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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第一章 アマツ・ツカサは魔女と旅をする
4/49

4 見張り

俺は、裏切りの魔女ことバンカさんの住処である『魔女の森』にいます。

バンカの呪いである『能力低下の呪い(スキルダウナー)』の有効範囲が

森全体に広がっているため、魔族も人間も来ないんだとさ。

本人いわく「嫌われてるわけじゃない」だって。


「なんか失礼なこと思ってるでしょ」

思ってませんよぉ。


「さて、これからどうしたものかぁ」

「え、魔族についたんじゃないの?」

「いやいやいや、俺はロマネスクと共闘するのが嫌なだけであって魔族につくわけではないよ」

「どうせ、やることないんだったら魔族側つけばいいのに」


「俺は平和に暮らしていきたいの、もう前世で戦い疲れてますぅ」

「前世はそんなに大変だったのですか? バルフェルトさま」

「そりゃ大変も大変さ。あとバルフェルトじゃないからね」


ロマネスクの部下、ズイダにハメられて一週間も寝ずに、魔物と戦わされたり

寝ているところに、味方だった奴が襲ってきたりして気を抜く暇すらなかったもんさ。


「平和に暮らして何すんの?」

「そりゃ……恋愛とか」

「その体でどうやって交尾すんの」

「交尾だけが、恋愛じゃねぇだろ!」

手を繋いだり、一緒に寝たりプラトニックな関係を築きたいの。


「だが、このトカゲ姿では怖がられて人間との恋愛ができない」

「「トカゲじゃない」です」

トカゲじゃないみたいです、竜でしたね。訂正ありがとう。


「そのために俺は人間の身体になって、平和に暮らすんだよ!」

「体を人間に戻す手立てがあればいいんだけど」

この体だと人間に警戒されるだろう。それに左手がないと不自由だ。

「戻れるけど」

「あるのか!」


「魔王バルフェルトの封印の際に使われた精霊の秘宝(ランドマーク)、【マクシャマラ】を使えばきっと戻れる」

精霊の秘宝は各地に生息する大精霊と契約すれば手に入るのだが、

大精霊と会うことすら確率が低く契約するのが難しいため現在発見されているのは四つしかない。


そのうちの二つは、ロマネスクが契約したもので

バルフェルトが亡き今は人間の国が保管しているらしい。


「また人間の国から盗んできてよ」

「もう無理よ、私の顔だってバレてるし。二度とできないわ」

「バルフェルトさま! 記憶を戻してください!」

「ロマネスクに頼めばよかったぁ……」


「勇者と戦って勝てば、良いじゃない。そうすれば、あなたが最強よ」

「そうは言われてもなぁ」

今のロマネスクはきっと本気出してないにしろ、さっき手合わせしてわかったが百回やって十回勝てるかどうかだろうな。

「バルフェルトさま!」

「ああ、もうさっきからうるさいな! メガネくんだっけ?」

二本角の悪魔が背後に突っ立ってた。

「違います、グリオンです」


「さっきは助けてくれてありがとう。じゃあさようなら」

「困ります、一緒に人間を倒しましょう」

「え、嫌だよ。俺元は人間だし」

見た目は違えど、中身は人間だから戦いたくないんだよなぁ。

「本当に、バルフェルトさまじゃないのですか?」

「そうだって言ってるだろ。どっか行け」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、嫌だぁああ!」

「急にどうした?」

「無視していいよ」


「バルフェルトさまの魔力・見た目、声で、そんなこと言わないでください!」

「ええええ」

切腹何度もしてるし、怖すぎる。

てか、こいつバルフェルトって奴どんだけ好きなんだよ。

「グリオンは極度に魔王を慕ってるの」とバンカは呆れていた。

「そんなバルフェルトはすごかったのか?」

「無論です! あの方は強くもあり、優しくもありました!」

急に元気になるんじゃない。


「強さは、保証する。あのロマネスクを一度は追い詰めたからね」

「すごいじゃねぇか」

「ただカリスマ性がなかった。魔王を気にいる奴もいれば、首を狙う奴もいた」

魔族は意思疎通を取れない奴やグリオンみたいな変人がいるから、統率するのは難しいだろうな。

「失礼な奴ですね、裏切りの魔女! 魔王さまのそばにいたというのに!」


「居場所がなかったから、仕方なくね。あいつ嫌いだったし」

「嫌いだったのかよ……。なんかスケベなことされたのか」

「違う。あいつのせいで、私は魔女になったの」

「魔女になった?」


「もともと人間だったの。無理やり魔力を注がれて、不老になったしおまけに

この魔法、【能力低下(スキルダウナー)】までついてきたんだから」

「よかったじゃないか」

「よくない!」


「絶対に、あなたがバルフェルトさまに戻るまで一緒にいますからね!」

「戻らねぇし」

こいつはずっとごちゃごちゃうるさいなぁ。おもしろいから良いけど。

「なら、私のバルフェルトさまを返してください!」

「「お前のじゃないだろ」でしょ」


「あなた名前は?」

「アマツ・ツカサ、元勇者だ」

「アマツ・ツカサ! いつかバルフェルトさまを返してもらいますからね」

「やれるものなら、やってほしいね」


「キャロ、こっちへ来なさい」

「は、はいぃ」

グリオンが手招いて、現れたのはオレンジ髪の少女だった。

猫背でこちらに目を合わせずにいる。

十五、六の人間の少女に見えるが縦長の耳が魔族だと表している。


「私はバルフェルトさまを取り返す方法を考える。貴様はバルフェルトさまを見張ってください」

「えええぇ……」

「見張りいらねぇよ」

「ほんと!?」

嫌そうな顔をしたかと思ったらすごい笑顔だ。わかりやすいなコイツ。


グリオンはキャロと呼ばれた少女の口を掴み微笑みかける。

「貴様はバルフェルトさまのおかげで、ここまで生きてるんですよ? わかってますか」

「ふぁい、ふみまへん」

「よろしい。では、キャロ頼みましたよ」

「……わかりました」


「おい、勝手に決めるなよ」

グリオンの野郎、俺に見張りなんか押し付けてどこか行きやがった……。

まぁいても別にどうでもいいだけど。

「これからどうするの? ロマネスクから逃げるのは大前提として」

このまま森にいてもきっと人間の軍が俺のこと探してやってきて戦う羽目になりそうだ。


「いっそのこと人間のところに隠れるのはどうだ」

「ええ、そんなことしたら大騒ぎになりませんかぁ……?」

「この負傷とロマネスクのマント、二人の協力があれば大丈夫だ」

「寝床にしようとしてた村があるから、そこに行ってみましょう」

「ほんとに行くんですか、バレても知りませんよぉ……」

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