41 魔王なんかじゃない
ライ視点
「ボクが本当に殺さないとでも思ってるのかァ」
「ドゥルガー、オリブを連れてここから離れて」
ケガをしてるオリブの手当が大事、だと思う。
キャロを助け出して、治してもらうよりも近くの村で手当てしてもらったほうがいい。
本当はロマネスクが来るまでの間に時間稼ぎをしたかったけど、無理そうだ。
「……そしたら、キミはどうするんだァ」
「そこはうちの腕の見せ所。それにキャロを助けないと」
自分がやろうとしていることは、これからはなんの意味もないこと。
ロマネスクが来るまでの足止めでも、なんでもない。
「あたしは、まだ戦える」とオリブは吠えた。
その傷でまだ戦えるわけがない。
血がすごい出てるし、今すぐに手当てしないと。
「わかった。手当てだけしたらすぐ戻ってきて」
「ライも逃げろォ。キミだけじゃ──」
「いいから! うちだったら大丈夫」
「……わかったァ」
ドゥルガーはためらいながらも、オリブを連れていった。
「なんもしないんだ」
「する必要がないじゃないか。だって君らは弱いからね」
バルフェルトはゆっくりと近づいてくる。
一緒にご飯を食べて、くだらない話をしてた馴染みのある顔。
身長差が一メートル以上あって、話す時にしゃがんで話してくれていた。
今は見下ろして、狩る狩られるの関係みたい。
「本当にうちを殺すつもり?」
「それはもちろん」
死にたくない。
こんなところで、死んでたまるか。
「待って! なんでもするから!」
「僕は君と話すつもりはない。それじゃあ──」
「あははははは」
「狂ったのか」
おかしくなるに決まってる。
うちにとって、魔王はアマツだ。こんな魔王なんて知らない。
なにがバルフェルトだ、これはうちが知ってる魔王じゃない。
優しくて、ちょっとだるいのが魔王だ。
弱いものいじめしてるだけの魔王は、魔王なんかじゃない。
「なら、さっさと殺せばいいじゃない。怖いんだ」
「怖いわけないじゃないか、僕は魔王バルフェルトだ」
「グリオンでしょ、どう考えても。お前は精霊の秘宝で
アマツの代わりにバルフェルトの中に入っただけ」
「違う! 僕はバルフェルトだ。あの方のことを隅々まで知ってる、代わりじゃない」
「長く一緒にいれば、その人になれるわけないじゃない」
うち、なんでこいつのこと挑発してるんだろ……。
本当に殺されるかもしれない。
バンカやアマツみたいに誰かのために、命を落とせるほど度胸ないもん。
噓しかつくことしかできない。
誰かのために動いてみたい。キャロを助けてグリオンを止める。
「殺してみせろよ、馬鹿うんこ野郎!」
「火よ我に従え『アグニ』」
「ちょっ、ちょっと!」
やっぱり逃げ回るしかできないって!
口だけでこいつのこと止められたらどれほどいいか。
でも、やるしかない。噓をつくのが私にとっての武器だ。
「まだやれないんだ? それはそうだよね。
うちは ロマネスクに『強さ』を認められてるからさ」
「君が強い? また噓をつくか」
「──うちは、ロマネスクより強い」
「馬鹿なありえない、君がロマネスクに勝ってるところなんて見たことない」
「信じるも信じないもお前の勝手」
「……っく」
何もしてこない? もしかして……そのもしかして
だ、騙されてる?
元々のグリオンが馬鹿なのか、それともバルフェルトを演じてるから
馬鹿になっちゃったのか。




