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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
36/49

36 さようなら、アマツ・ツカサ

「これからバルフェルトさまを復活させます」

「ってことは、俺が死ぬってことか」

「それ以外考えられますか?」

「当てちゃったか……なんだよ」


キャロは俺の腕を掴んで黙ったまま首を振っていた。

(やめてほしいってことか)

念話でキャロに話しかけても黙ったままだった。


「やれやれ、どうにも俺はまた死ぬわけにはいかないみたいだ」

「いえ、あなたは死にます。抵抗したらこの子たちを殺します」

「殺される前にお前を殺すぞ」


「殺してもいいですよ、それも計算に含んでいます」

自分が死ぬことも計画に含む馬鹿いるかよ。

グリオンが嘘をついているようには思えない。


「……はぁ」

「僕の話を聞いてくれるのですか」

「やってやるよ、ただキャロたちを絶対に見逃せよ」

「さっきまでの威勢はどうしたんですか? 僕に勝てないと思いましたか」

「んなわけあるか」


キャロたちを助けるのに、傷つけられもしたら困るってだけだ。

それに、グリオンがどうやってバルフェルトを生き返らせるか気になる。


「僕の手で殺してあげたいですが……バルフェルトさまが傷つくのも嫌ですし」

グリオンは指をさしていた。

「あなたが大精霊ドゥルガーから受け取ったであろう精霊の秘宝で自害してください」


そんなことも知ってたか。

俺が本来ロマネスクを殺すために隠していた【トリシューラ】。

魂に対する攻撃だから、バルフェルトの体には傷一つはいらない。

俺が死ぬだけだ。


「いいぜ、使いどころがなかったから使ってやる」

「ご厚意感謝します」


左脇にずっと挟んでいた精霊の秘宝、【トリシューラ】を初めて取り出した。

刀身のないナイフ、こんなので自分が死ぬのか不思議だ。


「魔王、あんたを殺すのはあたしだ! 勝手に死ぬなんて許せない!」


叫んだのは、オリブだ。こいつずっと俺を倒そうとしてるな。

でも、その目標が叶えられなくなるのは、申し訳ないな。


「俺じゃなくて今度からは、ロマネスクを超えることを目標にしろ」

「ふざけるな、あたしはあんたを倒さないとお母さんを超えられない」

「そんなことはないだろ、なぁ? ライ」


泣きじゃくるオリブと違って、ライは顔色一つ変えていなかった。


「ほんとうに死ぬの?」

「これでお別れだ」

「うちの前で、誰もしなせない! 絶対に」

「お前らと旅出来てよかったぜ」


これは噓じゃなくて本当みたいだな。

いつもこうやって嘘はつかずにいて欲しいもんだ。

悲しいことに、今のでこの願いは最後だ。


「死ぬのは怖くないの」

「怖くない……って言ったらウソになるな」


後悔があるとしたら、ただ一つだ。

「ごめんな、結局バンカを生き返らせなくて」


「そんなこといい……うちのせいでバンカまで死んで、アマツが死ぬなんて嫌だ」

自分のせいで人が死ぬことは、辛いだろう。

俺はそんな経験したことないから、この子に気の利いたことは言えない。


「この前さ、バンカが命を賭してまで生き返らせてくれた理由を聞いただろ」

ライの気持ちになって言えない。

だけど、俺は今オリブと同じく命を繋ぐ側だからこれだけは言える。


「バンカと知り合ったのは短いから知らないけど。

なんでもは知らないけどあいつはお前に世界のいいところを教えたかったんだ。だから、生きろ」


ライは黙ったまま頷いた。

返事をしようとした時にグリオンの声が遮った。


「お喋りはこれ以上はよしていただきたいですね、うっかりキャロを殺しそうです」

「最後にキャロと話させてくれよ、今の上司は俺だからな」


グリオンはため息をついて「変な行動したら容赦なく殺しますからね」とメガネをかけ直した。

身動きが止まっていたのに、今はグリオンの魔法が解けてキャロは震えていた。

責任感が強いからナイフで刺して、グリオンの言いなりになって負い目を感じているんだろう。


「アマツさま……ずっとあなたに迷惑をかけてしまい──」

「ばか、謝るな。これで最後なんだからお礼くらい言ってほしいもんだ」


「今までありがとうございました、アマツさまと一緒に過ごせてよかったです」

「ありがとうな、いつも俺のために動いてくれて。これからは二人のために動いてくれ」


キャロは、はいとはっきりとした声で返事をしてくれた。

「待たせたな、それじゃあ、死んでやるよ」


【トリシューラ】の刀身の消えた箇所を胸に突き刺すと、眠たくなってきた。

瞼が重たくなってくる。

持っていた精霊の秘宝が手から滑り落ちる。


「さようなら、アマツ・ツカサ」

身体が言うことを聞かない。


「要は済みました、そこの三人を殺してください」

こいつ! まだ俺は生きてるぞ。

動け動け動け動け動け動け動け。

指の一本でもいい動いてくれ!


「……あ」

声は出る。この際それだけでいい。


「ダルマさんは、三人を助けろ」


「? まだ生きていましたか、魔法は使えてないみたいですね」

グリオンの野郎、俺がなにをしたのか気づいていないみたいだ。

俺の目的は達成された。もう死んでもいい。


「キミが呼ばなくても、ボクはライだけでも助けたんだけどねェ」

間の抜けた声がした。視界は見なくてもその声だけで充分だ。

「……頼むぞ」

聞きなじみの声が俺の名前を叫びながら遠く、遠くへと去っていった。

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