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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
43/49

43 再戦

アマツ視点


俺がライとグリオンの前に現れるまでにあったことを説明しないといけない。

ついさっきまで死んでたのに、なんで生き返っているのか。

グリオンの身体になっているのには訳がある。


*****


「え、なんで」


目を開けると森の中で寝ていた。

声が今までと違う。俺ってこんな声してたっけ。

バルフェルトの声はもっとざらついていいたはずだ。

軽く硬い音がした。それと同時に視界が見ずらくなった。


「あれ」


落ちていたのは、メガネだった。

このメガネ見たことあるな……。

この世界で、あったことあるメガネ……。


「もしかして、グリオンか」

「目覚めた? お兄ちゃん」


俺を見下して立っていたのは、ソフラムだった。

どうしてこんなところにいるんだ?


「ソフラム、なんで」

「お兄ちゃんにお礼を伝えようと思ってきたら、お兄ちゃんが自分で死んじゃってビックリしたよ!」

「こんなところにいるなよ! 危ないぞ」

「すぐ帰るし、命の恩人に失礼だな~」


命の恩人?

どういうことだ。


「お兄ちゃんと一緒に精霊の秘宝(ランドマーク)を手に入れたでしょ?」

「もしかして、あれか!?」

「そうそう、【スダルシャナ】っていうんだ。精霊を死体に移すことできるの」

すごいでしょ、と自分のことみたいに胸を張っている。

さすが、俺の妹だ。こんなすごい力まで引き当てるだなんて。


「精霊を死体に移すって……つまり死者蘇生ってことか」

「うん、生き返らせるのは精霊だけだけどね」


精霊ってことは、俺みたいに元々人間だった奴だけが生き返られるのか。

魔物は生き返られないってことは、バンカもダメなのか。


「なんでグリオンの死体があるんだ」

「なんかマント着た女の人が捨ててたから、使ったの。それよりも!」

ソフラムが俺の手を掴んで、引っ張る。


「グリオンの身体が倒れてね、バルフェルトの身体が、勝手に動いてるの」


グリオンが倒れて、バルフェルトの身体が動いた?

俺が死んだ後に、グリオンがバルフェルト()の中に何らかの手で入ったのか。


「ありがとう、また生きかえっちまったのか」

「えぇ、なにその嬉しくない反応……。どうしたの?」


妹には申し訳ないけど、俺はもう二回も死んだ。

一回生き返るだけでも、奇跡というか恵まれすぎてる。


「もうゆっくりしたいんだよ」

「ゆっくりしたい?」

「戦い続けて、疲れたんだよ俺は。平和に暮らせる場所を探してるけどこの世界じゃないだろうな」


そんなところあるわけがない。

絶対に誰かと誰かは争う。争い続けるんだ。


「わかる、ずっと誰かと戦うのも疲れるよね」

その声に甘えたくなる。

「ずっとゆっくりしたい」

「ゆっくりしたいんだったら、自分でそれを作るしかないんだよ」


え。まさかそんなこと言われるとは思ってもいなかった。

ずっと俺のこと肯定してくれると思ってたのに……。


「お兄ちゃんの代わりに、動いてくれる人がいると思うよ

でも、お兄ちゃんはそれをじっと待てない。だよね?」


待てないから、俺は勇者として動いた。

それに今も魔王として世界を支配しようと動いている。


「……やっぱり妹には、全てお見通しだな」

「うん、お兄ちゃんこれからもがんばってね!」


爆発音──。

魔王城の方で火柱が立っている。誰かが戦っているのか。

魔力からして、俺じゃなくてバルフェルトの魔力だ。


「ありがとう、ソフラム──あれ?」

振り返った時には、妹の姿はなかった。

どこに行ったんだ。もう逃げたのか。

「行ってみるしかねぇな」


*****


「お別れにはまだ早いみたいだぜ」


あと数秒遅れてたら、ライに魔法が直撃してたな。

オリブが近くにいてよかった。精霊術をコピーしなかったらまた死んでた。


現状を整理すると、バルフェルトになったグリオンとライが対峙していて、

キャロはバルフェルトに捕まって、オリブはドゥルガーに切られた腕を手当てされてる。


「よくお前らだけで戦い挑めたな! 俺はお前らを逃がすために──」

「バカバカ! なんで死んだの! 勝手に足手まといにすんな!」


ライが涙を流しながら地団駄を踏んでいる。

勝手に死んだのは、本当に心の底から申し訳ないと思うよ。


「……ごめんって」

「どうして君が、グリオン()の身体で生き返っている!」


バルフェルトが大声で叫んでいる。

やっぱり本物のバルフェルトじゃないみたいだな。


「ソフラム、知り合いが生き返らせてくれたんだ」

「ふざけるなよ、あの──」

「そんな喜ぶなよ、俺が生き返ったのがそんなに嬉しいのか」

「違います!」


そう思いっきり言われると、寂しいぜ。

でも、俺はまた生き返れて良かったと思う。


「再戦といこうか」

「勝てると思っているんだ、僕に」

「今まで俺の宿だったんだから、使い勝手はわかってるよ」

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