35 紛いもの
今日俺がここまで来たのは、四魔同盟のみんなと話せば魔族の関係性を正せると思ったからだ。
だというのに、目の前のグリオンは!
「そんなものですか! この前僕に勝てたのはやはりまぐれですか」
「何言ってんだ、あれ完全に俺の勝ちだろうが!」
手を抜いた俺にやられたっていうのに、こいつなんでドヤ顔できるんだよ。
一歩動かせたのがそんなに嬉しかったか。
「闇よ──」
「それ使わせるわけねぇよ」
尻尾でグリオンの口を押さえて発言させるのを防いで、外まで吹っ飛ばす。
魔法が言葉ありきで助かったよ。
「〜〜〜!」
「もがもが言ってて何もわかんないな」
試しに尻尾をずらすと「バルフェルトさまの尻尾で、僕の口を塞ぐな!」
怒ってらっしゃる。
「だって、魔法使おうとするんだもん」
「僕は出会った時からアマツ、貴様が嫌いだ! バルフェルトさまの体になぜお前みたいな奴が入った!」
「俺だって、それ聞きたいよ」
前世で死んで起きたらこんなところに転生させられてたんだからさ。
「すでに貴様は一度死んだんだ、その体を寄越せ。これ以上バルフェルトさまを愚弄するな」
「俺もこの体譲れたら譲りたいけど、そしたらまた俺死んじゃうから嫌だね」
「もう一度死ねと言っている!」
ほんと言葉が強いやつは嫌になるよ。
話合えばわかり合えると思ってた。
前世でも勇者として、できることなら戦わずにロマネスクや魔族と話して解決したかった。
でも、結局戦って解決するしかなかったんだけど……。
この世界では、なるべく戦わずに済むように動こうと思ってたんだけど、それは無理みたいだな。
「もう一度死ぬのは、ごめんだね。俺はもう勇者としてじゃなくて魔王として生きてくって決めたからさ」
せっかく授かった二回目の人生だ。だったら、俺がどう使おうと構わないだろ。
それに、もう勇者じゃないから誰かのためとかより俺のために動かせてもらう。
「この体、バルフェルトの体をどうしてそこまで必要とするんだよ、もう生き返る手はないはずだろ。
まさかホルマリン漬けにして保管するのか!」
「それもいいかもしれませんね……」
いいんだ。
グリオンは一拍置いて話し始めた。
「あなたが知っても意味ないですよ、バルフェルトさまが生き返った頃にはあなたはいないのですから」
「教えてくれないんだったら、力づくで教えてもらおうかな」
グリオン程度なら、倒せるし無理やり聞き出した方が早そうだな。
「やれるものならやってみてください」
テメェが挑発してくんのかよ……!
いいぜ、その長鼻へし折ってやる。
「風よ、踊りたまえ『ヴァーユ』!」
「火の魔法以外も使えるようになったんでしたね、すごいですよ。バルフェルトさまの原始の魔法は使えるようになりましたか?」
軽口を叩けるくらいに、余裕そうに俺の魔法を避けてくれるな。
「使えるようになってねぇよ」
「やはりそうですか、感覚的なものですからね。仕方ありません」
こいつ一体何を探ってるんだ?
キャロ越しから俺の情報を知っているはずなのに、聞いてくる。
「バルフェルトのことばかり気に取られてると、痛い目見るぜ。『不変の理』」
「!?」
一瞬にしてグリオンとの距離を狭めて殴ると、グリオンは防ぐことができず吹き飛ばされていた。
「へぇ、すごい力が出るんだな」
俺がコピーした力は、グリオンの原始の魔法だ。
なるほどな、低級の魔物の力を自分にも蓄えることができるのか。
「僕の力までも複写できるのですか、この紛いものが……!」
「この前戦った時より俺はもっと強くなったけど、お前は何も変わってないみたいだな」
俺が負けることはない、諦めて欲しいな。
「ははは……!」
グリオンは急に笑い出した。
「……そんなに知りたいなら、教えてあげますよ。バルフェルトさまを僕がどうやって復活させるかね」
「それは、助かるな。……!?」
背後に激痛があった。後を振り向くと剣だけが背中に刺さっている。
だけど、剣は命があるみたいに未だ背中を突き立てている。
「痛ぇな……」
光の魔法が解けて、奇襲を仕掛けてきた相手が誰だかわかった。
キャロだ。泣きながら首を振っている。
「言わなくてもわかる、いや言えないか。グリオンが操ってるんだろ」
「そうです。僕の魔法を解くなんてことやめてくださいね」
こいつ……。
俺が穴を作った魔王城の壁からライとオリブが出てきた。
ただ二人だけじゃない。
魔物にライとオリブを捕まえて、人質にしていた。
「やり方が三下だぜ」
「わかってます、ですが僕があなたに勝つにはこれくらいしかないのですよ」
ダサい眼鏡野郎が。こんな奴を手下にしてただなんてバルフェルトのセンスが疑えるぜ。
「さて、これからバルフェルトさまを復活させます」




