメな時は、俺かお前で助けてあげればいいんだよ」


全て俺やドゥルガー、ロマネスクといった上の奴が問題を片づけてたら後進が成長しないだろ。

それに、オリブならきっと大丈夫だ。


「おしゃべりは済んだかい?」

「わざわざ待ってくれてたんだな。随分と余裕があるんだな」

「僕は別にロマネスクが今ここにきたところで勝てるからね。

それに、二人まとめて片付けられた方が楽だ」

「負けた時の言い訳──」

「話してていいのかァ」


話してる時に、割って入るのやめてくれよな。

二人が戦っている間に光の魔法で姿を隠して、隙を伺うとしよう。


「キミの話を聞いてて思ったことがあるゥ」

「なんでも言ってよ」

「バルフェルトの振りをしようとするあまり、動けてないんじゃないかァ?」

「……そんなことはない」


違和感はこれだったのか。


俺らをいつまでも、殺そうとしないのは余裕だからじゃない。

性格だけでなく、動作までもトレースしているせいで動きに隙があるのか。

バルフェルトは生前左腕もあった。左腕がない今は、身体の重心がとれないから動きずらい。

それなのに、両腕ある前提で動いてるから、動きに負担がかかる。


(だというのに、機敏に動けるのはグリオンのセンスかな)


キャロの回復アシストがあるとはいえ、ドゥルガーと互角で戦えるのはやるじゃないか。

正面からドゥルガーの攻撃をいなしつつ、俺とオリブの警戒を怠ってない。


(それに──大精霊との戦い方が慣れてるな)


魔族は、大精霊には触れられない。でも、人間やモノ越しなら触れる。

ドゥルガーの大鎌を使って間接的に攻撃やら妨害を加えてる。今度から俺もああやって戦おうっと。


「もう君との戦いは飽きたな」


大鎌を奪っただと!?

俺がバルフェルトの身体にいた時でも、力負けしてたのによく大鎌を奪えたな。

って関心してる場合じゃない。


「まず初めに君を動けなくさせる」


グリオンが振るった大鎌は、ドゥルガーの身体もろとも地面に突き刺さった。

死なないとはいえ、ここでドゥルガーの動きを止められるのは困る。

だけど、これが俺にとって一番狙いたかったこととドンピシャなタイミングなんだよな!


「オリブ、剣を寄こせ」

「わかった!」


グリオンが大鎌を握っている右手を、受け取った剣を振り下ろし両断する。


「ッ!」

「右腕に力を集中させてたんだから、そりゃ態勢が崩れるよな」


グリオンはドゥルガーに倒れ込んだ。


「尻尾を切れ!」


走ってきているオリブに剣を投げ渡す。

ここからは、俺がやるのは足止めだ。主役交代といこう。


「『バルフェルトを拘束しろ』」

命令すると、森に隠れていたスライムが、形状変化してバルフェルトを拘束した。


「こんな拘束……!」

「ボクもいるんだよォ」


ドゥルガーが抱きつくことで、完全にグリオンの動きを止めることができた。


「キャロ、早く僕を治せ!」

「『治すな!』」


グリオンの原始魔法(ユニークスキル)で、回復を封じた。


「アマツ! 貴様ァ!」

「尻尾を切れ」

「わかってる!」


オリブが剣を振り下ろすと、尻尾にまとわりついた鱗で刃が通っていない。


「ッ硬」

「そう簡単に切れると思うなよ、人間。それにキャロの首をへし折ってもいいのか」


オリブの力が緩んでしまう。数ミリずつ確かに刃が通っている。

俺が今やるべきことは──。


「もう脅しで、言うこと聞くと思うなよ」

キャロの首と尻尾の間に、手を入れて時間を稼ぐ。


「やれ! オリブ」

鱗にとどまっていたはずの刃は、尻尾の真ん中まで進み断ち切ることができた。

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