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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
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41 魔王なんかじゃない

ライ視点


「ボクが本当に殺さないとでも思ってるのかァ」

「ドゥルガー、オリブを連れてここから離れて」


ケガをしてるオリブの手当が大事、だと思う。

キャロを助け出して、治してもらうよりも近くの村で手当てしてもらったほうがいい。

本当はロマネスクが来るまでの間に時間稼ぎをしたかったけど、無理そうだ。


「……そしたら、キミはどうするんだァ」

「そこはうちの腕の見せ所。それにキャロを助けないと」


自分がやろうとしていることは、これからはなんの意味もないこと。

ロマネスクが来るまでの足止めでも、なんでもない。


「あたしは、まだ戦える」とオリブは吠えた。


その傷でまだ戦えるわけがない。

血がすごい出てるし、今すぐに手当てしないと。


「わかった。手当てだけしたらすぐ戻ってきて」

「ライも逃げろォ。キミだけじゃ──」

「いいから! うちだったら大丈夫」

「……わかったァ」


ドゥルガーはためらいながらも、オリブを連れていった。

「なんもしないんだ」

「する必要がないじゃないか。だって君らは弱いからね」


バルフェルトはゆっくりと近づいてくる。


一緒にご飯を食べて、くだらない話をしてた馴染みのある顔。

身長差が一メートル以上あって、話す時にしゃがんで話してくれていた。

今は見下ろして、狩る狩られるの関係みたい。


「本当にうちを殺すつもり?」

「それはもちろん」


死にたくない。

こんなところで、死んでたまるか。


「待って! なんでもするから!」

「僕は君と話すつもりはない。それじゃあ──」

「あははははは」

「狂ったのか」


おかしくなるに決まってる。

うちにとって、魔王はアマツだ。こんな魔王なんて知らない。


なにがバルフェルトだ、これはうちが知ってる魔王じゃない。

優しくて、ちょっとだるいのが魔王だ。

弱いものいじめしてるだけの魔王は、魔王なんかじゃない。


「なら、さっさと殺せばいいじゃない。怖いんだ」

「怖いわけないじゃないか、僕は魔王バルフェルトだ」


「グリオンでしょ、どう考えても。お前は精霊の秘宝(ランドマーク)

アマツの代わりにバルフェルトの中に入っただけ」

「違う! 僕はバルフェルトだ。あの方のことを隅々まで知ってる、代わりじゃない」


「長く一緒にいれば、その人になれるわけないじゃない」


うち、なんでこいつのこと挑発してるんだろ……。

本当に殺されるかもしれない。


バンカやアマツみたいに誰かのために、命を落とせるほど度胸ないもん。

噓しかつくことしかできない。

誰かのために動いてみたい。キャロを助けてグリオンを止める。


「殺してみせろよ、馬鹿うんこ野郎!」

「火よ我に従え『アグニ』」

「ちょっ、ちょっと!」


やっぱり逃げ回るしかできないって!

口だけでこいつのこと止められたらどれほどいいか。

でも、やるしかない。噓をつくのが私にとっての武器だ。


「まだやれないんだ? それはそうだよね。

うちは ロマネスクに『強さ』を認められてるからさ」

「君が強い? また噓をつくか」


「──うちは、ロマネスクより強い」

「馬鹿なありえない、君がロマネスクに勝ってるところなんて見たことない」

「信じるも信じないもお前の勝手」

「……っく」

何もしてこない? もしかして……そのもしかして

だ、騙されてる?


元々のグリオンが馬鹿なのか、それともバルフェルトを演じてるから

馬鹿になっちゃったのか。

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