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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
38/49

38 バルフェルト

ロマネスク視点


魔物の動きが活発になって、アマツの元を離れてきてやったのに退屈だ。

どいつもこいつもC級くらいの雑魚ばかり。準備運動にもならない。

やはり他の奴らに任せて、アマツと一緒に居ればよかった。


「お久しぶりです」

「お前は?」


会話相手がいてよかった。話の片手間に雑魚共を屠るとしよう。

どこかで見たことがある顔だ。


「パクーチですよ、忘れられていて悲しいです……」

「お前の目的はなんだ?」

「あなたを手に入れることです、あなたほどの強い方と私は一緒に行動したいのです」

「断る。どうして貴様の戯言に付き合わないといけない。私にメリットはないだろう」


「あなたは、私と一緒に来るといいます。必ず」

「それは──」


問おうとした時、私は言葉を失った。

魔力が消えた。


誰の? 決まっている。遠く離れていようと、感じ取れる魔力だ。

見た目は、この世界での魔王だが前世からの付き合いの友人。


──魔王バルフェルトの体に移ったアマツ・ツカサだ。


「……なにをした」


アマツがそう簡単にやられることはない。

前世といえど、私を倒した男だ。この世界に、あいつを倒せるのは私だけだ。


「簡単なことです。彼に死んでもらっただけのことですよ」


なんで自害に至ったかは、容易に推測できる。

あの三人娘を人質にしたのだろう。


「どうか彼女らを責めないであげてください」

「当たり前だ」


誰もオリブたちを責めない。アマツもきっと責めないだろう。

責められるのは、この女魔族と今回の計画をした首謀者だ。


「彼女たちはおそらくグリオンさんに殺されますよ」

「そんなことありえない」

「そうでしょうか?」


「私が鍛えた娘がいる。それに他二人はアマツと一緒に行動したからな」

とは言ったものの、グリオンとやらの実力はわからない。


こいつを倒してすぐに、助けにいくしかない。


「アマツを殺してなにがしたい」

「そんなもの決まってます──。」


*****


グリオン視点


「バルフェルトさまを復活させる材料が集まりました」


バルフェルトさまの遺体、精霊の秘宝。この二つがあれば復活させることができる。

長かった──。


復活させようと動いていましたが『ロマネスク』という邪魔がありました。

【ナーガ】による復活ができないのは、驚きました。

元々はバンカと同じく死者蘇生によって、バルフェルトさまを復活させることを考えていました。


蘇らせることができないとわかり、計画は止まってしまった。

僕は三日三晩考えました。いやもっと考えました。


魂がなければ、復活できない。

魂がなければ、バルフェルトさまの体があろうと、今までの彼のように動けない。


ですが、【ナーガ】によって、思わぬ収穫を得ました。

それは、アマツ・ツカサがバルフェルトさまの体に移ったこと。


破壊の魔女がきて声をかけてきました。

「本当に倒したんだ」

「簡単でした」


アマツの手から【トリシューラ】を奪い取り、火の魔法で無理やり破壊する。

これでもうこの精霊の秘宝は使えない。

一つでも、僕の計画の邪魔になるであろうモノは全て排除します。


「それでは、あとの工程はお願いします」

「わかったわ」


破壊の魔女はマントの中から細い木の棒を取り出した。

これが彼女が持っている精霊の秘宝【サウマ】ですか。

そこらへんの木の棒と変わらない。道端に落ちていたら気づけないでしょう。

木の棒の選択を向けられた途端に心臓が苦しい……。


「本当にこれで……なれるんですか?」

「そうよ、苦しいのは一瞬だから待ってなさい」


そこで意識が途切れ、目を覚ますと視点が変わっていた。


「成功したみたいね」


見上げると破壊の魔女が僕を見下していた。

そんなことよりも気になることがあった。


目の前には、視界に移ることはありえないものがあった。


「どうして、僕がいるんですか……?」

「あなたが──バルフェルトの体に移ったからよ」

「僕がバルフェルトさまに?」


立ち上がり、自分の姿を水魔法で映してみると確かに僕はバルフェルトさまになっていた。


「はは、ははははは!」

まさか本当に僕がバルフェルトさまの体に移れるだなんて。

これで目的は、達成できた。


「本当にこんなことが、あなたのしたかったことなの?」

「ええ──僕は、バルフェルトになる」

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